四川奇病:「貧しさ」がまねいた感染拡大
2005年 07月 28日
四川(しせん)省・資陽(しよう)市を中心とした地域で、吐き気や高熱などを症状とする「奇病」でこれまでに27人が死亡した問題で、中国メディアの現地取材から浮かび上がってきたのは「貧しさゆえの感染」という悲しい現実だ。
27日付の中国青年報によると、資陽市の羅徳雲さん一家では、妻が感染した。7月18日に羅さんは市場まで買出しに出かけたところ破格のブタが目に入った。1頭80キログラムはあるブタでたったの15元。普段なら1キログラムで5元はする。経済的に裕福ではない羅さんの心は動き、1頭を買った。
夕食には妻がブタの肝臓の炒め物を出してくれた。羅さんは一口食べただけで「異常に苦い」と感じ、食べないよう妻に勧めた。しかし、妻は皿に盛り付けた料理の大半を平らげた。
6日後、めまいを訴えた妻は寝込んでしまった。妻の顔は真っ赤で、額に手を当てると燃えるように熱かった。村の幹部から「問題になっている『奇病』ではないか」と聞いたのは、とりあえず近所の医者に行って注射を打ってもらった後だった。
羅さんは妻を市第1人民病院へ担ぎ込んだ。病院はすでに患者であふれかえっていた。妻の体温は39.8度にまで上がっていた。ただし、不幸中の幸いなことに命だけはとりとめることができた。
中国メディアは羅さんのような事例を何人も紹介している。今回、病気に感染した人の多くは、貧しくて死んだブタの肉しか食べられなかった人や、貧しさのために(現金収入を無にすることに耐えられず)死んだブタまで出荷してしまった人たちだった。
現地の行政当局は「死んだブタは出荷しないように」「衛生当局の合格を得たブタしか食べないように」などと呼びかけている。
しかし、「高価な正規品」を食べられない貧しい人たちもたくさんいる。「食の安全」を推し進める行く手には、「貧富の格差」という壁も横たわっている。(編集担当:菅原大輔)
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