「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

【佐藤優の地球を斬る】北朝鮮のミサイル挑発を拉致問題解決に転化せよ

イザ!:コラむニュース


2006/07/13 12:20

 北朝鮮のミサイル問題に関し、外務官僚の基礎体力が低下しているためうまくカードを切ることができず、日本にとって有利な環境をつくることができないでいる。問題点を端的に指摘する。

 第1は外務省国際情報統括官組織の一部幹部の不適切な言動だ。今回は警告の意味を込め、あえて実名を出さないが、今後、このような言動が改まらないならば、実名を明らかにして問題を追及したいしたいと考えている。

 この人物は、「テポドン問題については国際情報統括官ではなく僕が統括している。各国インテリジェンス機関と連絡をとりながらここで指揮をとっている」との電話を外務省内からマスコミにしている。さらに、「国際情報統括官組織はインテリジェンス機関なので拉致問題は扱わない。拉致問題はインテリジェンスになじまない」という話も報道関係者に対して行っている。

 拉致問題は、北朝鮮国家機関によって日本人の人権と日本国家の国権が侵害された複合事案だ。自国民の人権と国家主権の侵害を回復できないような国家は存在する意味がない。拉致問題こそがインテリジェンスの最重要課題なのだ。このポイントがわからないような無能官僚はただちにインテリジェンスから離れた方が日本国家のためになる。それから「口の軽い者は命も軽い」というインテリジェンス業界のおきてについてもよく理解しておくことが長生きの秘(ひ)訣(けつ)だ。

 第2は見えを張らないことだ。外務省は7月5日に北朝鮮がミサイルを打ち上げる可能性について、あたかも事前に察知していたがごとき情報操作を行っている。インテリジェンスの世界で4、5年メシを食っていた者の眼からすれば、今回のミサイル発射についてアメリカを含む全世界のインテリジェンス機関が事前察知できていなかったことは明らかだ。

 衛星や通信傍受によっても北朝鮮のミサイル発射を察知できなかったということで、この分野においてもヒュミント(人的諜報(ちょうほう)活動)の重要性が明らかになた。自己保身の観点から、知らなかったことを知っているように見せかけるのはインテリジェンス体制に悪影響を与える。

 第3はロシアカードの使い方を間違っている。日米が連携して国連安全保障理事会で北朝鮮に対する毅然(きぜん)たる制裁決議を採択するように働きかけるのは当然だ。問題はどのようにしてこの目標を達成するかだ。

 中国は北朝鮮の「同盟国」である。中国が対北朝鮮制裁決議に賛成する可能性はない。逆に中国が対北朝鮮制裁決議に賛成するときは、中朝「同盟」がもはや無効になるときだ。ロシアは中国ほどではないが、北朝鮮カードに利用価値を見出している。このような状況で、国連安保理でロシアにストレートに圧力をかけてもロシアを中国側に追い込むことになるだけだ。このシナリオを避けるために、7月15~18日にサンクトペテルブルクで行われる主要国首脳会議(G8サミット)を最大限に活用するべきだ。

 ロシアは議長国なので、自己主張を抑制し、合意文書をまとめあげなければならないという立場だ。ここに付け込むのだ。サミットでは首脳間の個人的信頼関係が大きな意味をもつ。最近、日本では批判的文脈で語られることが多いが、小泉総理とブッシュ米大統領の個人的信頼関係をこのようなときに最大限に活用し、ブッシュ大統領からプーチン大統領に「対北朝鮮制裁決議に同意してくれ」と働きかけるのだ。

 サミットの合意文書で北朝鮮に対する制裁が明記されれば、その後、国連安保理でロシアが制裁決議に反対することは論理矛盾をきたす。その結果、米英仏露と中国が対立する図式が生じる。こうなれば中国が対北朝鮮制裁決議に対して拒否権を発動せずに棄権に回る可能性が生まれる。

 前に述べたように拉致問題は日本人の人権と日本国家の国権が侵害された日本国家の原理原則にかかわる問題なので取引や譲歩の対象にならない。このことをサンクトペテルブルク・サミットでも国連でも日本は毅然と主張し、北朝鮮による国際法や国際約束を無視したミサイル発射問題と拉致問題は同根であることを理解させるようにつとめる。公の発言だけでなくロビー活動も重要だ。

 北朝鮮の挑発を奇貨として、拉致問題解決に向け駒を進めるチャンスが到来したことがインテリジェンスのプロには見えるのだ。
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by miya-neta | 2006-07-13 12:20 | 政 治