「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

国民投票法案「18歳で成人」の波紋

NIKKEI NET:風向計


政治部・河野俊(4月2日)

 安倍晋三首相が最重要法案の一つとして今国会成立を目指す国民投票法案。憲法改正案を国民投票にかける手続きを定める内容だが、自民、公明両党が国会に提出した修正案の付則に盛り込んだある条項が波紋を広げている。

 「法律施行までの間(3年間)に、18歳以上20歳未満の者が国政選挙に参加できるなど公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」――。要は成人年齢を18歳に引き下げる方向で検討するという内容だ。付則とはいえ法案の一部。明記した意味は重い。

 3月23日の自民党総務会。衆院憲法調査特別委員会の中山太郎委員長と保岡興治、船田元両理事が修正案を説明すると、異論が噴出した。

 口火を切った井上喜一元防災相は「社会制度全体に成人が20歳以上というのは組み込まれており、18歳に下げれば様々な問題が出る。国民の同意を得て民法などを先に変えるのが筋だ」。深谷隆司元通産相は「民主党に振り回されている。弱腰では政治はできない」と声を荒げた。

 成人年齢の引き下げは与党と民主党が国民投票の投票権年齢を巡って調整を進めるなかで浮上した。自民党は現在の成人年齢の20歳以上を主張、民主党は18歳以上への引き下げを求めていた。改憲の国会発議には衆参両院の3分の2以上の賛成が必要なことから、自民は手続き法の扱いでも「民主を含めた3党合意が望ましい」と判断。民主に歩み寄った経緯がある。

 深谷氏の発言には党内の「統一地方選や参院選を前に妥協イメージはマイナスだ」という声を代弁したものだ。もっとも、党内の慎重論の背景には「選挙権が18歳に下がって若い有権者が増えれば、野党に票が流れて不利になる」という議員心理もありそうだ。ベテラン議員ほどこうした懸念を抱きがちだ。

 「選挙権年齢は3年間は変わらない。次の参院選や衆院選には影響しない」「最近の若者は保守化している」……。国民投票法案成立に執念を燃やす中山氏らは同僚議員を個別に訪ねるなど、あの手この手でなだめすかして回った。それでも党内手続きの最後の場となった27日の総務会では井上氏らが「『公選法、民法その他の法令を検討』というが、どこまで検討するのか。はっきりしてほしい」と不満をぶちまけた。

 この「その他の法令の検討」はもうひとつのカギ。国民年金法では年金保険料を18歳から納める形になるかもしれないが、国民の反発は必至。厚生族の代表格のひとりである丹羽雄哉総務会長は昨年12月に自公民3党が修正合意しかけたときから一貫して「社会的影響が大きいので十分に精査すべきだ」と慎重論を崩していない。

 ほかにも未成年者飲酒禁止法や未成年者喫煙禁止法、未成年に馬券の購入を禁じている競馬法など話題を振りまきそうな関連法がずらりと並ぶ。「付則には関連法が改正されるまでは投票権年齢は20歳以上にするとも書いてある。これを逆手にとって、法改正に取り組まないでいれば、自民党の主張通り20歳以上のままにもできるじゃないか」とのうがった見方さえ出るほどだ。

 船田氏は3月29日の衆院憲法調査特別委員会で「まずは公選法、民法で早急に検討を進めるということ。関連法は28程度あるが、全部を18歳以上にしなければいけないとは言っていない」と火消しに躍起だ。

 そもそも「投票権年齢18歳以上」を主張した民主党との協議は停滞。小沢一郎代表の意向もあり、首相が意気込みを示せば示すほど「参院選を前に首相や与党に手柄をやる必要はない」との空気が強まったためだ。与党は民主党との調整をあきらめ与党修正案を採決する構えを見せる。民主党もようやく独自の修正案をまとめる方向になったが、これが「与党案との一本化を目指すため」なのか「与党案に反対するための大義名分づくり」なのかはまだはっきりしない。

 与党にとって国民投票法案の今国会成立は至上命題。審議日程も厳しく、自民党内に不満や異論に配慮して与党案を再修正する余裕はない。仮に民主党案との一本化機運が浮上したとしても、もともと民主党が主張してきた「投票権年齢18歳以上」や成人年齢に関する付則の部分の骨格に変更はない見通しだ。

 このままでは仮に成立しても「投票権年齢・成人年齢」を巡る火種がくすぶる結果になる。民主党が反対する展開となれば「自公民3党の合意で成立させればその後の関連法改正でも与党と民主の協力関係は維持できる」とのシナリオが崩れる。民主党となんらかの妥協が成立しても、自民党内に意見対立の芽は残ったままだ。

 3月29日の衆院憲法調査特別委員会。民主党の枝野幸男氏は「国民投票法制は客観的中立につくらなければならない」と訴えた。確かに国の在り方にかかわる重要法案は主要政党が賛成する形が望ましい。だが、国民投票法案を巡る駆け引きが示すように、どんな法案も政治的な思惑と無縁ではいられない。
[PR]
by miya-neta | 2007-04-02 09:21 | 政 治