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追跡2008:ルポ・海陽学園の今(その2止) 英語でプレゼン指導/愛知

毎日jp(毎日新聞)


 ◇古典重視、週2時間--中2で高レベル漢文

 「国際社会のリーダーになるには日本の伝統・文化を身に着ける必要がある」との方針の下、1年から古典の授業を週2時間実施し、2年からは古文・漢文に細分化している。4時限目はその漢文。「秦淮健児伝(しんわいけんじでん)」の読解だが、あまりの難しさからか、舟をこぐ姿も散見された。学習塾関係者は「有名私立校も含め、中2でこのレベルの漢文をやっているのは聞いたことがない」と分析する。

 4時限目が終わると、クラス単位での昼食。この日のメニューは、▽塩ダレ焼肉丼▽すまし汁▽長芋カニフレーク煮▽中華酢の物▽パイン▽牛乳--で、調理師と栄養士によって必要な栄養価やカロリーが計算されているという。給食には1時間とってあるが、生徒は10~15分で食事を済ませ、図書室に向かう。蔵書は約1万8000冊、将来は約7万冊になるというが、大半の生徒のお目当ては映像ソフトの視聴コーナー。4台しかない画面に、約30人が群がり、「スパイダーマン」「飛ぶ教室」などを楽しんでいた。

 ◇エッセーを毎日提出

  ◇  ◇

 5時限目は、ネイティブスピーカーによる「リスニング・アンド・スピーキング」。英語の授業には1年から週7時間をあて、3年までに英検2級(高校卒業程度)合格を目指す。さらに、海外の大学への進学を念頭に、多読やスピーチ指導も重視する。1年の授業では、テレビ番組や映画をテーマにしたプレゼンテーションを実施。教師から「グッジョブ(いいぞ)」との声が飛んだり、「紙を見ながら話すと下を向いてしまうので、聴いている人を見て話しなさい」と、話し方の指導も。「英語での表現能力は、将来のリーダーにとって重要」(伊豆山健夫校長)と位置付けているためだ。

  ◇  ◇

 高度な授業とともに重きを置いているのがハウス生活。生徒40人が入居するハウスは現在計6棟。さらに、教員資格を持つ「ハウスマスター」1人と、トヨタ、JR東海、中部電力などから出向した20代後半の若手社員が「フロアマスター」として2人ずつ同居し、寝食をともにする。

 課外活動と夕食を終えた生徒が続々とハウスに帰ってきた。手に持っているのはスナック菓子やアメ、パン。IT(情報技術)環境の整った校内で、生徒たちは現金を持たず、渡されたICカードを使い校内の売店で買い物をする。カードは寮の出入りの際の電子キーや図書の借り出しにも利用する。開校当初は、校内の無線LAN(構内情報通信網)のアクセスポイントから常に生徒の居場所を追跡できるシステムもあり「超管理教育の象徴」と指摘されたが、「実際には使っていない」(ハウスマスターの篠崎高雅さん)という。

 帰寮した生徒の多くは1階のラウンジに集まる。50型プラズマテレビがあり、お笑い番組やアニメ、ニュース番組を見る表情は、どこにでもいる中学生と変わらない。2~4階の各フロアに生徒の個室20室をつなぐ形で共用スペースが配置され、パソコンを開いて勉強に没頭する生徒の姿も見られた。静岡県出身の2年生(14)は「友達との寮生活が楽しい」。将来は医師やPKO(国連平和維持活動)要員など「社会貢献できる人間になりたい」という。

 生徒の個室は約5畳。机と本棚、ベッドが据え付けてある。テレビや漫画、ゲームの持ち込みは禁止、IP(インターネット・プロトコール)電話も登録した8カ所からのみ受信可能だ。発信は管理人室の電話を使い、どこの地域に何分かけたかで料金を払う。

 生徒たちは日誌を書き、毎日、フロアマスターに提出。その日あったことや直接話しにくい相談事などを伝える。また、「エッセー」という欄では、与えられたテーマについて自分の考えを短い文章にまとめる。「いじめなどがあると字が乱れたり、内容が空疎になる」と篠崎さん。気になることがあれば、話を聞いて当事者に個別に指導するという。

