「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

就職戦線「慶応圧勝」の理由

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就職戦線「慶応圧勝」の理由 企業の慶応好き、早稲田いや
(AERA:2004年12月13日号)

 大学ラグビーでは早稲田は慶応に圧勝したが、就職戦線では慶応が完勝しているようだ。同じような学生なのにどうしてこんなに差がついたのだろうか。(AERA編集部・太田匡彦)    ◇      ◇

 「慶応生」

 その存在に企業の採用担当者が頭を痛めている。大手損害保険会社の採用担当者はこう明かす。

 「何となく採っていると慶応生ばかりになって、ほかの学生が採れないんです」

 今年4月、同社には約150人の新人が入社した。うち約30人が慶応生。5人に1人は慶応生という結果だった。

 慶応生偏重は大手総合商社も同じ。採用担当者は、

 「慶応ばかり増えてしまって困っている。慶応はスーパーサラリーマン養成学校のようだ」

 リクルーター制度のある企業に学生が呼び出される順番にも変化がある。順番は、企業がどの大学の学生を優先的に採りたいかを示す指標だが、これまでなら、

 「東大」「一橋」「早稲田・慶応」「明治・青山・立教・中央・法政」 という順番が最近は、

 「東大」「一橋・慶応」「早稲田・明治」「青山・立教・中央・法政」

 という序列になっているという。



 アエラが全国の67大学を対象に行った調査では、人気企業就職率(アエラが抽出した110社に就職した学生の合計を卒業者数で割った値)が慶応大経済学部で23.4%、商学部で19.3%など7学部中6学部で10%以上と極めて高い数値となった。就職率(学部卒業者。進学者は除く)も68.39%と高いレベルだ。

 一方、早稲田大の就職率は56.64%と慶応に10ポイント以上離されている。とくに看板学部の理工学部の就職率は54.33%と低いのが目立つ。

 人気企業就職率は政治経済学部が20.2%と健闘しているものの第一文学部、教育学部、社会科学部、理工学部が軒並み10%を割る結果となった。

 タテとヨコに強い慶応

 現場では数字以上に温度差がある。今年40人の慶応生を採った大手都銀では、

 「コミュニケーション能力が高い。清潔感がありスマート。さわやかでバランス感覚がある」

 と高い評価だ。

 「意識の高い学生、卒業生に囲まれて学生生活を送っており、他大との差は大きい」(食品メーカー)

 「準備できないような想定外の質問をしたときによどみなく自信を持って答えるのが慶応生。自主性やコミュニケーション能力が際だっている」(損害保険会社)

 とにかくベタボメなのだ。

 慶応には、各大学が就職支援のために充実させている「キャリアセンター」は存在しない。就職セミナーも年40回程度と、他大学が100回以上開いているのと比べて極めて少ない。

 慶応大学学生総合センターの多田重文課長はいう。

 「学生生活には口も手もお金も出さない。放任しています。就職についても同じです。慶応生はタテヨコのつながりが非常に強い。友人やOBから情報を得る機会が多いようです」

 外資系金融機関への就職が決まっている総合政策学部4年のトモコさん(22)は、ヨコのつながりを最大限に活用した。

 外資金融では慶応生が圧倒的に有利、といわれている。グループ面接などで6人中4人が慶応生、残りは東大生と一橋生だった、という場面はざらにある。

 学生人気の高い外資金融は選考開始が早い。10月下旬にはエントリーを受け付け始め、11月中に選考を進めてしまうケースがほとんどだ。

 しかも、採用情報は、リクナビなどの媒体にはほとんど表れてこない。にもかかわらず、慶応生の間では、伝言ゲームのようにやり取りが交わされる。

 「GSが始まったらしいよ」

 「リーマンの選考に行ってきた」

 学生たちが盛んに情報をやり取りする。「GS」は米系証券会社ゴールドマン・サックス、「リーマン」は同じくリーマン・ブラザーズ証券のことだ。

 外資志望の慶応生は他大生がやっと動き始める時期に具体的に志望会社を絞りきっている。

 30年分のOB名簿

 ヨコのつながりは、大きな就職イベントにも発展する。

 「業界講演会」

 という慶応生主催の連続企業セミナーがある。大学や業者が主催するような就職イベントを、学生だけで運営しているのだ。

 11月中旬の金曜日の夜、化粧品メーカーの講演会が開かれた。400人収容できる教室は10分ほどで満席になった。

 運営する商学部3年、小太刀久雄君(21)はいう。

 「就職課だけでは足りない。だったら自分たちで企業セミナーを主催すればいいという考えです」

 27日間で30社の企業を招いた。

 タテのつながりを生かしたOB訪問の多さも特徴的だ。

 昨年9月に就職活動を始めた経済学部4年のダイスケ君(22)は、大手通信会社に就職を決めたほか、計4社に内定。ゼミの先輩を中心に約20人のOBを訪問した。ゼミには10年分、所属するテニスサークルには30年分のOB名簿があったのが大きかった。

 慶応のゼミには、卒業生が頻繁に顔を出す習慣がある。論文指導をしてくれることもあれば、飲み会の席で勤務先の魅力を熱く語っていくこともある。自然とOB人脈が築けているのだ。

 後輩ベンチャー育成

 慶応の卒業生組織「三田会」がその象徴だ。OBは約29万人。そのうち約27万人の住所を大学が把握している。年度三田会、職域三田会、地域三田会、趣味の三田会……など登録されているものだけで計約870もある。

