「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

【外信コラム】パリ屋根の下で 積極的差別って何だ

イザ!:コラむニュース


2006/07/19 05:46

 「今度の選挙に立候補しようかな」。
 両親は日本人ながらフランス生まれのフランス国籍でフランスで教育を受け、大学入学資格試験にも合格し、エリート校のグラン・ゼコールを卒業した若い女性が冗談とも本気ともつかない調子でこう言った。

 フランスでは今、「積極的差別」という言葉が一種の流行語になっている。人種差別を積極的に行うというと、穏やかならない話のようだが、肌の色など一目で外国系と分かるフランス人を積極的に優遇し、人種差別に反対するという趣旨だ。

 彼女の場合、外見は全く日本人と変わらないので、「積極的差別」にぴったり。加えて女性である。フランスではジョスパン前社会党政府時代に政界の男女平等を目指した同数候補規定(PARITE)法が成立した。ところが、その当の社会党が2002年の総選挙では、30%の女性候補者しか擁立できず140万ユーロ(約5600万円)の罰金を支払ったように、各党とも女性不足だ。

 しかも、彼女は30代と若い。「世代交代」や「若返り」は、フランスの選挙でも重要なうたい文句になるから、彼女は「積極的差別」をはじめ三拍子そろった理想的な候補者というわけだ。

 テレビ界でも、「積極的差別」が話題を呼んでいる。17日から民放テレビの雄、TF1の午後8時のニュース・キャスターとしてアフリカ系仏人男性のジャーナリスト、アリー・ローゼンマック氏が登場したからだ。

 仏海外県マルティニック島出身の34歳。ジャーナリストの専門学校に学び大学で歴史を修めており、趣味は柔道。TF1にキャスター含みで移籍する前は有線テレビのカナルプリュスでキャスターの経験がある。「コメントも良いけれど何よりハンサム」というのが、周囲の一致した意見だ。

 確かに、形の良い丸刈りに黒い瞳、絶やさないにこやかな笑顔が魅力的で、写真をお見せできないのが残念なぐらいだ。

 今回のアフリカ系仏人抜擢(ばってき)劇の背景には政治的意図も指摘されている。昨秋のパリ郊外などでの暴動事件で強硬な取り締まり姿勢を批判されたサルコジ内相が友人であるTF1の親会社、ブイグ社の社長にアフリカ系の登用を要請したという説と、シラク大統領が暴動事件後、各テレビ局社長を呼んで、「さまざまな人種で構成されたフランスの多様性をテレビにも反映させるべきだ」と要請したという説である。

 アフリカ系の登用としては、国営地方テレビのFR3が昨年から美人の女性キャスターを抜擢してはいるものの、このTF1の番組は同局の看板であることはもちろん、フランスで最も重視されているニュース番組だ。

 長年、この番組を担当している男性キャスターは、日本なら各政党から選挙への出馬要請が殺到すること間違いなしというほど、知名度抜群だ。このキャスターが夏に長期バカンスを取る間は、同局の若手の白人男性ジャーナリストが長年、代打ちを務めてきている。

 ローゼンマック氏の登場で件の若手ジャーナリストは結局、他局に移籍せざるを得なくなって、「逆差別の犠牲者」と同情されている。一方で、「人種差別より美醜の差別の方が問題」と、古今東西を問わない永遠の命題を指摘する声もある。

 ともあれ、「積極的差別」は人種問題と差別問題が日常生活に密着しているフランスならではの流行語といえそうだ。(山口昌子)
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by miya-neta | 2006-07-19 05:46 | 国 際