「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

社説:少子化 看過できぬ中絶32万件

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 厚生労働省の統計によると、03年度の人工妊娠中絶手術は31万9831件を数えた。出生者数の3分の1弱に相当し、実数は倍以上に上るとの声もある。表に出た数字でも県庁所在都市の人口に匹敵する命が、消えている現実は看過できない。大幅削減できれば、少子化問題も一気に解決する。

 中絶には母体の健康を守るためなど苦渋の決断として行われるものが多い。だが、一方では本来は違法なものが相当数含まれていることも、周知されているところだろう。やむにやまれぬ事情があったにせよ、女性が子どもを喜んで出産できない環境があるとは、やりきれないことだ。救える命は、対策の限りを尽くして救わねばならない。

 多子家庭への育児・教育資金などの公的援助を手厚くすることも効果的だろうが、抜本的には人々の結婚観、子ども観を変えることが必要不可欠だ。たとえば、シングルマザーを異端視しない風潮が広がれば、子を産みたい女性は確実に増えるだろう。非嫡出子や養子に対する法律上、戸籍上の差別をなくすことでも同様だ。

 子どもが真に大事にされてきたか、を問い直す必要も痛感する。明治から終戦直後まで、「もらい子殺し」という養育費目当ての犯罪が各地で繰り返された歴史などが気がかりだからだ。1948年に東京・新宿で1年間に赤ちゃん112人を引き取り、85人を消化不良や栄養失調で死なせた産院経営者が摘発されたのが一例だ。

 多くの子どもが親に育ててもらえなかっただけでなく、引き取られた後、冷たい仕打ちを受けることを承知で子どもを手放す親が多数いたかと思うと、背筋が寒くなる。悪弊は断ち切られてはいない。最近の中絶にも通底する非情さが潜んでいるのではないか。

 子どもは親の所有物とする発想が根強いことも大きな問題だ。諸外国と比べ母親によるえい児殺しが異常に多いことも、その表れだ。無理心中に子どもが巻き込まれるケースも目立つ。世間も「子どもだけ残されるのはかわいそう」と考えがちだ。そのせいか、一般に自分の子を殺した親に言い渡される判決は、他人を殺害した者に対するものより軽い。

 最近は忘れられがちだが、「子は授かりもの」という認識を新たにしたい。子は作るもの、と考えると、どうしても子どもは軽んじられてしまう。子を親の所有物ではなく、独立した人格として尊重する気風が確立されれば、中絶も現在より一段と選びにくくなるだろう。当たり前のように行われている男女の産み分け術にしても、親のエゴイズムと結びついていることを自覚したい。

 子どもが大事にされない社会では、女性が安心して出産できなくて当たり前だ。少子化を憂うより先に、子どもの人権の確立に力を入れるべきではないか。(論説委員・三木賢治) 

毎日新聞 2005年4月21日 2時24分
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by miya-neta | 2005-04-21 14:59 | 女 性