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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

クローズアップ2007:教育3法きょう成立 免許更新で戸惑う現場

教育:MSN毎日インタラクティブ


クローズアップ2007:教育3法きょう成立 免許更新で戸惑う現場_b0067585_1141484.jpg 国による学校への管理体制を強める教育関連3法案は19日、参院文教科学委員会で可決され、20日成立の見通しだ。「教育再生」を掲げる安倍晋三首相は昨年の改正教育基本法に続き、戦後教育の根幹に手を加えたことになる。年金問題で政権の求心力が低下する中、首相官邸と自民党執行部は「首相の指導力」を強調し、参院選でのアピール材料にしたい考えだ。しかし、学校の教員組織を「ピラミッド型」に転換するなど学校現場への影響は大きく、教員や識者の間では懸念や戸惑いが出ている。【高山純二、佐藤敬一、平元英治】

 ◇人事管理厳格化--不適格教員の排除も

 ●実効性に疑問も

 「(教員には厳しい)北風政策でなく(着実な)太陽政策が必要だ」。7日、参院文教科学委員会の参考人質疑で、教育評論家の尾木直樹氏はイソップ物語を引き合いに出し、教員の負担を増やさないよう慎重審議を求めた。

 しかし、教員免許法改正案は、教員免許に有効期間を定め、10年ごとに更新講習を義務付けた。医師や建築士にもない更新制は、教員にとって大きな心理的負担だ。「一般常識を欠く教員がいることは確か」(大阪市の男性教諭)との指摘はあるものの、「10年に1度の更新で力量が付くかは不明」(山梨県の男性教諭)と実効性への疑問も根強い。

 国際基督教大の藤田英典教授は「教員の職が不安定になり、優秀な学生が教職を目指さなくなる危険性もある」と採用試験への影響も懸念する。講習の実施要項は、文部科学省が定めるが、厳しい内容になれば、教職人気の低迷、ひいては教員の質低下という本末転倒の結果を招きかねない。

 ●ピラミッド型に

 学校教育法改正案は、「副校長」「主幹教諭」などの設置を盛り込んだ。少数の管理職のもとに大半の教員がいる「なべぶた型」の学校組織が、ピラミッド型に転換する契機になる。

 昨年、約40年ぶりに行われた文科省の教員勤務実態調査によると、教頭・副校長(一部自治体で先行導入)の残業時間は1日平均で教諭より1時間以上長かった。中央教育審議会の梶田叡一副会長(兵庫教育大学長)はこの実態を踏まえ、「教頭らが抱えている職務を分担し負担を軽くすることで、待遇改善につながる」と評価する。

 甲府市の男性教諭(45)も「マネジメントシステムの確立は学校現場を大きく変える可能性を持つ」とプラスに評価し、いじめなどさまざまな問題への迅速な対応を期待する。ただし、一般教員が主幹教諭以上の「中間管理職」になり、教壇から離れた場合、補充されるか、学校が上意下達の管理組織にならないかといった不安材料もある。

 ●いじめを解決?

 地方教育行政法改正案で、文科省が自治体の教育委員会に「指示・是正要求」できるという権限が復活した。昨年、相次いだいじめ自殺や、高校での履修単位不足問題の発覚が改正のきっかけ。しかし、中教審や国会の審議では「地方分権に逆行する」と批判が出た。

 福岡市の男性校長(60)は「未履修の問題はともかく、いじめ問題は教委を指導しても変わらない」と指摘する。

 私立学校は、知事が教育委員会から助言や援助を受けて、監督できるようになる。従来補助金交付など許認可中心だった知事部局が教育内容に踏み込むことも可能だ。

 梶田副会長は3法改正を総括し、「(改正教育基本法を含めて)土台ができ、中身を入れるのはこれからだ。太陽がさんさんと輝く中身のつめ方をしてもらわないといけない」と注文をつけた。

 ◇「安倍主導」も、拙速感残し

 安倍首相は19日の参院文教科学委員会の総括質疑で、「地域を愛する心、国を愛する心を子どもたちに教えていかなければ、日本はいつか滅びてしまうのではないか。今こそ教育の再生が必要だ」と「愛国心」の重要性を強調した。

 3法案は、昨年12月に成立した改正教育基本法に続き、教育への「首相の決意を示した法案」(塩崎恭久官房長官)。ただ、約2カ月で作られた3法案が急ごしらえだったことは否めず、衆参合計約112時間の審議の中で、ほころびがあらわになった。

 先月31日の参院文教科学委。民主党の蓮舫氏は、国が教育委員会に指示・是正要求を出す要件である「教育委員会の怠り」について、具体的な説明を伊吹文明文科相に求めた。だが文科相は「私が判断した時」「定義はあらかじめできない」としどろもどろ。「文科相が代わると定義も変わるのか」と批判された。

 教員免許更新制は、数ある職業資格の中で教員免許だけを更新制にする理由が不明確なままだ。文科相は先月29日の参院文教科学委で「職業免許状を教員に限り強制的に失効させ失職させるのは(法律論としては)非常に難しい」と苦しい答弁。

 副校長などのポスト新設を巡っては、首相が先月17日の衆院教育再生特別委員会で「学校の組織運営、指導を強化していく」と発言。これに対し野党は「上司の目を気にする教員組織を作る」と批判を強める。

 自民党の中川秀直幹事長は19日の会見で「戦後レジームから脱却していくための大事な法律。教育改革をさらに政府の教育再生会議の方針に沿って推進していきたい」と法案成立の意義を強調。首相の持論の「戦後レジームからの脱却」に言及し、「安倍主導」を演出してみせた。

 しかし、そんな政府・自民党の思惑をよそに、参院選の争点は年金問題に絞られつつある。教育3法案成立も、首相の求心力回復にはつながりそうもない厳しい情勢だ。

毎日新聞 2007年6月20日 東京朝刊
by miya-neta | 2007-06-20 08:03 | 教 育