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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

「新学習指導要領」とは? 兵教大学長・梶田氏に聞く

神戸新聞|社会


 教育現場の“道しるべ”となる「学習指導要領」の約十年ぶりの改定に向け、一月中にも中教審教育課程部会が改定案を答申するのを前に、部会長を務める梶田叡一・兵庫教育大学長に、同案への思いを聞いた。梶田学長は、主要教科の授業時間を増やす理由や改定案の主な変更点、学力とは何か-などについて、一教育者としての視点も交えながら語った。(霍見真一郎)


 -三十年ぶりに授業時間を増やすことになるが、そもそもゆとり教育とは何だったのか。

 「急に世の中が豊かになり、努力をしたくない風潮に、一九九〇年代の日本の教育界がこびた結果だ。アメリカやヨーロッパでも同様に七〇年代に起きた流れ。子どもたちを苦しめている勉強から開放し、『好きなことを好きなときに好きなようにやらせよう』としたのだが、産湯とともに赤子も流してしまった。欧米の子どもが当たり前に知っているイオンなども、日本では教えなくなった。県庁所在地やニュースに出る国々がどこにあるのかさえ知らない若者も増えている。

 ただ、偏差値重視の受験熱を打破していこうというのは良かった。部活動も大事だし、友達と遊ぶ時間もなくてはならない。要はバランスだ」

 -改定学習指導要領では主にどこを変える。

 「大きく三つある。一つは、言葉を単なるコミュニケーションの手段ではなく、認識・思考・判断の力ととらえたことだ。国語の授業も変わる。これまでは、文学作品を読ませて感想を語らせることが多かったが、語(ご)彙(い)を増やし、漢字を多く教えることも意識させる。若者がよく使う『ビミョー』や『ヤバイ』だけではだめだ。また、文章は、書き手の意図と異なる意味が読み取れる場合もある。段落などの構造から、文章そのものが客観的に持つ意味を考える力も鍛える。

 次に理数系科目の学力を底上げする。二十年前の学習指導要領と似た形になった。同じ内容を他国より一年ほど先に教えていた日本の理数教育は、今や一年ほど遅く教えているのが現状だ。ゆとり教育の中で削られた、欧米で教えている大事な事柄も復活させる。

 最後は伝統文化。太平洋戦争まで極端な自文化中心主義で来たのが、終戦とともに反対になった。日本のことを何も知らない人が増えた。西洋などのことも継続して学びながら、日本文化も学ばせる。例えば音楽の和楽器、体育の武道などがそれだ」

 -学力とは何か。

 「簡単に言うと、学校で勉強して身に付く力のこと。見える力もあれば、見えない力もある。新しい学習指導要領では、両方の力が付く。見える力は、知識量などをテストすることで測れるが、知性や理性は百点取ることとは違う。この指導要領を通じて、子どもたちには今まで以上に“物知り”になってほしい。自分の考えを持ち、主人公として自分の人生を歩んでほしい」

 -学習指導要領の改定に戸惑う声もある。

 「わたし自身、中学校に行っている孫から『授業時間が増えるんだって』と質問されている。資源に乏しい日本は、いい製品を他国に売って、油や食料を買う必要があり、ある程度勉強している人たちがそろっていないといけない。また教養がないと長い人生を生きていけない」


 かじた・えいいち 1941年、松江市生まれ。京都大文学部哲学科卒。国立教育研究所主任研究官、京都大教授、京都ノートルダム女子大学長などを経て、2004年から兵庫教育大学長。教育改革国民会議委員などを歴任、専門は心理学と教育学。

(2008/01/05 10:10)
by miya-neta | 2008-01-05 10:10 | 教 育