「北朝鮮に経済制裁を求める運動は間違いである」
2004年 11月 19日
★北朝鮮に経済制裁を求める運動は間違いである★
北朝鮮に対して「対話と圧力」は必要です。相手はテロ国家なのですから、その犯罪行為に対する責任(報復)を問うことも当然すぎるほど当然です。
しかし最近、北朝鮮に対する経済制裁を声高に叫ぶ動きが活発になってきています。これは断固として間違った道です。金王朝に貢ぐ日本からの金品だけを抑制または妨害するなら、私も支持します。けれども経済制裁とは、貿易や援助を抑止する措置をいいます。この犠牲になるのは常に民衆です。
私たちはイラクに行って、そのことを痛感しました。イラクの車、商品、道路、店、食糧、学校教育その他は、90年に始まった経済制裁によって、完全に時間が止まったままなのです。あの経済制裁によって、150万人の子どもが餓死し、今も病院には薬がありません。病室のベッドに吊るされていた点滴は、すべて(!)例外なく栄養剤だけでした。
90年に始まった経済制裁は、「イラク軍のクウェートからの撤退」を求めて発動されたものです。しかし、イラク軍がクウェートから撤退したあとも、それは解除されませんでした。いつのまにか、「フセイン一族の追放」が「クウェートからの撤退」にとってかわられてしまったのです。「フセイン一族が支配者である限り、またクウェートなどに侵略する可能性がある」という論理が、国際社会でほとんど異論を提起されずに、まかり通ってしまったのです。
北朝鮮に対しても、拉致問題で経済制裁を切り札として出してしまったら、とりかえしのつかないことになります。北朝鮮の為政者がクレイジーであればあるほど、人民の飢えが加速度的に進行してしまうからです。
現代における経済制裁とは、民族差別に基づくジェノサイドとしてのみある、ということを明確に自覚すべきときだと思います。
(新「ガッキィファイター」2003年6月8日号に掲載)