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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

京都・宇治の小6刺殺:「授業受けたくない」 険悪な仲、塾も把握

事件:MSN毎日インタラクティブ


 京都府宇治市の学習塾で10日、市立神明小6年、堀本紗也乃(さやの)さん(12)が殺害された事件。逮捕されたアルバイト講師で同志社大法学部4年の萩野裕(ゆう)容疑者(23)は、10歳以上も年下の小学生になぜ、刃物を向けたのか。法律を学び、本来、子どもを守るべき立場の人物が2人きりの教室で起こした信じられない事件は、親たちや地域社会、教育関係者に癒えることのない傷を残した。

 ◇試験監督、別の講師に

 萩野容疑者が勤めていた学習塾「京進」は、京都市下京区の本社で立木貞昭社長らが会見。「信じられないことが起こり、大変申し訳ない」と陳謝したうえで、萩野容疑者と紗也乃さんの関係が「うまくいっていなかった」と述べた。

 説明によると、紗也乃さんは今年3月の春休みから通い始め、国語の成績で悩んでいた。11月下旬ごろ、紗也乃さんが「(萩野容疑者の)授業を受けたくない」と申し出たため、校長(32)の判断で12月から受講をやめた。事件当日の10日に予定されていた中学受験の合否判定テストでも、紗也乃さんとの関係を懸念した校長が、試験監督を萩野容疑者から別の男性講師(22)に替えたという。

 このため、萩野容疑者はこの日に塾に来る予定はなかったというが、塾に現れ「国語の受験に関するアンケートをとりたい」と試験監督係の講師に申し出た。アンケートは通常、試験前にはしないという。

 萩野容疑者は、大学を停学中だった03年11月にアルバイトで講師に採用され、中学生の英・国語、小学生の国語などを担当。評判は「熱心」「授業は厳しい」などだった。履歴書に停学中の記載はなく、白川寛治専務は「知っていれば採用しなかった」と話した。

 ◇塾生からは「熱血先生」

 半面、同じ塾の6年男児の母親は「息子は萩野容疑者に昨年1年間、国語を教えてもらった」と語り、男児は母親に「すごく優しくいい先生と思っていたのに、びっくりした」と話す。

 また、萩野容疑者から英語と小論文を学ぶ中学3年の女子生徒(15)は「熱血タイプの人。ジェスチャーと声が大きく、前の席の子にツバが飛んでくるほどだった」。別の中1女子生徒は「授業はおもしろくて分かりやすかった。怒った姿を見たことはない」と語った。

 現場周辺は住宅が密集する場所。近くの主婦は「この地域では、小学生の保護者が自転車で地域パトロールをしているが、塾の中で殺されたのでは止めようがない。これまで大きな事件などない街だったのに」とショックを受けていた。

 ◇中学生時代に家庭内暴力も

 萩野容疑者は宇治市内の自宅で両親と3人で暮らす。かつては、周囲に「家庭内暴力」で知られていたという。

 近所の人によると、萩野容疑者が中学生のころ、自宅で大きな声を上げて騒ぐ姿を覚えている。食器の割れる音が響くこともひんぱんにあり、ある住民は「(近所の)家の中にいても聞こえるほど激しい音だった」という。

 中学時代に同じソフトテニス部で1学年下だった男子学生(22)は「普通の人だったが、どちらかというと暗い印象。友達も特定の人しかいなかったようだ。家庭はしつけが厳しいと聞いたことがある」と話した。

 ◇謝罪の手紙に「生まれ変わり、やり直す…」--2年前の強盗傷害、被害女性「信じられぬ」

 「後悔と自責の念でいっぱい。地道に社会に貢献していけるよう、うまれかわってやり直す」。萩野容疑者は03年に強盗傷害容疑で逮捕された際、被害者の女子学生に謝罪の手紙を送っていた。今は会社員となったこの女性(24)は「まじめな人と感じたので、立ち直ってくれると思ったのに」と、くちびるをかんだ。

 萩野容疑者は03年6月、同志社大学今出川キャンパス(京都市)の図書館で、置いてあった財布などを盗み、発見した警備員に体当たりするなどして軽傷を負わせたとして逮捕されている。