 ◇少ない地域との交流

  ◇  ◇

 週末の帰省は許可制で、低学年は保護者が送迎しなくてはならない。外出も許可制で教職員が付き添う。田植えや東海道ウォークなど、ハウス主催の校外活動はほぼ毎週実施しているが、毎日、校外と接触するほかの中学生に比べれば極めて少ない。実際、地域の人は「交流している話はあまり聞かない」(商工団体関係者)。将来のリーダーになるには、清掃や福祉活動などまず地域で地に足をつけた体験を数多くこなし、人格や経験、年収などさまざまなタイプの人間と交流することが不可欠だが、その部分は足りないと感じた。【樋岡徹也】

 ◇偏差値、東海の下位

 進学塾や他の私立中関係者の、海陽への評価はさまざまだ。

 「世界の全寮制学校の優れた部分を集めたとの印象を受けた」と話すのは、今年2月から河合塾と提携して東海地方でも教室展開を始めた大手進学塾の日能研(本部・横浜市)の井上修・進学情報室長。「私立と公立では、図書館と理科設備に最も大きな差が出る。海陽は関連施設に相当の資金を充てているようだ。教師陣も含め、前向きに教育に取り組む姿勢を感じる」と語り、「対外説明が少ないなど、PR手法などに課題は残るが、優れた部分を有機的に結びつけた教育が行われれば、将来の成果は大きいはず」と期待を寄せる。

 一方で別の塾関係者は「子供が合格しても、高額な授業料はサラリーマン家庭には負担できない。悩んで他校に進学したケースもあり、結局海陽を選ぶのは(富裕層の)医者などの子供が多い」と話す。

 大手進学塾による入試偏差値ランキングでは、海陽は開成、灘などの全国有名校や、同じ愛知県内で名門私立中として知られる東海、滝の下位にとどまる。東海の福田之徳(ひとく)教頭は「海陽開校後、志願者の増減などの直接的な影響はない」と冷静に受け止めている。

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 ◇学力差対策キメ細かく--伊豆山健夫校長に聞く

 海陽の現状と課題について、伊豆山健夫校長(東大名誉教授)に聞いた。【聞き手・安達一正】

--全寮制学校の運営は順調ですか。

 比較的うまくいっている。入学当初は寂しくて泣く子もいるが、なじむのは早い。全員とは言わないが、多くの生徒が建学の精神に沿ったリーダーの資質を備えつつある。

--生徒たちの学力はどうですか。

 授業のテンポは非常に早く、上滑りが心配な面もあるが、大部分の生徒が何とかついてきている。東海地域は、東京や関西ほど私学受験が過熱しておらず、入学時の偏差値面での評価は難しいと思うが、宝石の原石のように伸びる子がいる。英語は中1で英検2級を取る例がある。

--生徒間の学力格差は?

 本人のやる気の問題もあり、ある程度の差は生じる。英語と数学は能力別授業を取り入れているが、教科によっては今後さらに授業を細分化し、クラスの枠を超えた少人数教育を検討する。

--保護者らの関心は、今後の大学進学実績だと思います。

 それが現実であり、相当数(進学実績を)確保しないと駄目だと思う。医学部や外交官などの生徒の志望に合わせ、戦略的に考えなくてはいけない。以前、校長として在籍した開成中学、高校(東京)は、国公立大受験に向け、全科目の指導に力を入れた。私立を目指して科目を絞って指導する方法もあるが、リーダーにはバランスの取れた幅広い教養が必要。海陽も開成と同じ精神で、力の出し惜しみはせず、全科目を学び、教養を身につけてもらいたい。

--授業料は一般のサラリーマン世帯などには高額です。

 金額面で進学をためらう家庭も確実にあると思う。そのためJR東海の葛西敬之会長などの尽力で、奨学金を充実させている。特定の階層のための学校を目指しているわけではない。

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 追跡2008は毎月第1日曜日に掲載します。

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 ◆一日(平日)の生活◆

 6時半          起床
 7時15分~ 7時50分 朝食(ハウス単位)
 8時10分~14時35分 授業(50分×6時限)
11時50分~12時50分 昼食(クラス単位)
14時45分~15時35分 補習・自習
 (火・木の演習講座は~16時半)
15時50分~17時    課外活動

 (月・水・金)

18時           完全下校
18~19時40分     夕食(各自)
18~20時        自由時間
20~22時        夜間学習
22時半          就寝

毎日新聞 2008年3月2日

by miya-neta | 2008-03-02 08:21 | 教 育

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