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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

【正論】木村治美 教育再生は現場の総入れ替えで

【正論】木村治美-コラむニュース:イザ!


2006/12/27 05:28

 ■新教基法を実践できる教職者はいるか

 ≪「荒れる学校」と「いじめ」≫

 改正教育基本法が成立し、なにはともあれ、めでたい。

 審議の途中、いじめ自殺がいくつも報道され、その対応に時間をとられた。ほぼ20年前、臨時教育審議会が設置されたときは「荒れる学校」が問題の渦中にあった。臨教審としてこれを答申に取り上げるかどうかが、最初の議案であったといってよい。

 本質的でない現象を、21世紀の教育の方向づけの答申に盛りこむのは適切でないとする意見もあった。しかしその時点で国民の最大関心事である問題を扱わないのでは、期待に応えられないという主張が通り、第1次答申には「荒れる学校」が登場する。

 それだけではない。個性重視、個の尊重が21世紀の教育目標になったのも、旧教育基本法を踏まえてでもあるが、「荒れる学校」が後押しする形となった。つまり、偏差値教育により画一的な進路しか見えないから、落ちこぼれが荒れる、との解釈から、もっと個性的に生きよとの指針が盛られたのである。

 この個性重視はひとり歩きし、その後20年の教育に大きく影を落とすことになる。

 幸い、今回「いじめ」はそれほど直接に改正教育基本法に影響しなかった。いじめは人間教育のすべてにかかわる問題だからであろう。

 「教育は不当な支配に服することなく」は、日教組を意識してであろうが、百年の計で考えれば、将来、誤読されかねない文言ではないか。

 ≪憂うべき教職不適格者増≫ 

 また「政府は教育振興施策を総合的に推進するため基本的な計画を定め」とある。これこそが、もっとも難しい案件となるだろう。

 理想的で基本的な計画が定められたとして、教育現場におろされたとき、対応しうるまともな教育関係者がどのくらいいるだろうか。

 産経新聞が12月16日、トップ記事で改正教基法の成立を報じた同じ紙面に、「教職員処分4000人超」という見出しがあった。平成17年度に懲戒処分や訓告などの処分を受けた教職員がふえ、監督責任を問われた校長や教頭も含めて、処分者は5005人になったと書いてある。事件にまでは至らない、潜在的な不適格者の数はしれない。

 この数字が、社会の他の分野と比率としてどうなのか、想像はつかない。しかし教師への当然の期待を考えれば、実に憂うべき数字ではないか。聖職者であったのが、労働者になったといわれるが、まじめな労働者なら履修科目をごまかすルール違反を生徒にやらせるだろうか。

 私自身がかつて所属していた世界なのでよくわかるのだが、教職に就いていると、閉ざされた環境の中で、まともな人間もだんだんおかしくなってくる。たがいに先生、先生と呼びあって、一国一城の主であり、営業成績を求められることもない。教育の現状を改革するよりは、事無きを選ぶ。偉く立派そうであらねばならぬ宿命に四六時中さらされてもいる。

 この世界に適応できなければ心身を病む。先ほどの記事によれば、病気休職者は7017人で、12年連続で最多記録を更新し、うち6割が精神性疾患を病むという。

 ≪ルール守らない教師たち≫

 嫌われるのを承知で書かせてもらおう。

 ある教育集会でいじめについて参加者が意見発表をした。各発言2分という約束があったのに、教育界の長と名のつく人びとが、5分10分と平気で長広舌をふるった。曰く、生徒に規範意識がない、ルールを守らせる力が教師にない、個性尊重で、自分を目立たせ、全体や他を顧みる気持ちが育っていない…。

 これらのことばは、そのまま発言者に返したかった。これが教育界のリーダーかと思うと暗澹(あんたん)たるものがある。

 教育界は非常識な世界である。精神疾患にならずに生きのびた者は、いつのまにかコミュニケーションのとれない夜郎自大な存在になっていく。世間から一目置かれるからなお悪い。教育改革はこういう実状を踏まえていないとうまくいかない。

 教育委員会の是非も問われている。制度そのものが問題なのではなく、だれがその任に当たるかである。教育免許更新制を導入するという。これにも問われるのは、だれがどのようにやるかである。

 団塊の世代が退職する。この中の、優秀で志ある人物が有効なさまざまな形で、教育現場に参入できる行政的な施策を期待したい。すでに民間企業から校長を迎えた公立学校がいくつもある。

 尊敬に値する教育関係者の存在を承知の上で、教育再生は現場人事の総入れ替えで、という極論を提言したい。(きむら はるみ=エッセイスト・共立女子大学名誉教授 )
by miya-neta | 2006-12-27 05:28 | 教 育