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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

阿刀田高さん「私の聖書ものがたり」 手塚アニメと“合作”

阿刀田高さん「私の聖書ものがたり」 手塚アニメと“合作” : 出版トピック : 本よみうり堂 : Yomiuri On-Line (読売新聞)


『私の聖書ものがたり』 阿刀田高 出版社:集英社
発行:2004年11月
ISBN:4087813215
価格:¥1470 (本体¥1400+税)


 故・手塚治虫さんが最後に手がけたアニメ作品に、阿刀田高さんが文章を添えた『私の聖書ものがたり』(集英社)が完成した。宗教に深い思いを寄せる名手2人の、時を越えた〈コラボレーション〉が実現した。(西田 朋子記者)

 手塚さんは生前、イタリア国営放送の依頼で、1985年からアニメ版『旧約聖書物語』を手がけていた。シナリオ、原画を描き、試作版『ノアの箱舟』編の演出を自ら手がけるなど力を注いでいたが、89年にがんで死去。スタッフが遺志を継ぎ、全26編を完成させた。オリジナルキャラクターのキツネの「ロコ」を登場させ、時にユーモアを交えながらも、天地創造からイエスの誕生まで、旧約聖書の壮大な世界を忠実に映像化している。

 作品はイタリアなどで放送され大きな反響を呼んだが、日本では意外に知られていない。聖書をミステリー風に読み直した『旧約聖書を知っていますか』、『新約聖書を知っていますか』(共に新潮文庫)などの著書がある阿刀田さんは、「同世代の偉大なクリエイターである手塚さんの偉業を、親しみやすい形で復活させられないか」と思い立ったという。

 「根っからの活字信奉者で小説を通じてこそ物事を語りたい考えの私にとって、手塚さんは漫画によって物語や思想を語る、一方の側の総大将のような存在でした」

 アニメのフィルムコミック版(集英社刊、3巻)をもとに、約70ページ分を採録。漫画に合わせて、阿刀田さんの文章は「極力易しく、だが聖書の意味と力強さを失わないように」、約200ページ分を加筆した。一冊で聖書全体がわかるダイジェスト版となるよう、手塚作品になかった新約聖書についても、手塚プロ所属の漫画家が30ページ分を書き下ろしている。

 阿刀田さんは「西欧文化、また21世紀の世界のありようを考える上で聖書の知識は欠かせない。なのに、内容を知る日本人は少ない。信仰から離れた立場で、分かりやすく紹介する必要がある」と考えている。同様の思いから、昨年はイスラム教の聖典『コーラン』の解説エッセーも手がけた。

 今回、手塚作品を読み直してみて「人類が長年、よりどころにしてきた古典の中に、手塚さんは晩年、救済のヒントを探ろうとされたのだろうか。狂言回しとしてキツネが登場するのは、手塚さんもまた、第三者的な視点で聖書をとらえようと考えられたように思える」と話す。

手塚のライフワーク
 手塚プロダクション・松谷孝征社長の話「作品を通じて人間とは何か、生死とは何かを突き詰め、問い続けた手塚は、宗教的意味合いとは別に、聖書に深い関心を抱いていました。聖書の事柄をモチーフにした作品はたくさんありますし、若いころから読み込んでボロボロになった聖書が、手塚プロには残されています。それだけに、このテレビシリーズ企画がスタートした時、自分なりの聖書物語を創(つく)ろうと大変意欲的でした。ローマ法王庁の監修のもと、亡くなる直前まで映像の仕上がり具合をチェックするなど、最後まで気にかけていた作品といえます。

 手塚が亡くなって15年。その世界を現代に問い直すこうした様々な試みを通じ、1人でも多くの読者に新たに、あるいは改めて作品に触れて頂けたらと願っています」

(2004年12月1日 読売新聞 無断転載禁止)
by miya-neta | 2004-12-02 08:51 | 芸 能