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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

不登校増加 多様な学びを保証することから

愛媛新聞社ONLINE


社説 2007年08月14日(火)付

 不登校の小中学生が五年ぶりに増加に転じた。

 文部科学省の学校基本調査速報によると、二〇〇六年度に不登校とされた小中学生は十二万六千人あまりで、前年度から3・7%増えた。とくに中学生では過去最高の割合に達した。

 まずは数字の意味合いを考えたい。

 一九九九―二〇〇五年度の七年間、いじめ自殺をゼロとしてきた文科省統計が現実を反映していないと批判され、見直しを迫られたのは記憶に新しい。

 不登校は九九年度から伸び率が鈍化、〇二年度以降は減少が続いた。「いじめ自殺ゼロ」の時期と符合するのは偶然だけではあるまい。〇四年には文科省が「不登校は減少傾向」と言明したことも思い出したい。

 問題をなるべく表面化させたくない。そんな意識が教育現場を覆っていなかったか。

 本県は不登校の子の割合が全国一低かった。それでも県教委は「不登校の子が九百人あまりいることを受け止め、今後も学校と連携し適切に対応したい」とする。そうあるべきだろう。不登校手前で悩む子もいるはずで、目先の増減にとらわれず地に足の着いた対策を進めたい。

 ただし現実はそう簡単でない。文科省は「登校の促しは状況を悪化させる場合がある」としていたが、「一切働きかけないなど誤解されている」と〇三年、早期の適切な働きかけを重視する方向へ軌道修正した。それがいじめ自殺の続発で再び柔軟姿勢に転じつつある。

 毎朝自宅を訪問して登校を促す。「保健室にいるだけでも」と説得する。確かにこうした取り組みだと学校へ戻っても一時的に終わりがちなのは分かる。

 どこまで関与するべきか、現場の悩みは深いだろうが、もとよりマニュアルはない。個々の子ども本位で考える、当たり前の努力を重ねるしかない。

 ただし、それを口実に対応を怠ってはならない。

 十七日で一年となる今治市の中学一年生のいじめ自殺をめぐり、松山地方法務局は先ごろ再発防止を求める「説示」の文書を出した。小学校がいじめの事実を引き継がず、中学校も兆候に気づきながら防止措置が不十分だった、と指摘している。

 不作為を戒める重い警告だ。そのことは不登校対策にも当てはまるにちがいない。

 不登校を未解決のまま放置すると引きこもりにつながる可能性が指摘される。ただし、いたずらに学校復帰を急ぐのではなく、長い目での対応が肝要だ。

 それにはフリースクールや情報技術(IT)を活用した自宅学習など、多様な学びをもっと認めていい。学校に行かない選択肢もあると伝えることはいじめ自殺から救うことにもなる。

 気になるのは安倍晋三首相の進める教育再生だ。現場を締めつけ、教員が子どもと向き合う時間をさらに奪わないか。公教育への競争原理導入も不登校を見えにくくさせかねない。

 不登校を専門的に分析し、有効な対策を見いだすことにこそ指導力を発揮してもらいたい。
by miya-neta | 2007-08-14 09:01 | 教 育