「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

【正論】稲田朋美 「300日規定」見直しは慎重に

コラむのニュース:イザ!


2007/04/17 06:30

 ■「生物学的親子」偏重は法制度不要に

 ≪離婚後300日以内≫

 無戸籍の子供たちを救うのが喫緊(きっきん)の政治課題であるとして、民法772条の「嫡出推定」の問題が、いわゆる「300日問題」として、今国会会期中に急浮上してきた。与党プロジェクトチーム(PT)ができ、特例法が検討されている。
 今の民法では、離婚後300日以内に生まれた子は婚姻中に妊娠したものと推定され、さらに、婚姻中に妻が妊娠した子は夫の子と推定される(嫡出推定)。この結果、離婚後300日以内に生まれた子は離婚前の夫の子と推定される。
 この規定の趣旨は、婚姻中に妻が妊娠した子は通常夫の子であるので、そのように推定し、簡単には覆せないようにすることが家庭の平和にもつながり、子の地位も安定するというところにある。

 マスコミでかわいそうな例として話題になったのは、離婚後に妊娠したが早産で離婚から300日以内に生まれた子と、婚姻中に妊娠し離婚後に出産したが、前夫の子ではないので戸籍上前夫の子としたくないために戸籍の届け出がされず無戸籍となっている子である。
 前者は、婚姻中に妊娠したわけではないので、法務省は通達で、離婚後の妊娠であることが医師の証明書で確認できれば、嫡出推定をはずすという運用に改めた。
 問題は後者、婚姻中に夫以外の男性との間にできた子をどのように扱うかである。
 ひとつは、医学の進歩で誰の子であるか確定できるのだから、生物学上の父の子と認めるべきだという考え方である。与党PT案はこのような考え方に基づく。

 ≪生物学的と法的の関係≫

 しかし、民法はもともと生物学上の親子関係を絶対視した考え方をとっていない。婚姻中に妊娠した子を夫の子と推定することによる家庭の平和や子の福祉などといった法益を考えて、法的に親子関係の推定規定を置き、それを容易に覆させないことが妥当だというのが民法の考え方なのである。

 法律上、法的親子関係を覆すことができるのは原則父のみであり、しかも子が生まれたことを知ってから1年以内に裁判(嫡出否認の訴え)を起こさなければならない。第三者が勝手に父親だと名乗り出て裁判を起こすことができるとすると、家庭の平和は崩壊してしまうし、父親が誰かという点がいつまでも不安定であれば、子の福祉は阻害されてしまうからだ。しかし、この要件を絶対的なものとするとあまりにも厳しすぎるというので、判例上親子関係不存在確認の訴えが認められ、妻の側からも夫と子の親子関係がないことを確認し、推定を覆すことが認められた。ただこの場合も、妊娠するはずがない客観的状況にあったことを要件とするのが最高裁の立場である。

 ≪例外的救済は司法で≫

 これに対して与党PT案は、民法772条を見直し、妊娠しない状況にあったことの証明とDNA鑑定などで親子関係が立証されれば再婚後の夫の子として出生届を受理する▽再婚禁止期間を180日から100日に短縮する-という内容。
 しかし、PT案のいうように市役所などの窓口で、DNA鑑定と証明書(母の陳述書を含む)で父子関係を確定するということになると、DNAが本人のものか、母親が真実を述べているかなど、鑑定試料(検体)の真偽や陳述書の信用性の判断を窓口業務で行わなければならず、現実的でなく、あまりにも危険である。さらにDNAという重要な個人情報を安易に扱うことにもなりかねず、日本医師会も反対している。

 確かに婚姻中であっても夫婦関係が完全に破綻(はたん)している場合など夫以外の男性との間に子供をもうけることが一概に不貞行為とはいえない場合もあろう。しかし、そういった個別の特殊な事情がある場合に、例外として救済するのは司法の役割である。しかも司法による救済は、PT案が提案しているような証明書類をつけて家庭裁判所に調停を申し立てれば(申立費用は1200円)、ごく短期間で、親子関係不存在の確認に至りうる(最高裁担当者の説明)。

 要は何が原則で何が例外かという問題である。例外を安易に認めることは民法の婚姻制度、親子制度を根底から覆す結果になる。婚姻中に夫以外の男性の子を妊娠し、出産した女性の再チャレンジは司法救済を経て、出発すべきではないだろうか。
 親子関係=生物学的親子という考えを推し進めると、民法の法的親子制度は不要になる。それが良いか悪いか慎重な議論が必要ではないか。(いなだ ともみ=衆議院議員、弁護士)
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by miya-neta | 2007-04-17 06:30 | 政 治