「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

闘論:どうする対中政策 高村正彦氏/中嶋嶺雄氏

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 日中関係がざわついている。反日感情をむき出しにして週末ごとに中国各地で繰り広げられる大規模デモ。呼応するように日本では中国への強硬意見が目立つようになってきた。日本の国連安保理常任理事国入り問題や歴史問題、海洋開発などさまざまな対立点をかかえる中国と、日本はどう付き合っていけばいいのか。(題字は書家・貞政少登氏)

 ◇未来共有へ努力必要 早期に賢明な行動を--元外相・高村正彦氏

 中国での反日デモをめぐり、本来なら規制すべき過激な行動に対して警備の不手際があったのは残念だった。胡錦濤政権の意思として、警備を手控えたということはないと思うが、日本大使館への投石被害について、日本政府が中国政府の責任を問い、賠償、謝罪を求めるのは当然だ。

 ただ、中国側が「デモの責任はない」と主張する背景には、歴史に対する日中両国の国民感情の隔たりがある。戦後60年の節目を迎え、日本側が「もう60年たった。いつまで謝ればいいんだ」と漠然と思うのに対し、中国側には「まだ60年しかたっていない」という感情がある。加害者は忘れても、被害者はいつまでも忘れることはないからだ。

 隣国同士が、歴史を100%共有できることはあり得ない。しかし、国民同士が相互に交流し、相手の感情を理解することが大事だ。そのプロセスを通じて、共有できることは共有する。そして、過去は完全に共有できなくても、未来を共有できるよう努力することが必要だろう。

 小泉純一郎首相が今後も靖国神社に参拝し続けるかどうかは、首相が決めることだ。しかし、靖国問題を日中の勝った負けたの話にしてしまったことは、両国指導者の失敗だった。経済発展を続ける中国との間で、お互いのナショナリズムがぶつかりあっている。

 33年前の日中国交正常化当時、日本人の多くが中国に親しみを感じていた。日中友好関係を築けたことは、中国にとっても大きな国益だった。私は日中友好議員連盟の会長を務めている。議連としては両国の国民感情の相違を埋め、政府間の外交がやりやすくなるよう努力する。日中間の相互理解、相互交流、相互信頼を少しでも深めるように努めるのが我々の立場だ。

 ただ、一部の中国の指導者が、日本政府に圧力をかける手段として、過激な行動を伴うデモが有効だと思っているとしたら誤りだ。一歩間違えると、この反日行動は日本側の嫌中感情へと跳ね返る。日本の嫌中感情が、再び中国の反日感情を刺激し、加速度がつくと、負のスパイラル(連鎖)となり、誰も制御できなくなる。両国の指導者は、相手の国民感情にも一定の配慮を払う必要があるし、早期に賢明な行動を取るべきだ。【構成・中村篤志】

 ◇官民一体反日許すな 対決して対話に導け--国際教養大学長・中嶋嶺雄氏

 北京、上海と広がった今回の反日デモに対する中国政府の関与は決定的だ。共産党独裁政権下の中国では普通、デモは起き得ない。天安門事件や法輪功のように徹底的に弾圧される。しかし、今回は弾圧するどころか政府が「責任は日本にある」と煽(あお)っている。在外公館のガラスが割られたり、国旗が焼かれたり、日本の主権が暴力で侵された事態であり、絶対に許せない。日本側が新たな問題を起こしたわけではないのに組織的、体系的な反日運動になった。

 中国は全土で乱開発が進み、貧富の差も環境問題も深刻だ。中国共産党が最も恐れているのは農民や民工(農村から都市部に流入した出稼ぎ労働者)たちの反乱で、ひょっとしたら一挙に共産党政権が覆ることになるかもしれない。そうした不満が渦巻く中国で反日は絶好の材料だ。「敗戦国とみなしていた日本が安保理常任理事国に入るとは何事か」という非常に感情的な反応だ。中国外務省も表向きは日本の安保理入りに反対とは言いにくいが、それを若者たちが言ってくれた。官民一体の反日デモであり、中国が国際社会に責任を持てる成熟国家ではないことを示した。

 これに対して「中国は悪いが、日本も反省すべきだ」という対応を今回は絶対に取るべきではない。日本側には非がないことをきちんと主張すべきだ。これまでの日中関係に本当の対決はなかった。対決がなければ対話はない。国交正常化以来、「日中友好のために」と行ってきた「謝罪外交」のツケが今回、噴出した。歴史認識とか戦争責任とか言われるが、日本は戦後、一度も戦争をしていないことによってまさに責任をとってきた。原爆の悲劇も反米ナショナリズムの原点にせず、戦争そのものが悲劇であり、誤りだという解釈をとってきた。中国は戦争もしたし、軍事力を著しく増強し、国内ではチベットやウイグルなどの少数民族を抑圧している。そういう中国の現実を冷静に見たうえで、本当に中国との友好を考えるなら、本格的に対決して対話に導くことだ。

 小泉純一郎首相は少なくとも靖国参拝の姿勢を変えるべきではない。正月に行ったり、日をずらしたりと姑息(こそく)なことをするより、(春秋の)例大祭に行く方がいい。【構成・平田崇浩】

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 ■人物略歴

 ◇こうむら・まさひこ

 中央大法学部卒。弁護士から政界入り。外相、法相、経済企画庁長官などを歴任。63歳。

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 ■人物略歴

 ◇なかじま・みねお

 東大大学院修了。東京外大学長を経て04年から現職。「北京烈烈」でサントリー学芸賞。68歳。

毎日新聞 2005年4月17日 東京朝刊
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by miya-neta | 2005-04-17 10:00 | 国 際