中国「新華社」「人民日報」 台湾が取材を排除
2005年 04月 11日
「反国家分裂法」に対抗?
【台北=河崎真澄】中央通信によると、台湾の対中政策を主管する行政院(内閣)大陸委員会の呉釗燮(ご・しょうしょう)主任委員(閣僚)は十日、中国国営「新華社通信」と中国共産党機関紙「人民日報」に対し、台湾での取材活動から当面排除する方針を明らかにした。呉氏は「両社の報道は事実歪曲(わいきょく)や偏向が多く中国人民に誤解を与える」と理由を説明したが、中国側が制定した「反国家分裂法」への対抗措置との見方が強まっている。
新華社と人民日報への措置に期限は定めていない。今回の排除決定は事実上の追放措置と受け取られており、中国側が報復に出る可能性が強い。
台湾当局は、戒厳令時代には内外マスコミに対し、中国大陸と同様の厳しい取材規制を敷いた。しかし、その後の民主化で規制は撤廃され、二〇〇一年からは中国大陸の報道機関に対しても、台北に取材拠点の開設を認め、短期交代による記者派遣を容認。現在は、新華社、人民日報を含む中国側の五社が取材拠点を構えていた。
新華社などについて、呉氏は、台湾に関して政治的に極端な意見や事実の歪曲しか伝えていないと指摘。中国側ではインターネットを通じた台湾メディアの報道閲覧が規制されているため、こうした報道が中国の世論をミスリードしていると批判した。
また、二社が中国の党・政府の直轄下にあることを理由に挙げ、「今回の措置は報道の自由とは無関係だ」と語った。
呉氏は、偏向や歪曲があるとした二社の報道内容について具体例はあげなかったが、最近では、新華社記者のインタビューを受けた台湾プラスチックグループの王永慶董事長(会長)が、配信された新華社の報道内容を全面否定していた。
これは、陳水扁政権の支持者だった実業家、許文龍氏が「一つの中国」を支持する書簡を突然公表した点に絡み、新華社の台湾駐在記者が王氏の発言として今月二日、「『一つの中国』支持書簡は許氏の本心から出たもので台湾人への啓発効果がある」と記事を配信。しかし王氏は四日、台湾紙に対し「新華社の取材は受けたが許氏について何ら発言していない」と報道内容を全面否定したもので、台湾メディアは新華社の“虚報”を追及していた。