急がれる体制の刷新 不祥事に揺れる高経大 群馬
2007年 05月 01日
2007年5月1日
高崎市立の高崎経済大学が不祥事に揺れている。昨年から今年にかけて学生四人の自殺が相次いだ上、同大は四人目の女子学生を自殺に追い込んだとして准教授を懲戒免職にしたが、元准教授は処分を不服として法的措置を検討。さらに、木暮至学長が授業回数の不足したゼミの学生に単位を不正に認定した問題が明るみに出た。「大学の体制はこのままでいいのか」-。六月下旬の開学五十周年を控え、学内外から不満が噴出している。 (菅原洋)
遅すぎた対応
「現体制のままで開学記念式典をやるのならば、とても出席する気にはなれませんな」
ある大物のOBは深くため息をついた。
一連の発端は昨年八月、男子学生が学業に悩んで自殺したことだった。翌月にも男子学生が学業不振で自殺。十一月にも男子学生が将来を悲観して死を選んだ。
ところが、大学が学生の自殺防止対策を検討する委員会を開いたのは、三人も亡くなり、一人目の自殺から約四カ月も過ぎた昨年十二月。結局、昨年夏ごろから悩み苦しみ、今年一月に自ら命を絶った女子学生は救えなかった。大学側の責任が厳しく問われ、木暮学長と石井伸男経済学部長が減給処分となった。
一方、元准教授は「大学の調査は自分の反論を十分に聴かず、刑事事件を起こしたわけでもないのに免職は重すぎる」と主張。法的措置を取る準備を進め、裁判などが大学のイメージダウンにつながりかねない事態になっている。
さらに、三月には五年前に続いて二度目となる入試問題の出題ミスも発覚した。
学長に辞任勧告
こうした混迷の中で表面化したのが、木暮学長自身の不祥事。深刻なのは学生が連名の文書で学長を告発した点だ。学生たちは「学長がこれでは、大学の将来が心配」などと訴えているという。
石井学部長は「木暮学長は自ら責任の重大さを自覚し、対処してほしい」と事実上の辞任を勧告。同学部長は「仮に学長選になっても自分は出馬せず、学長になりたいから厳しいことを言うわけではない。学外から教授になった立場として、言うべきことは言わなければ」と決意を示す。
あるベテラン教授も「木暮学長は減給処分になったばかりなのに、停職などの似たような処分では社会が納得しない。その上、学長は准教授の職を絶つ重い決断をしておいて、自らの処分に甘いのでは、学内に示しがつかない」と強調した。
開学50年を前に
教授陣などが学長の処分に神経を使うのも、六月二十五日に開学記念式典を控えるからだ。式典は高崎市の群馬音楽センターで県内外から同窓会や後援会、議会議員、首長などの来賓を含めて一千人以上を招く予定。
ある同窓会関係者は「五十年を迎えるのだから、先生方にはしっかりした態度を示してもらわないと」と困惑している。
ただ、学内が学長交代の方向に向かう中、木暮学長には同情する教職員も少なくない。ある若手教員は「責任は重いが」と前置きした上で、「学長職が激務の中、自殺の対応に当たり、授業の余裕がなくなったのでは」と指摘。実際、講義中に自殺した学生の親が来訪し、応対した時もあったという。木暮学長は経済学部長、学生部長を歴任し、県内の審議会など公職にも尽力してきた。
記者は木暮学長の釈明を得ようと努力を重ねたが、回答はなかった。
楽しいはずの学生生活で、自ら死を選ばざるを得なかった四人の学生たち。この四人のためにも、大学は新しいリーダーシップの下で刷新することが急務だ。