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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

逆メンターが上司を育成、「相談相手」に部下を起用――仕事や生活、本音伝える

SmartWoman 日経生活面


 メンター。相談にあずかる人という意味のこの言葉、部下のアドバイザー的存在をさす。社員を育てる狙いで外資系企業の中にはメンター制度を導入するところが登場しているが、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G、日本本社・神戸市)ではさらに踏み込んで管理職らを育てるリバース(逆)メンターを行っている。その効果はどんな点にあるのだろう。

 日本本社研究開発本部でアソシエイト・ディレクター(部長級)を務めるパム・クロッパーサムズさんは現在、P&G米国本社役員の女性のメンター(アドバイスする人)を務めている。相手の社内資格は彼女より3ランク上だ。
 もう1人、やはり米国勤務の2ランク下の女性社員がクロッパーサムズさんのメンター役として付いている。このように部下が上司の相談相手になって様々なアドバイスを行い、一方上司はそれをマネジメントに生かすというのがリバースメンターの特徴だ。
 「役員にどんなアドバイスをするのかですって? 彼女はキャリアの形成に専念するため子どもを持たなかった。でも部下には子育て期の社員もいる。幸い私は子育ての経験があるので、いい保育所を見つけることの難しさとか、子どもが病気になり仕事か看護に専念すべきかで迷った時の胸中などを話してあげる」
 メンターとして部下や上司にアドバイスする内容は大きく二つだという。一つは専門分野の話を中心に行うケース。もう一つは子育てなど文化の側面にウエートを置くケース。クロッパーサムズさんはどちらかといえば後者型で、メンティー(相談する人)である女性役員は米国以外の地で仕事をしたことがないため、日本勤務の感想などを話すこともあるそうだ。
 ではクロッパーサムズさんがメンティーに回る部下との関係はどうなっているのか。
 「係長級の中国人で前に一緒に仕事をしたことがあり、気心が知れている。上の役職に就けば就くほど、上がってくる情報もいい話しか伝わってこない。その点彼女とは率直に意見を交換できるし、中国人なのでアジア地域では社員とどうかかわれば効果的かといった話も聞ける」。相手の2人は共に米国勤務なので、お互いに出張した時やテレビ会議を通じてコミュニケーションを図っている。
 メンター制度は人材育成の一環として、米国では1980年代から広がった。P&G日本本社でも各事業部が独自にメンタープログラムを持ち、希望する社員には適切なアドバイザー役を紹介するほか、新入社員には全員に強制的に付ける。そのようなオフィシャルなメンター以外にカジュアルメンター、つまり社員と上司が個人的に関係を築くケースが浸透している。
 ファイナンスアナリストとして仕事をしている小池未恵さん(2000年入社)の場合、現在3人目のオフィシャルメンターがいる。入社当時は日本人女性、次がインド人男性、現在はフィリピン人女性だ。全員部長クラスで、会社が紹介してくれた。
 フィリピン人女性はマニラ勤務。インターネットのチャットプログラムを利用して、多い時は2週間に1回くらい連絡を取り合う。最近の話題の中心は「結婚後、どうしたらプライベートとキャリアの両立が図れるか」。「フィリピンやシンガポールでナニー(お手伝いさん)を使って仕事をしたらどうか。何なら私があなたの上司に交渉してあげる」という具合にメンターのアドバイスも具体的だ。
 このほかに個人的にメンター関係を結んでいる人がいる。入社1年目の時の男性上司で、相手は小池さんの「長所も短所も知っている」。ランチ時に行う相談の中身はもっぱら仕事関連。「今年初めて持った部下との関係をどんな風に築いていけばいいかとか、米国人の女性上司とはどう付き合えばいいかなどの相談をすることが多い」
 こうした例からもわかるように部下を育てる普通のメンタープログラムは充実しているものの、リバースメンターに関してはクロッパーサムズさんが所属する開発本部以外、同社といえど公式のそれは行っていない。目下「積極的に活用する方向で検討している」段階だが、確かに上司を育てる、いや変えるという意味で“リバース方式”はもっと普及してもよさそうだ。
 日本企業は女性社員の処遇の改善を図るためポジティブ・アクション(積極的格差是正策)を実施するところが増えている。そこに大きな壁として立ちふさがるのが男性中間管理職の旧態依然の女性観。女性と聞いただけで偏見が頭を駆け巡るこの人たちの意識は、研修を受けたくらいでは変わらない。
 いっそのこと、彼らにメンターをつけたらどうだろう。もちろんメンターは女性の部下というリバース方式で、中間管理職は彼女らの話をじっくり拝聴する。“ウーマンツーマン”の関係を築く中からニューマン(新しい男性)誕生の可能性もある。 (編集委員 鹿嶋敬)

メンターは効用定着

 米国流に言うと、企業には3タイプの上司がいる。コーチ、メンター、スポンサーがそれ。
 コーチとは直属の上司のこと。部下の仕事の仕方や業績に目を光らせ、評価も行う。両者には緊張関係も生まれ、何でも話し合えるような交流は難しい。スポンサーは高い地位から部下をバックアップする人。直接相対して指導することはない。
 メンターはコーチやスポンサーのように、キャリアの形成に直結する役割を果たすわけではない。仕事に限らず生きる上での悩み、相談事に対しても幅広い視点からのアドバイスを行う、先輩のような存在。
 P&G日本本社ベビーケア事業本部生産統括本部マネジャー市橋百合さんのメンターは米国人女性。子どもが生まれ仕事と家庭生活の両立に四苦八苦していたころ、部長級の彼女に出会った。「仕事も家のことも十分にこなせず悩んでいた私に『そういう時はだれでもそうなの』と言葉をかけてくれた。うれしくて涙が出た」
 その後、その女性は米国に帰ったが、メンターの関係は今も続く。「業務上の利害の衝突がないので、オープンに話ができる」そうだ。

[日本経済新聞 2004/11/22]
by miya-neta | 2004-11-27 23:05 | 女 性