「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

社説 憲法・生存権/「最低限」の生活の盾として

河北新報 コルネット


 伝染する病でもあるかのように自殺のニュースが相次ぐ。全国の一年間の自殺者数(警察庁集計)が初めて3万人を超えた1998年以降、同じような状態が続いてきた。
 一人一人が背負い込んでしまった「生きづらさ」の社会的な総和が、集計値に映し出されているだろう。

 原因・動機別の内訳は、どの年も「健康問題」が最も多く、次いで多いのが「経済生活」である。
 国民の「生存権」を掲げる憲法二五条を思い起こす。
 「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
 「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障および公衆衛生の向上および増進に努めなければならない」

 昨年5月、国民投票法(憲法改正手続き法)が成立し、公布された。振り返れば、改憲論議が高まった小泉純一郎―安倍晋三政権下のその時期に、生存権を脅かす不安の影は、わたしたちの暮らしの場で一層濃くなったのではなかったか。
 「最後のセーフティーネット」であるはずの生活保護の切り下げが進む。申請窓口での選別が厳しくなり、「母子加算」「老齢加算」が縮減・廃止された。老齢加算の廃止については70歳以上の受給者が憲法違反と主張して、青森、秋田など各地の地裁に提訴して争っている。

 生活保護よりさらに低い水準に設定されているのが最低賃金制度。東北は各県とも全国平均を下回る。その最低賃金に合わせるようにして、国は生活保護基準の引き下げを決めた。

 「最低」の限界を競い合うような現状でいいか。「聖域」なき歳出削減、財政改革を目指すとして、最低限の暮らしを維持する権利までをも対象にする基本路線で本当にいいのか。
 健康で文化的な生活が、自己責任とは無縁に根こそぎ破壊されてしまうのが戦禍である。だからこそ、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」(憲法前文)して、戦後社会は出発した。

 先月、イラクでの航空自衛隊の活動を違憲と判断した名古屋高裁判決は、憲法前文の「平和のうちに生存する権利」、平和的生存権をはっきり位置付けた。あらためて記憶に刻み込んでおこう。
 「現代において憲法の保障する基本的人権は平和の基盤なしには存立し得ない」「平和的生存権はすべての基本的人権の基礎にあって、単に憲法の基本的精神や理念を表明したにとどまるものではない」

 国会で改憲発議が可能になる国民投票法の施行は2年後の2010年5月。政治のていたらくを見れば、現在の「二大政党」が今後、どんな曲折を経て憲法改正の具体像を提示してくるかを見通すのは容易ではない。
 しかし、大切なこと、忘れてはならないことは明らかだ。「最低限度の生活を営む権利」「平和のうちに生存する権利」。盾として、この二つを手放さない心の構えを保ちたい。

2008年05月03日土曜日
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by miya-neta | 2008-05-03 08:37 | 政 治