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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

小学校でプログラミングを学ぼう 一橋大学総合情報処理センター助教授、兼宗進さん

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小学校でプログラミングを学ぼう 一橋大学総合情報処理センター助教授、兼宗進さん_b0067585_8505681.jpg児童にドリトルの書き方を教える兼宗助教授

◇一橋大学総合情報処理センター助教授、兼宗進さん

 情報教育は混迷している。学校、教員によって考え方、教える内容に違いがあり、教員の力量も一定ではない。情報で何を教え、子供たちにいつ、どんな能力を身に付けさせるのかについても教員や研究者にはさまざまな意見がある。教育用プログラミング言語「ドリトル」を開発した一橋大学総合情報処理センターの兼宗進・助教授は、子供たちにコンピューターの原理を理解させるには、プログラムを書くことがよい、と主張している。「ドリトル」やプログラミング教育の必要性について聞いた。【平野秋一郎】

 --「ドリトル」とはどんなものですか。

 小学生から使える教育用プログラミング言語で、中高生ももちろん、大学生や社会人の入門用にも使ってもらえます。「BASIC」や「LOGO」のような30年以上前に設計された言語と違って、単に絵を描くだけでなく、ゲームをつくったり、ロボットカーを動かしたり、楽しくプログラムを作れるようにと開発しました。

 --プログラミングというと、記号の羅列で、難しいというイメージですが。

 プログラムは簡単な日本語で書きます。例えば「カメ太!200歩 歩く。」と書くと、画面上の亀「カメ太」に「200歩」歩くように命令を出したことになり、画面上の「カメ太」は「200歩」の長さを動いて、線を引きことが出来ます。だからルール、文法を覚えれば、小学生でもプログラムを書くことが出来ます。

 --ドリトルはいつ開発したのですか? 何年生くらいを想定してつくったのですか。

 2000年の夏に開発しました。小学校の4年生だとちょっと難しいかなと思いますが、5、6年生くらいだったら、十分、使えると思います。

 --子供でもプログラムが書けるようにということで工夫したのは?

 まず簡単な日本語で書けることです。そして、「カメ太!200歩 歩く。」というように、カメ太といった画面上の「生き物」や画面上に作った三角形や四角形などの「図形」に呼びかけ、お願いする形で命令を出すと、「生き物」や「図形」が動くようにしています。コンピューターに「命令」すると「作業をする」という関係を子供でも実感できるようにしました。

 --どうして「ドリトル」を開発したのですか。

 コンピューターの原理を学ぶ上でプログラミングは必要だと考えているからです。今、あらゆるものにコンピューターが使われています。でも、コンピューターはいろんなことをしてくれるけれど、コンピューターの中はどうなっているのかはブラックボックスで、普通の人には想像もつきません。コンピューターがどうして動くのか、その原理を知るには、プログラミングをするのが最適だと思います。

 --コンピューターのことを知らなくても、生活する上で差し障りは感じませんが、コンピューターがブラックボックスではいけないんですか。

 いけないと思います。今は生活のいろんな場面でパソコンを使ったり、ネットワークを使ったりしています。コンピューターに自分の命や財産、生活の多くを任せるようになっていますから、コンピューターが間違ったら、大きな影響、被害を受けます。なぜ問題が起きたのか、おおよそのことは見当が付くくらいの知識、身を守るためには最低限のことは知っておいてほしいと思います。全部、コンピューター任せ、あなた任せでは危険すぎます。

 --先生が教えたいコンピューターの原理とは?
 コンピューターは何かするための専用の機械ではなくて、プログラム、ソフトウエアによって初めて、いろんなことが出来る機械だということです。米と水を入れてスイッチを入れたらご飯が炊ける炊飯器のように用途の決まった機械ではありません。コンピューターは、人間が求める作業の内容を記述した「ソフトウエア」「プログラム」に従って動いています。だからソフトウエア、プログラムを変えればメールの読み書きも、作図も、車を動かすことも、いろんな作業をすることができます。コンピューターはプログラムという記述された手順に従って作業をしているということを、IT社会に生きる人たちは知らなくてはいけないと思います。

 --小人が中で動かしているのではないと。

 そうです。人間が入っているわけでもないんです。コンピューターは人間が与えた命令に従って動いている。それを言葉で説明しても、分かりにくい。しかしプログラムを書いて、動かしてみれば、理解しやすいと思います。プログラムを書くことで、コンピューターが命令通りに動くことを体験してもらいたいですね。

 --だれかが命令していると?