 女性に手紙が届いたのは同年9月。その中で、「自分勝手で卑怯(ひきょう)で浅はかだった。今回つかまらなければ、ゆがんだ人間のままだったと思う」と自己を評したうえで、「留置場で深く反省し、しっかり償っていく覚悟です。申し訳なく、胸が詰まる」と反省の弁を述べている。そして「自分の利益を求めるのではなく、周りの幸せのため、努力し勉強し働いていく」と決意を述べ、「どんな困難や誘惑にも負けない強い人間になる」と宣言している。

 今回の事件を聞いた女性は「当時、直接顔を合わせてないが、手紙を見る限り、まじめな学生という印象があった」と話す。同年代で、将来もあることなので、萩野容疑者の弁護人から求められた嘆願書にも署名したという。「子どもを殺すなんて、信じられない。更生は無理なんでしょうか」と、つらそうに言葉を絞り出した。【藤田文亮】

 ◇学長が謝罪--同志社大

 萩野容疑者が在学している同志社大(京都市)では10日、八田英二学長、佐藤鉄男・法学部長らが会見し、謝罪した。

 八田学長は「学生が取り返しのつかない事件を起こし、痛恨の極み。ご遺族の皆さんに深くおわびを申し上げ、被害に遭われたお子さんのご冥福を心からお祈りしたい。同志社130年の歴史で過去に例がない事件。できる限りの対応をしたい」と沈痛な面持ちで述べ、深々と頭を下げた。

 同大によると、萩野容疑者は大阪府内の同大系列高を卒業後、推薦で01年4月、法学部法律学科に入学。2年からは、法学部で最も人気が高く、成績順に受講者選抜も行われる刑事学のゼミに所属、教員養成のための教職課程も受講。3年の時に起こした事件で停学になる前の2年生までに卒業に必要な130単位のうち90単位を取得。復学後も含む全科目の平均点は100点中83・2点で、入学が同じ学生約770人の上位10%に入るという。

 停学は03年10月~今年3月。事件の際の大学側の聞き取り調査には、「自分も窃盗被害に遭ったことがあるのでやった」と説明した。しかし、復学直前の今年3月25日、復学後の心構えについて「きちんとやります」という趣旨の返事をし、今夏までの半年間で32単位(16科目)を取得するなど、「勉強は意欲を持ってやっていたように見える」という。

 ◇他の生徒12人、離れた教室に--事件の経過

 学習の場が事件現場となった京進宇治神明校2階の106号教室。警察官らが萩野裕容疑者を現行犯逮捕した現場を再現した。

 「包丁で刺した」

 午前9時2分。萩野容疑者が自ら携帯電話で110番通報した。この時、106号教室には紗也乃さんと萩野容疑者の2人きりだった。直前には生徒13人がいたが、萩野容疑者がアンケートを取ることを理由に、紗也乃さんを除く12人と試験監督となる別の講師(22)を校舎反対側の101号教室に移動させた。

 110番後、消防署員3人と京都府警宇治署員が現場に到着。事務室にいた男性事務員が「(事件を)知らない」と驚いた。

 署員らが手分けして、各教室を回り、106号室の前に来るとブラインド越しに男の足が見えた。男は窓と、教室最前列に置かれたホワイトボードの間に立っていた。署員らが入ろうとしたが鍵がかかっていた。「開けなさい」。声を掛け、ドアをたたいたが、応答はない。数十秒の後、男は突然、ドアを開けた。無言のその男が萩野容疑者だった。萩野容疑者は、血だらけの手で握り締めた携帯電話で誰かと話していた。部屋の奥に、紗也乃さんがあおむけに倒れ、そばに、包丁が2本落ち、1本には血が付いていた。すでに心肺停止状態だったという。

 ◇緊急保護者会で心のケア訴え

 神明小で10日午後7時半から、緊急の保護者会が開かれた。約350家族が紗也乃さんに黙とうした後、スクールカウンセラーを務める香川克(まさる)・京都文教大助教授が児童の心のケアについて訴え、学校側が今後の対応を説明した。福山治校長(56)は「亡くなった堀本さんの冥福を皆さんと一緒にお祈りし、子どもたちの心のケアを進めたいとお話しした」と語り、「(容疑者に対し)強い憤りを感じる」と険しい表情をみせた。

毎日新聞 2005年12月11日 東京朝刊
by miya-neta | 2005-12-11 07:00 | 社 会