「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

風に吹かれて:in the U.S.A. 父親にならない権利=國枝すみれ

話題:MSN毎日インタラクティブ


 女性が妊娠したら、父親が相手の男性のところに乗り込み、「結婚をしろ」と銃で脅す--。ショットガン・マリッジ(できちゃった婚)という英語の由来だが、今の米国でそんな単純な展開はほとんどない。

 ミシガン州のコンピューター技師、マット・デュベイさん(25)は3月、男性も父親にならない権利があるとして、元恋人(20)が産んだ娘への養育費支払いを拒否する裁判を起こした。

 別れた後で発覚した妊娠。元恋人は中絶することも養子に出すことも拒否した。「彼女はピル(経口避妊薬)を飲んでいると言ったんだ。だまされた」。愚痴るデュベイさんの細い声を聞けば、同情もしたくなる。

 最高裁がロウ対ウェイド判決(73年)で妊娠中絶を合法化して以来、女性は産むか、産まないかを自由に選べるようになった。一方、男性に選択肢はない。女性が産んで育てる決意をした場合、意に沿わなくても養育費を払うしかない。デュベイさんは「憲法の下の平等に従い、男性も養育費を払わない代わりに、親権も放棄するという選択権を与えられるべきだ」と主張する。裁判は「男性版ロウ対ウェイド」と名付けられた。

 こんな裁判が起きるのは、子どもの3割が未婚の母から生まれ、半分以上が片方の親の家庭で育つ社会だからだ。子どもの生活を守るため、裁判所は年間約120万人の男性に養育費の支払いを命じている。父親は子どもが成人するまで、収入の4分の1から3分の1を払い続ける義務があり、支払いが滞れば、銀行口座の差し押さえやクレジットカードの使用停止を覚悟しなければならない。運転免許証やパスポートを取り上げられたり、逮捕される場合もある。

 養育費をめぐるすさまじい話はいくらでもある。例えば、私の友人が交際している男性(38)は、養育費支払いと親権放棄を要求する裁判を起こされて初めて、昔の恋人が自分の子どもを妊娠したことを知ったという。そうかと思えば、養育費の増額を求める裁判に元恋人の男性が、わざと汚い服を着て、粘着テープで修繕した眼鏡姿で出廷したため、逆に大幅に減額されてしまった女性もいた。

 「そこまでするか」「子どもが裁判の内容を知ったらかわいそう」などと考えるのは日本人。自分の権利のためにとことん戦うのが米国人なのだ。(ロサンゼルス支局)

毎日新聞 2006年4月3日 東京夕刊
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by miya-neta | 2006-04-03 08:00 | 国 際