娘の死、風化させないで 岐阜・瑞浪の中2いじめ自殺から1年
2007年 10月 21日
2007年10月21日 朝刊
◆23日に追悼集会
岐阜県瑞浪市の瑞浪中学校二年の女子生徒=当時(14)=が、昨年十月の誕生日に、いじめを苦に自殺してから二十三日で丸一年になる。「いじめは社会問題。娘の死を風化させず、常に問題視してほしい」。両親は、学校、生徒、地域に、いじめ自殺の事実と向き合う勇気を期待している。学校は命日に、追悼と思いやりについて考える集会を開く。
「この一年、娘のことだけを考えて過ごしてきた」。母親(42)は目を潤ませ、振り返る。悲劇が起きた原因を少しでも理解したいと、同じようにいじめによる自殺でわが子を失った愛知県西尾市のいじめ相談員大河内祥晴さんや、長野県教育委員会こどもの権利支援幹の前島章良さんを夫婦で訪ねた。二人の話は心の支えになった。が、「どこも同じなんだ」という驚きと無念さも味わうことになった。
父親(45)は「極論を言えば、いじめは、大人、地域、社会の責任」と指摘する。学校が、いじめを「汚点」ととらえて問題を抱え込み、当事者以外は無関心なのが全国共通の構図だと分かったからだ。
いじめの有無にこだわった当時の学校側の対応のまずさが尾を引き、この一年、十分な原因解明はされてこなかった。「あの時、学校が事実をきちんと明らかにし、地域共通の問題として話し合うことが必要だった」と父親は悔やむ。
学校側は本年度、生徒会が中心になって「うざい」「キモい」といった相手を傷つける言葉を使わない運動を始めた。夏休みには生徒有志らが、七千四百枚余のハンカチをつなげた文字とハートを校庭に描き、女子生徒へメッセージを送った。
ただ、多くの生徒は、この話題になると「忘れたい」「避けたい」との思いからか、口をつぐんでしまうという。
PTAも大河内さんらを招き、保護者向けに講演会を開くなど「地域が、大人が変わらなければ」と呼び掛けているが、温度差があり、十分な手応えは得られていない状況だ。