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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

産経朝刊 産経抄 2005/11/27 「道鏡天皇」

Sankei Web 産経朝刊 産経抄(11/27 05:00)


 四十何年か前、新しい千円札を発行するにあたり、肖像に誰がふさわしいかを日銀がアンケートを行ったことがある。今の野口英世から二代前だ。結果は一位が採用されることになる伊藤博文で、二位は奈良時代の政治家、和気清麻呂だった。

 ▼調査は秘密裏で、対象も日銀、大蔵省の関係者、家族に限られている。それにしても、野口英世が五位だったことを考えれば清麻呂の「人気」には驚く。戦中から戦後にかけ十円札の肖像となり馴染みがあったのも事実だが、いかに高く評価されていたかがわかる。

 ▼いうまでもなく「道鏡天皇」を阻止した功績からである。女帝・称徳天皇の寵愛(ちょうあい)を受けた僧・道鏡が、宇佐八幡宮の託宣だとして皇位につこうとした。これに対し宇佐に派遣された清麻呂が逆の託宣を得て、自らは左遷されながらも、道鏡の野望を砕いたのである。

 ▼皇室が皇位継承について「男系男子」にこだわり続けてきたのも、この道鏡事件の再発を防ぐ意味もあったのだろう。継承の原則をなるべく簡潔なものとし資格者をしぼる。そのことで天皇を利用しようという外からのうごめきを封じる。そういう知恵だったのである。

 ▼皇室典範有識者会議が行った答申は、先人が命がけで守ってきた皇位の純粋性をいとも簡単に覆すものだ。こうも無条件に女性・女系天皇を認めては「第二の道鏡」とは言わないが、聖と俗との境がなくなる恐れがある。伝統ゆえの皇室に対する敬意も薄らぐというものだ。

 ▼答申の支持者は「伝統も現実に合わせたらいい」と言うかもしれない。だがそれは逆だ。伝統に現実を合わせる。つまり旧皇族の復帰など男系を守るための手立ての方を考えるべきなのである。国民の側で再議論を起こすしかない。
by miya-neta | 2005-11-27 05:00 | 政 治