私立大、系列外の中学高校と連携 生徒先取り
2006年 07月 12日
2006年07月12日03時10分
私立大学が、傘下にある従来の付属校とは別に、新たな中学・高校との提携や系列化を進めている。なかには、私大の付属高校と公立中学の一貫校化の例もある。少子化のもと、学力試験で入る学生とは別に、大学側が早くから生徒を確保しようというねらいだ。中・高側にとっても、生徒がエスカレーター式で大学まで進むことができる。
東京ドーム(東京都文京区)に近い中央大学の後楽園キャンパス。その一角にある付属の中央大学高校と、隣の文京区立第三中が、提携による中高一貫校化を進めている。09年度から三中の一定数の生徒が無試験で中央大高に進めるようにする計画だ。今後詰めるが、進学の枠は2けた台の見通し。私立高と公立中との一貫校化は全国で初めての試みという。
中央大学高からは、一定の基準を満たせば、ほぼ全員が中大に進学できる。このため、三中の生徒は、中央大学高、さらに希望すれば、一度も受験を経験せずに中大まで進むことが可能になる。
三中は全校生徒95人で、中3はわずか15人だ。少子化に加え、学校選択制のため小規模校は敬遠されがちで、特色を出す必要があった。いまでも、三中生だけには中央大学高から無試験の特別推薦枠(若干名)がある。文京区はこれを拡充させ、中大に一貫校化するよう働きかけていた。
付属中がない中大にとっても、中学設置は課題だった。
関西でも提携や系列化の動きが進む。
関西学院大は1月、一気に三田学園(兵庫県三田市)など中高3校と「提携校」の関係を結んだ。07年度以降、3校の各学年に1~2学級の「関学クラス」を設け、その卒業生は原則、全員が関学大に進学できるようにする。
01年に提携(その後実質系列化)を始めた啓明学院(神戸市)は、08年度から全員が関学大に進める。このほか、大阪、愛知の3高校も、10~30人が同大に進学できる「協定校」となった。
浅野考平・関学大副学長は「関学は中学部と高等部はあるが、他大学に比べ内部進学が少ない。学力試験以外の方法にも広げて早い段階から優秀な学生を確保したい」という。
高校では、関学大に進める安心感で勉強しなくならないようゼミ形式の授業など独自のプログラムを展開する。「確実に関学に進学できるのも魅力。学校の質的な向上も図りたい」(三田学園)という。
こうした動きの先駆けは立命館大だ。付属校の宇治、慶祥はいずれも既存の高校を合併し、中高一貫化したものだ。
4月には定員割れが続いていた滋賀県守山市の市立守山女子高を県などからの要請を受け、付属校化した。土地や校舎の移管を受け、2、3年生も立命館が引き継いだ。立命館大は現在12%の付属高出身者を20%まで増やす考えで、さらに数校の設置を目指している。
京都産業大には昨秋、大手銀行から打診があった。「生徒の減少に悩む京都成安中・高が系列に入ることを希望している」との内容だった。3月に基本合意し、来年4月には付属校となる予定だ。
活発になる提携・系列化をにらみ、みずほ銀行も4月から学校法人のM&A(合併・買収)ビジネスを始めた。経営の相談や再編の仲介もする。