「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

未来が見えますか:人口減時代の日本 第1部・少子化の風景/8

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 ◇幸せみえない、親の背中--地方でも進む未婚化

 残業を終えて帰ると、夕食を用意して待っていた母が口を開く。「お隣も孫が生まれたってよ」。鳥取市内の役所で働く女性(33)は、聞こえないふりで箸(はし)を進める。20代後半に3、4件続いた見合い話を「そこまで結婚したいわけではないから」と断ってきた。

 結婚生活にあこがれを抱いたことがない。両親は見合い結婚し、共働きで3人兄妹を育てた。亭主関白の父は家事を一切しない。仕事を終えた母が慌ただしく夕食を作り、終わると無言で片付ける。「夫婦って、こんなものなの」

 「食いっぱぐれがないから」と、母から公務員になるよう言い聞かされ、無意識にその期待に応えてきた。そして、定年まで勤めることと、結婚の両方を期待される。「仕事はしたい。だけど結婚すれば家事、夫の親との同居、近所付き合いが避けられない。それに仕事がのしかかる。母のような苦労はしたくない」。それが本音だ。

 親類には顔を合わせるたびに「結婚はいつになるの」と聞かれる。「いつでしょうねえ」と受け流すと、一回りも年上の男性を紹介されたりする。「田舎では『結婚して当然』という感覚だけど、結婚に夢はもてない」。友人のうち、20代前半で結婚した3人は、全員が離婚した。

 ■独身でどうにか

 同じ鳥取市で書店に勤務する男性(32)は、単身赴任が長かった父の不機嫌な顔ばかり思い出す。紙粘土教室を開く母に「やるのはいいが、飯をつくれ」と言うだけ。展示会にも顔を出さなかった。父の実家で孤立し、寂しそうに紙粘土を片付ける母の背中が、目に焼き付いている。

 関東の大学を卒業後、出版関係の職が見つからず、5年前にUターン。3年後に両親は熟年離婚した。

 現在の月収は17万円。「経済力がないと結婚できないと思うが、父のような仕事人間になるつもりもない」。休日は一人でドライブを楽しむ。「独身ならどうにかやっていける。両親を見ているからか、友達みたいな夫婦が理想だが、進んで結婚相手を見つけようとは思わない」

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 秀峰・大山と日本海。山海の幸に恵まれた鳥取県の人口は、約61万人と全国最少だ。都市部ほどではないが未婚率が上昇しており、特に20代、30代で著しい。県は99年度から、全国に先駆け民間団体や市町村に助成金を出し、お見合いパーティーの開催を促進したが、「効果が薄い」と、結局4年間で助成金を廃止した。伝統的な家族観や地縁・血縁のしがらみが残る地方でも、未婚化には歯止めがかからない。

 でも、このような催しに期待をかける自治体もある。

 ■少ない出会い

 昨年12月4日。暖冬のせいか、イチョウの葉がまだ舞い落ちる茨城県庁の旧庁舎で、独身男女に出会いの場を提供するパーティーが開かれた。県が婦人会の連絡団体に委託し、02年度から始めた婚姻推進事業。地元の事情に詳しい女性たちが親代わりの「世話人」となり、県内各地から参加者を集めた。

 「跡継ぎを社会に還元するのは皆さんの役目。働く女性も景色の良い茨城でお嫁さんになって優秀な人材を産み育てて」。実行委員長の櫻井よう子さん(62)があいさつ。エプロン姿の世話人たちは、手作りのおにぎりやピザをテーブルに並べ、会話が弾み始めるまで、テーブルを回って「子どもは3人ぐらいほしいよね。1人でいいなんて言わないでよ」などと盛り上げる。

 県内の30代後半の未婚者は、女性1人につき男性が約3人いる計算。この日参加したのも女性23人に対し、男性は49人。20代、30代が中心だが、40歳以上の男性もいた。

 見合いをするのは、参加者同士だけではない。「あの子は長女だから婿取りでないと」「先方の両親は人格者で家柄もいいのよ」。家族構成から宗派まで綿密につき合わせ、親が希望する条件に合う相手を見つけようと世話人も張り切るが、初めて参加した事務職の女性(34)は「条件よりも価値観が決め手。自分でじっくりと探したいけど、田舎では出会いが少ないし、両親に孫をせがまれるから」と複雑な心境をのぞかせた。

 配られた紙にもう一度会いたい異性の番号を書き込んだのは21人いたが、結局、相思相愛はゼロ。これまで開いた7回のパーティーに参加したのは男女延べ750人。このうち結婚したのは5組にとどまる。

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 全国で出会いのためのパーティーを開催している日本青年館結婚相談所の板本洋子所長(56)は「地域社会や血縁の存続をかけて嫁不足の深刻さや結婚幸福論を唱えても、若い世代は現実感をもてないし、狭い地域では強迫的にもなりかねない。親世代が多様な生き方や対等な夫婦関係を示すことも必要」という。【「未来が見えますか」取材班】=つづく

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毎日新聞 2005年1月18日 東京朝刊
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by miya-neta | 2005-01-19 09:16 | 社 会