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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

<1>サインはあったが… (2006年10月2日)

企画・連載 : 北海道発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


学校は察知できず

「なぜ娘が死ななければならなかったのか」と祭壇の前で訴える女児の母親 

 「自分の子がそんなに思い詰めていると知っていたら、学校をしばらく休ませたと思う。転校だって考えたはず……」

 小学校6年生の一人娘(当時12歳)を亡くした滝川市の母親(37)は、涙声でひざの上の両手を震わせた。

 「人から『キモイ』(気持ち悪いの意)と言われてとてもつらい」「差べつがだんだんエスカレートした」「ほとんどの人が信じられない」――。少女と猫のイラストが描かれた、子供用の便せん。その遺書には、女児が心の奥にため込んだ深い苦悩が記されていた。

 「家では学校の悩みなど、一言も言わない子だった。学校も休んでいなかったし。遺書を読んでもまだ信じられないんです」

 母親は、娘の死から8か月が過ぎても心が整理できずにいる。自宅1階に設けた祭壇の遺影や遺骨は今もそのままにしてある。

     ◆

 昨年4月から、教室で首をつる9月まで、欠席は病欠と忌引の計2日間だけ。小学校にもクラスで一番早く登校するなど、学校へ行きたがらないそぶりも見せなかった。

 自殺を企てる1週間ほど前にあった修学旅行にも参加、「遊園地の絶叫マシンが楽しかった」と喜んでいたことから、周囲の大人は「精神的に追い詰められていた女児の意思を把握できなかった」(小学校校長)と嘆く。

 だが一方で、女児は同級生には自殺の「サイン」を示していた。

 自殺を図る数日前。女児は級友の一人に自殺の予告状を渡していた。子供向けに市販された便せん風の「予告状」に、「9月?日」に「学校?」で「道(※首の誤り)つり自殺する」と記入、「私本気だから」と書き添えてあった。予告状は、「マル秘 親友にも言うな」と書いた紙で包まれていた。級友は思いとどまるよう説得する返事を書いていた。

 小学校の説明によると、学校がこの予告状を確認したのは事後。「知っていれば当然、女児と話し合っている」と校長は強調する。

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 サインは、さらに以前からも示されていた。

 校長は問題が起きた後に「女児の言動に最近変わった様子はなかったか」と、同級生に聞き取り調査をした。その結果、集まった証言の数々。「秋祭りが終わったら死のうか、と言っていた」「死んだらお墓参りに来る?と聞かれたりした」――。同級生たちは「冗談だと思っていた」と言う。

 女児の孤立に、気付くべき機会もあった。自殺を図る1か月半ほど前の昨年7月20日には、女児は担任に「同級生との関係がうまくいってない」と相談を持ちかけていた。

 だが担任が仲裁し、「解決したと思っていた」と校長は話す。このことは、いずれも女児の家族には一切連絡されていなかった。

 子供同士では、かなり知れ渡っていた女児の自殺願望。しかし、学校にそれを感知するアンテナはなく、女児は家族にも、死へと傾斜する気持ちを明かすことはなかった。

 ■発見難しい仲間外れ

 少年問題に詳しいジャーナリスト江川紹子さんの話 「いじめで自殺する子供は家族や教師に悩みを伝えられず、自分で抱え込んでしまう子が多い。本人にとっては、悩みを打ち明ける行為自体がとてもつらいことだからだ。それでも、持ち物を壊されたり、隠されたりするタイプのいじめなら周囲の大人も異変に気付くが、言葉によるいじめや仲間外れだと発見しにくい。学校側も女児の予兆になぜ気付けなかったのか、何が足りなかったのかを子供たちと一緒に真剣に考える必要があったと思う」
by miya-neta | 2006-10-05 21:50 | 教 育