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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

授業時間増 学力向上につながるか

信濃毎日新聞[信毎web]|社説


2007年9月4日(火)

 小中学校の授業時間を1割程度増やす-。文部科学相の諮問機関、中央教育審議会が「ゆとり教育」からの方向転換を打ち出した。総合学習を減らし、国語や算数など主要科目の授業を増やす案だ。

 授業時間を増やせば学力向上につながるのか、疑問が残る。ゆとり教育の成果を十分に検証せずに、現場の負担を増やすのには慎重でありたい。何より、文科省の方針転換に、学校が振り回されるのは困る。

 「詰め込み学習」への反省から、授業時間は1977年以来減ってきた。いまの学習指導要領が始まったのは5年前。学校週5日制となり、教える内容も授業時間も減った。

 中教審の素案によると、小学校では国語、算数、理科、社会、体育の時間を1割程度増やす。代わりに3年生以上で行っている「総合的な学習の時間」を週3時間から2時間にし、高学年で週1時間程度の英語の授業を行う。全体的には低学年で週2時間、中高学年で1時間程度の時間増になる。

 中学でも同様に、総合学習を減らし、国語や数学など必修6教科の授業時間を1割程度増やす方向だ。

 国際的な学力調査の結果などから、学力低下の批判が高まっている。学力アップのために授業時間を増やすのは、一つの手段だろう。

 だが、時間が増えれば問題は本当に解決するのか、具体的な論議が十分だとはいえない。例えば、学力世界一といわれるフィンランドの授業時間は、日本よりも少ない。

 何よりも、総合学習が“悪者”扱いなのが納得いかない。生きる力を育てるのを狙いに、ゆとり教育の目玉として総合学習は導入された。

 しかし、教員によって内容にばらつきが大きく、総合的な思考力や表現力を高める場になりきれていないのが現実だ。これまでの反省から見直しを行うならともかく、一律の授業時間削減では、さらに形がい化する心配がある。

 今回の学習指導要領の改定で文科省が目指すのは、すべての教科で「言語力」を育てることだ。子どもたちの読解力が低下していることを踏まえ、論理的思考やコミュニケーション力を伸ばすことを狙う。だが、理科や算数などで、論議する力を育てる授業をどう進めていくのか。指導方法を十分に検討しないまま現場に下ろすと、総合学習と同じことが繰り返されかねない。

 いまいちばん問題なのは、できる子とできない子の二極分化が進んでいることだ。きめ細かく指導できるよう、教員の数を増やしたり、現場の裁量を広げる方が先だろう。
by miya-neta | 2007-09-04 09:15 | 教 育