 身の回りにあるコンピューターも、誰かがプログラムを書いているから作業をするんです。コンピューターは誰かの書いたプログラムで動いている。それを知ってもらいたい。コンピューターは生活のいろんなことに役立っていますが、一方でウイルスとかワンクリック詐欺とかチェーンメールといった、利用者に害をもたらすものもある。それも、誰かかが書いたプログラムによって動いているということですね。それを、できれば小学校高学年か遅くても中学生までに知ってもらいたいと思っています。

 --いいプログラムも悪いプログラムも書けるんですね。

 そうです。もうひとつ大事なことは、プログラムにはエラー、間違いがたくさん起きるということです。ドリトルで子供たちが書くような短いプログラムでもエラーは起きます。本物のプログラムはもっと長いので、エラーもたくさん起きうるんです。そういうものに大事な仕事を任せていいのかとか、出てきた結果、金額の計算とかが100%正しいのか、どこかに間違いがある可能性もあるのだということを理解しておいてほしい。

 --でも、コンピューターがやったんだから正しいだろう、と思いがちですね。

 コンピューターで計算しても、プログラムが間違っていれば結果を間違えたり、計算が違ったりするんだ、ということを知ってほしい。でも、先生が「コンピューターを全部信じてはいけませんよ」と言っても、実感がなければ子供たちは忘れてしまうでしょう。ドリトルでプログラミングを体験して、覚えてほしい、と思いました。

 そうです。コンピューターに仕事をさせるには、そのための手順があって、それを「言葉」で書いて、コンピューターに実行させるということが分かればいいんですが、できれば、本物に近い形でやってほしい。子供たちはコンピューターゲームをよく知っています。自分でゲームソフトをつくれば、「あ、ゲームってこういう原理で動いてるんだ」と分かってくれるのではないでしょうか。そして、書き方や文字を間違えると、動かない、ということも実感してほしい。

 --図形を描けました、オブジェクトをつくりました、でもいいわけですか。

 最低限、それでもいいです。楽しくて子供たちは喜びます。それをゲームづくりまで持っていければ、自分たちが普段、やっているテレビゲーム、コンピューターゲームとのつながりが分かるので、コンピューターの原理をより理解できるようになると思います。

 --ドリトルでゲームソフトをつくっている子供たちは、思い通りに動かないと必死になって間違いを探しますね。

 そうです。自分のプログラムはどこがいけないのか、文字が違っているのか、手順が違っているのか、文法通りに書いていないのか、懸命に探しますね。そして、出来た時は、大いに喜ぶ。

 --「あ、これはおかしい」と気付けるようになればいい?

 そうですね。エラーが出るというのは、自転車の練習をしていて転ぶようなものですね。痛みを伴わないとなかなか覚えない。

 --プログラムを書いて、「動かない」といって書き直し、「動いた」と喜んで、さらに書くというのは子供にはいいのでしょうね。

 いいですよ。例えば紙工作とか木工だと間違えて切ってしまうと、新しい紙や木材を持ってこなくちゃならない。でもソフトウエアは何度でも作り直せます。それがすごく教育的かなとも思っています。

 --情報教育にプログラミングを入れるべきだと主張されていますが、抵抗が大きいようですね。

 それには背景があるんです。日本では教育用のプログラミング言語「LOGO」や「BASIC」というコンピューター言語が1980年代に広く小学校で使われました。ところが「BASIC」は機能が貧弱でほとんど何もできないんですね。それで、子供をプログラマーにしようという教育をやって失敗した。「LOGO」は日本語で書けて、ドリトルと似ているんですが、アプリケーションソフトに結びつく機能まではない。単なるグラフィックスで終わって、そこから先がないんです。子供たちも初めは「描けた」と喜ぶけれど、それだけだから飽きてしまう。先生も「絵を描いたからって何なの」と思ってしまう。それで、プログラミングを学校で教えることの反省が生まれて、授業にプログラミングは入れないということになってしまったんです。おかしいと思います。ぼくらの主張は「LOGO」や「BASIC」だから失敗したので、今はIT技術も進歩しているし、「ドリトル」は拡張性があるから、今はプログラミング教育は可能だと思っています。プログラミング教育を、80年代のプログラミング言語で評価してほしくないですね。

 --ドリトルはどれくらい使われているのですか?

 フリーソフトなので、ダウンロードは数万件されているのですが、実際に個人で使っているのか、ダウンロードしたものを学校でコピーしているのかどうかは把握できないので、実数は分かりません。

 --ドリトルでプログラムをする子供たちを見ましたが、集中して楽しんでいますね。

 子供たちはクリエイティブな作業を楽しむし、自分で解決法を探ります。多くの学校で使っていただきたいですね。

プログラミング言語「ドリトル」
http://kanemune.cc.hit-u.ac.jp/dolittle/



ドリトル活用の授業研究
小学生がプログラミング
 2005年9月5日
by miya-neta | 2005-09-05 08:49 | 教 育