 今年7月、珍しい三田会が設立された。メンター三田会。大学発ベンチャーの育成を支援するために、メンバーが毎週の授業に顔を出す。

 YKKで海外事業畑を歩んできた鈴木茂男氏もメンバーのひとり。

 「変な株を買うより、後輩の事業に投資するほうがよっぽど面白いし、やりがいもある」

 メンター三田会のように学生支援を目的に設立されるのは例外的。だが既存の三田会も、後輩への面倒見がとにかくいい。

 たとえば、職域三田会のひとつ印刷三田会。85年の設立で、約230人の会員がおり、02年から、毎年約120万円を奨学金として寄付している。

 インターネットによる就職活動が当たり前になった時代だからこそ、こうした慶応生の就職活動が特に際だつという指摘もある。

 企業と学生の就職動向を調査している「エドベック」の前島奈緒子さんはこう分析している。

 「リクルーター制が衰退したいま、本音、裏の情報は学生自らの力でOB訪問などから得るしかない。タテヨコのつながりが強い慶応生がより有利になるのです」

 サラリーマン格好悪い

 一方、苦戦ぶりが目立つライバル校の早稲田。早稲田大学キャリアセンターの日下幸夫課長はいう。

 「就職率56%は残念な数字だ。フリーターをしながら自分のやりたいことを考えるという学生も多く、決していいことではない」

 エントリーシートの書き方やOB訪問の仕方を指導する「ミニセミナー」、就職活動を終えた4年生が相談にのる「学生キャリアアドバイザー」など多様なプログラムを用意する。

 企業セミナーは秋以降、100回以上も開催。4年生の5月以降には、内定のない学生向けに「知られざる実力派企業」というセミナーも開く。

 だが、早大生の就職活動をみると、OB訪問の回数が慶応生に比べて圧倒的に少ない。また同級生同士の情報交換もあまり行われていないというのだ。

 自動車メーカーへの就職を決めている、早稲田大学政治経済学部4年のユウジ君(22)が活動を始めたのは3年生の1月だが、OB訪問はゼロだった。

 「就職への意識が低かった。サラリーマンになることに何となく抵抗感があったし、やりたいことが分からなくて動けなかった」

 エントリーシートを事前に同級生やOBに見てもらう作業も全くしなかった。

 「自分の書いたものを受け入れてくれる企業に行けばいいと思っていたから」

 ヨコもタテもない孤独な就職活動だった。

 大手通信会社のほか計3社の内定を持つ社会科学部4年のケイコさん(22)も同様だ。

 「OB訪問は全くしていない。OBに連絡を取りたくても、どう接触すればいいかわからなかった」

 就職活動を始めたのは1月中旬。学内の友人との情報交換もほとんどなかったという。

 「変に焦るのも嫌だったし、知ってるだけでも数人が就職浪人するといっていて、そんな話を聞いてもモチベーションが下がるだけ」

 という。個人プレーだけで内定を勝ち取っているのだ。

 こんな早稲田の学生を企業はどうみているのか。

 「能力的な差はそれほどないが、就職してキャリアを築こうという意識が平均的に低いと感じます。『サラリーマン格好悪い』という感覚が言葉の端々に表れることがあり、どうも食指が動きにくい」(総合商社)

 「とんがった人材は多い。しかし情報感度が低く、それほど周知しないセミナーなどではあまり顔を見ない」(損害保険会社)

 先輩、後輩バラバラ

 日下氏はいう。

 「慶応に負けていると思うことがひとつある。『三田会』だ。交友組織がうまく機能していて、例えば先輩を呼んで就職の話を聞くといったことが、学生生活の一環としてうまく取り入れられている。それが早稲田にはない。OBと接して進路について考えたり、同級生同士で情報交換をして効率的に就職活動をしたり、という意識が生まれにくいのです」

 早稲田の卒業生は約49万人。「稲門会」という同窓会組織もある。海外も含めて約1100もあるが、積極的に現役学生の就職支援活動をしている会は少ない。危機感は、卒業生の間では共有されつつある。

 「OBの組織がきちんとできていない。OBの名簿もないし、集まろうという動きもない。学生にも、そんなOBに頼ろうという気がない。早稲田は先輩、後輩がバラバラなのです」

 というのは早稲田出身で、外資系資産運用会社「ピムコ ジャパン」の高野真社長。高野さんたちは今年3月、金融関係に携わる卒業生を集めて「ファイナンス稲門会」を立ち上げた。

 大和総研特別顧問の奥本英一朗氏を会長に、現在約700人の会員が集まっている。これまでに堀江貴文ライブドア社長や奥島孝康早稲田大学前総長らを招いて、会員向けセミナーを開催してきた。

 「来年からは、学生向けの活動も計画しています。3年生向けにファイナンス稲門会のメンバーが就職相談に乗るイベントを開こうと思っています」(高野さん)

 早稲田大学としても卒業生組織の強化には力を入れ始めた。11月、リクルート会長の河野栄子さんが交友担当の理事に就任した。

 「卒業生とのネットワーク作りを強化してもらいたい」(早稲田大学広報室)

 という。河野さんは69年に教育学部を卒業。早稲田としては初の女性理事だ。国内最大の就職情報サイト「リクナビ」を運営するなど、就職ビジネスでは他を圧倒しているリクルートの会長とあって、そのノウハウの導入を期待していると見られる。

 慶応出身で、現在は早稲田大学大学院ファイナンス研究科の大村敬一教授はこう話す。

 「慶応にいると、何かあるとすぐ会を作ろうとする。だから根回し、金集めの名人が慶応出身者には多い。早稲田は個人が一番だと思う人間が多い。組織に依存することは美意識に反すると考える。卒業生組織についても、就職についても同じ。情報収集やOB訪問など、就職活動を合理的に行うという意味で、慶応生が抜きんでている」
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by miya-neta | 2005-03-14 10:27 | 教 育