「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

宗教対立:オランダ 映画監督殺害からテロや放火が続発

MSN-Mainichi INTERACTIVE アメリカ


 オランダの著名な映画監督、テオ・バン・ゴッホ氏(47)がイスラム教原理主義組織の青年に殺害されて1カ月。事件を機に、モスク(イスラム礼拝堂)やキリスト教会が相次いで放火されるなど、宗教的な対立が激化し、同国の誇りである「民主主義の良心」が問われる事態となっている。一方で、容疑者の属していた組織が他の欧州諸国の原理主義組織と関係していたことも判明し、テロの浸透に市民らは驚きを隠せないでいる。【ハーグ福原直樹】

 ■事件

 先月2日午前8時45分、アムステルダム市の路上。自転車で通勤中のゴッホ監督に、青年(26)が数回、発砲した後、監督ののどをナイフで裂き、胸を突き刺した。警官隊との銃撃戦の末、現場で逮捕された容疑者はモロッコ移民の2世で、オランダ国籍も持っていた。

 動機はすぐ判明した。名画「ひまわり」などで知られる画家ゴッホの遠縁に当たる同監督は、「イスラム教は女性を差別している」と以前から指摘。9年前にソマリアから亡命したイスラム教徒の女性=現オランダ議員=をモデルに「差別」を批判する映画を作り、最近、テレビで放映されたばかりだった。容疑者の青年は、監督の遺体の上に「イスラムの聖戦」を訴える声明文と、この女性議員への脅迫文を残してもいた。

 事件への反動は大きかった。政府は市民に「平穏を保つように」と訴えたが5日、同国中部ユトレヒトで何者かがモスクに放火。これを皮切りに、7日には隣接の市のキリスト教会に火炎瓶が投げ込まれるなど、これまでに両宗教の象徴的な建物約20カ所が、放火などの被害に遭った。8日には、同国南部のイスラム教徒が通う小学校の玄関で爆弾が爆発してもいる。

 ■テロ組織の浸透

 容疑者の背景がわかるにつれ、さらに衝撃がオランダ社会を走った。青年の属するイスラム原理主義組織がモロッコ・カサブランカで昨年5月、40人以上の犠牲者を出した連続爆破テロの実行組織と関係していたからだ。

 当地の報道によると、高校時代の青年は「親切で、まじめな模範的学生」だった。だが彼は、01年の米同時多発テロを契機に変わる。近くの青年を集めて「オランダのイスラム教徒への差別」を論じ、同時にイスラム教原理主義者との親交も深めていった。

 調べでは、青年が属したのは「ホフスタッド」と呼ばる過激組織で、メンバーは約200人。極秘集会では「聖戦」の重要性が説かれ、一部のメンバーがカサブランカ事件の首謀者=逮捕=と連絡を取っていた、という。またロシア・チェチェンでのイスラム勢力を支援するため、現地に赴いたメンバーもいたとされる。

 当局は02年から組織を監視。だが情報不足もあり容疑者の青年を重要視していなかった。事件後、当局は同組織のメンバー約10人のほか、クルド人過激組織の構成員約40人を次々と摘発。摘発の際、容疑者がアジトから警官隊に手りゅう弾を投げるなど、市街地は騒然とした空気に包まれた。

 ■民主社会の苦悩

 「オランダ社会では、みなが平等です」

 11月12日、アムステルダムの青年センター。事件についてイスラム系の若者らが討議する集会で、同国のベアトリックス女王がこう話した。人種や宗教で社会を分断してはならない……。自らの強い希望で出席したという女王の言葉は、同国社会の苦悩を示していた。

 60年代に移民を積極的に受け入れ始めた同国(人口約1600万人)には、現在、移民160万が住み、うち約100万人がモロッコやトルコ出身のイスラム教徒。これら移民に対し、同国政府は「寛容」をモットーとする政策で対応し、オランダ語の教育などを通じて多民族の融和を進めてきた。

 だが最近の世論調査では、国民の4割が「イスラム教徒がオランダ社会に融合するのは不可能」と答えている。

 「過去、我々はあまりにも寛容すぎた」

 事件後、フェルドンク移民担当相はそう語り、今後、イスラム急進派の取り締まりを強化する方針を明かした。だが「強硬な政策が、かえってイスラム教徒の反発を招くのではないか」という懸念も同国内では強い。

毎日新聞 2004年12月2日 1時08分
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by miya-neta | 2004-12-02 08:07 | 国 際