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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

「こうのとりのゆりかご」 相談増加「命救われた」 運用1カ月

こうのとりのゆりかご/熊本日日新聞


  命を救う緊急避難的措置か、育児放棄の助長か。慈恵病院(熊本市島崎)が「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」の運用を始めて十日で一カ月。八日、同病院は会見を開いた。親が育てられない赤ちゃんを匿名で受け入れるという国内初の病院施設は、運用初日に幼児が預けられるという“想定外”からスタートした。運用や情報公開の在り方があらためて問われている。

 運用開始にあたり、同病院の蓮田太二理事長や県、熊本市がそろって強調したのが「利用の前に相談してほしい」。実際に「ゆりかご」開設後に最も変化が現れたのが、妊娠出産に関する相談件数の増加だ。

■「異例の数」

 同病院には運用開始から七日までに電話相談が九十一件。同市が五月七日に始めた二十四時間対応の妊娠悩み相談電話などには、八日午前までに百五件(来庁含む)が寄せられた。県女性相談センター(同市長嶺南)の「妊娠とこころの相談」にも、五月だけで昨年度全体の三分の一にあたる二十五件で「異例の数」(同センター)。

 この日、報道陣の質問に答えた同病院の田尻由貴子看護部長は、新潟の女子高生がトイレで産み落とした男児が死亡したケースを例に、「実際に同じような境遇の女性から電話があり、赤ちゃんの命が救われた」と、相談の重要性を強調。

 設置許可した熊本市の幸山政史市長も「出産や妊娠をめぐる悩みを抱えている人がいかに多いか再認識した」と話した。

■「捨て子助長」

 「ゆりかご」に最初に預けられたのは三歳ぐらいの男児。想定外のケースに、同病院の蓮田理事長は「大変びっくりした」と驚きを隠さなかった。社会にも「捨て子を助長した」という批判が起きた。

 同市長嶺南の県中央児童相談所によると、一般に子どもが捨てられた場合、保護者がいるかどうか確認し、親がいればその経済状態や子育て能力などを調査。保護者の所在が明らかになれば、原則としてその地域を管轄する児童相談所が子どもの処遇を決めるという。

 県警は「現段階では事件性はない」として捜査を事実上凍結している。だが、どのように利用されるか予測がつかない「ゆりかご」には、預けられた状況によっては親が保護責任者遺棄罪に問われる可能性もある。県警は「事件性があれば捜査を尽くす」との立場だ。

■検証の必要性

 この一カ月、県内では「ゆりかご」に関するさまざまなシンポジウムが開かれた。虐待や子捨てから子どもを守るために「ゆりかご」は必要という声がある一方で、「子どもは心の中で親を求めている」と、匿名性に懐疑的な意見もある。

 情報開示についても結論は出ていない。今回の男児について、蓮田理事長は受け入れは認めたものの、その後の処遇については明らかにせず、熊本市や県は事実さえ認めていない。市は、運用状況について年一回、利用件数のみを発表する方針。慈恵病院も熊本市と歩調を合わせる方向だが正式には決定していない。

 識者や弁護士らからは「適正な運用が行われているか検証できないような情報開示は意味がない」など、病院や行政にも一定の情報公開を求める声があり、検証の必要性が指摘されている。(「こうのとりのゆりかご」取材班)

熊本日日新聞2007年6月9日朝刊
by miya-neta | 2007-06-09 08:00 | 社 会