「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

今日のニュース・明日の予測:[222]「信長」的小泉改革の総点検を

MSN-Mainichi INTERACTIVE 嶌信彦のコラム


◇政争ではなく、政策で戦え

 自民・公明の連立与党、民主党がともに過半数を取れず、政界再編を巡って本格的に政策を軸とした政界再編が動き出す--これが、今回の総選挙で一番面白く、意味のある最終結論ではないか。国民は、今の政治状況に嫌気をさし、新しい再編の流れを求めている。しかし、いつも最後のところで、バランス感覚が働き、何事も変わらず政権は維持されてしまう。少し、勇気を持って変えてみるような投票結果にならないものだろうか。国民の側も腹をくくる時が来ていると思う。

 郵政民営化法案が参議院において大差で否決された途端、小泉首相は衆議院の解散に打って出た。この解散は「郵政民営化を今一度国民に問うものであり、これに反対する人物、党は改革反対勢力だ」と小泉首相は主張した。改革対反改革という選挙土俵を作り、民主、社民らの野党も反改革、抵抗勢力と位置づけるいつもの小泉流の“敵を明確化する”ことで、浮揚をはかる戦略だ。最近は織田信長を好んで読んでいるようで、自民党の郵政反対派は「一切、党公認をしない」「造反の主役級選挙区には知名度が高く勝てそうな候補をぶつけ、全滅させる」「自民党の公認申請者には、約定を書かせる」など、従来の選挙戦とは異質の激しさ、非情さが目立つ。まるで、信長の一向一揆掃討、比叡山焼き討ちを思わせる徹底ぶりだ。

 かつて小泉首相は1980年の故大平正芳首相の不信任案に自民党員でありながら賛成し、解散に追い込んだが、党公認をもらった。郵政法案反対は首相不信任の造反よりは、罪が軽いと思われるが「殺されても解散を行なう」という小泉首相にしてみれば、不信任と同様の意味を持つということなのだろう。

 造反組や党内の解散反対論者たちは、こうした小泉首相の激しさを読み違えたのか。というより、本当に反対なら造反者も解散反対論者も、小泉首相同様に「殺されても反対する」ぐらい強い意思で反乱を起こすべきだったろう。解散となったら、公認欲しさに唯々諾々と信念を曲げる姿は見苦しさがつきまとう。

 8月末までは、選挙戦というより、まず自民党内の争い、民主党内の戦線整備に時間を要し、本格的な政策論争にはなるまい。自民造反組は選挙戦術の必要性もあって新党を結成した。緩やかな政策集団、組織を立ち上げ造反組が共通できる郵政反対の論理、選挙政策をある程度打ち出さないと、単なる怨念の戦いとして扱われるだけで、メディアの餌食になるだけだろう。

 また、民主党は郵政法案の対案を出すとともに国民や経済界が関心を持つ年金、財政改革、景気(中小、地方、個人)とアジア外交などについて骨太の分かりやすいキャッチコピーを打ち出さないと、自民党内の怨念の対立の影に隠れてしまうだろう。

 選挙の結果がどうなるか。第一段階では、小泉首相の解散宣言のインパクトで自民党が支持率を上げているが、この信長流激しさは国民にどう受け止められるか。また“刺客”と称して造反候補にぶつける著名人や自民党議員の名前を見て、国民はいずれその選挙手法を面白がるだけではなくなり、人間の生き方なども含めて真面目に考え出すのではないか。そして小泉首相のいう“改革”の中味が詳細に問われ出すと、その支持も低下する可能性が強い。

 小選挙区制はたぶん、自民・民主の一騎打ちの様相となろう。もし、この選挙結果で、自民・公明連立与党、及び民主の両党が過半数を取れず、自民造反組(国民新党など)や社民・共産、無所属などがキャスティングボートを握ったときがもっともエキサイティングなことになろう。既存の政党との合従連衡で連立政権をつくるのではなく、自民、民主の中から新たな政界再編の動きが出てくることが期待される。ここ1~2年の自民、民主の獲得票総数から見ると、その可能性は決して低くはないのである。

 ところで、郵政民営化の本質は何なのだろうか。小泉首相は「民にできることは民に任せる」「350兆円を超える郵貯、簡保のカネを民間に流れるようにすれば、公社・公団のムダ遣いや要らない組織がつぶれるし、中小企業にもカネが流れる」「郵政の職員が民営化で公務員でなくなれば、その人件費は財政再建に役立つ」「しかし、国民に必要なサービスのネットワークは維持する」「この郵政民営化が改革の本丸であり、これができなければ他の行財政改革などできるはずがない」--と主張している。

 いわば、郵政公社を民営化することで、郵政事業を縮小再生産の方向に導き、“小さな政府”をつくるというわけだ。

 しかし、反対派が「それでは地方などの弱者切り捨てになり、郵政公社はつぶれることになる」と反論すると「民営化まで10年間の猶予を与える。3年ごとに見直し、つぶれないようにする」「2兆円の基金をつくる」「10年間の間に各事業が十分に民間と戦える競争力がつけられるようになる」「郵政4事業を一体化で運営し、株式の持ち合いを認める」などといった趣旨の答弁を行なっている。

 となると、はたして民業を圧迫しないよう郵政を縮小再生産の方向に持ってゆくのか、逆に10年間の猶予を与えて民間に負けない競争力をつけさせようとしているのか、よく中味が見えないのである。

 総論と各論に矛盾があるため、国民には郵政民営化の現実が自分達の生活や関係企業にどう影響するか、よく分からないからこそ国民の関心が低いといえよう。

 郵政4事業を因数分解すると、郵便配達事業は宅配便、郵便貯金は銀行や信金、簡保は生・損保、ネットワーク事業はスーパー、コンビニと競合すると考えてよいだろう。

 郵便配達事業は、インターネット、FAX、電話の発達で今後減少することは確実だ。宅配業者はどんな離島でも届けると言っているから、何れは衰弱し縮小しよう。電報事業を見ていれば明らかだ。

 郵便貯金は、現在国債を買ったり、政府の高めの預託金利のおかげで利ざやを稼いでいるが、ゼロ金利がなくなり国債問題が顕在化すると経営は大変になる。現在銀行は金利差収益を50%以下に抑え、リスク管理、M&A、手数料収入、ファンドビジネスなど新しい収益源を50%以上にしようとしている。郵貯の局員にそんな才覚がないとすると、今後10年間で民間から優秀な人材を引き抜き、新セクションを強化しないと銀行に負けよう。

 簡保と生損保の競争は預かり金の運用を考えると民間の方が強そうだし、ネットワーク事業も民間のスーパー、コンビニとのサービス競争にどこまで耐えられるか。こんな推測で10年後を考えると郵政が生き残るにはこの10年間の期間に相当の恩典、条件を与える必要がある。この8月までの国会では、政府側は郵政公社が民間に負けないよう特典を与える話をかなり約束した。本当に郵政民営化は「小さな政府」づくりの礎になるのか、民のことは民に任せるという論理と矛盾しないのか--印象論でなく、ひとつひとつ精査して郵政論をもう一度点検する必要があろう。

 本来、郵政民営化は4年後に議論することになっていたが、小泉首相が公社の機能の実情をよくみないうちに、民営化の前倒しをはかろうとした。これが、そもそも郵政問題を政局化(政治闘争化)させてしまった原因とも言える。これらの点も含め、選挙戦では大いに議論し、国民にわかるようにしてもらいたいものだ。

 2005年8月19日
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by miya-neta | 2005-08-19 11:53 | 政 治