【教育再生 安倍改革】第1次報告 授業1割増
2007年 01月 25日
授業時間を1割増やすなどのゆとり教育の見直しやいじめ対策、教委改革…。多くの教育施策が盛られた教育再生会議の第1次報告は、教育現場の課題解決の特効薬となるのか。教育関係者はどう受け止めているのか。
ゆとり見直し評価も 「教科書改善を」「現場見て」
一時は迷走したものの「ゆとり教育の見直し」が最終的に盛り込まれた点には評価する声が上がった。九州の学習塾、英進館の筒井勝美館長は「学習内容がピーク時の半分近くにまで落ち込んでいる。今回、明言した意義は大きい。規範意識の向上も大切な課題だ。しっかりと土台を踏み固めて進めるべきだ」と話す。
西村和雄・京大経済研究所長は「見直しは学力向上、ひいては教育再生の根幹だ。教科書は学力にも子供の道徳観にも影響する。勉強しにくい現行のカリキュラムと合わせて、教科書を改善してほしい」と述べ、教科書の改善も求める。
これに対し、「ミスターゆとり」とも呼ばれた元文科省官房審議官の寺脇研・京都造形芸術大教授は「ゆとり教育の目的は週5日制、個性に応じた教育、総合学習の3点だ。外野の要求でゆとり見直しの見出しが立ったようだが、ゆとりの理念はいずれも変わっていない。むしろ賛成といっても良い」と話す。
確かに、第1次報告では基礎教科の授業時数増加を明記したものの、週5日制見直しは「今後の課題」に先送り。基礎教科削減をもたらした総合学習のあり方についても触れていない。
一方、いじめ対策として出席停止の活用が盛り込まれたことについて、学級経営に詳しい都留文科大学の河村茂雄教授(心理学)は、「いじめは一くくりではとらえられない。少なくとも、集団内での摩擦による『人間関係の軋轢(あつれき)型』、加害者意識が希薄な『遊び型』、教師の目を盗んで暴力行為などを行う『非行型』の3類型がある」と指摘。「出席停止を非行型の対策として一歩踏み込んだ点は評価できるが、残り2タイプに適用するのはどうか」と話し、学級集団育成による予防・開発的対応の重要性を強調した。
さらに今後の議論も含め、「日本教育再生機構」を設立して再生会議に提言した八木秀次・高崎経済大教授は「途中は心配したが、ゆとり教育見直しが盛り込まれた。英国の教育水準局を目指した第三者機関の設置もある。日教組問題に触れていないのは残念だが、かなり踏み込んだ内容だ」とし、「文科省側は抵抗するだろう。今後、安倍政権の実行力が問われる。強い姿勢で教育への本気度を示してほしい」とアドバイスする。
小渕、森政権時の「教育改革国民会議」の委員を務めた河上亮一・日本教育大学院大学教授は「学力向上より、基本的生活習慣といった生活力の低下が最大の問題だ。出席停止は、排除した生徒を受け入れる場を作るなどしないと利用できない。また、不適格教員対策より普通の教員が頑張れる態勢作りを実行してほしい」と指摘。第2、3次報告に向けては「再生会議には現職の教員がいない。現場を見て声を聞いてほしい」と訴える。
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