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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

(11/30)社内結婚の行方(下)転勤配慮「夫婦は同居」、戦力ダウンを防ぐ

SmartWoman 日経生活面


 社内恋愛を経てゴールインしても、同じ会社に勤務し続ける2人の前途には、転勤や育児など様々なハードルが並んでいた。しかし最近はこうした障害で、せっかくトレーニングした2人の貴重な「戦力」を失わないよう、社員の同居を後押ししようとする企業も出ている。

 日本食研(愛媛県今治市)の愛媛本社9階。ここには恋に悩む独身男女が訪れる聖域がある。それは「社内結婚恋愛神社」。縁結び箱が鎮座し、これに結ばれたい社員と自分の名を書いた紙を入れると、神様(社長)が裏から手を回してくれるというありがたい伝説がある。
 伝説の真偽はともかく、同社は社内結婚の比率が非常に高い。社内結婚した夫婦の数は10月末時点で341組。この会社は首都圏や海外拠点も含め社員数は2700人、平均年齢が29歳で未婚者が多いことを考えると驚きの数字だ。
 それは「社員が夫婦になれば家族が会社のファンになる」との考えから、事実上社内結婚を奨励しているからだ。高度経済成長期によくあった考え方だが、同社の場合、結婚後も共働きを続けられるようにとの配慮や、キャリアダウン防止が徹底していることが新しい。



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 「先輩たちは社内結婚してその後も夫婦で働いている。自分たちも同じようにしているだけ」と話すのは武次藍子さん(25)。彼女は今年5月に職場の先輩、武次望さん(29)と結婚したばかりだ。2人は同じ部署の同僚で、席は今も上司を1人はさんだ至近距離にある。同じフロアには同様のカップルがもう1組いるという。
 多くの企業は同じ部署で社内結婚があった場合、女性を配置転換してきた。しかし日本食研では「お金を扱う部署、直属の上司と部下になるケースを除けば配置転換しない」(人事部)。同一部署でのキャリアの継続が仕事の効率を高めるという考えだ。転勤が必要になる場合も、「夫婦が同居できるように最大の配慮をする」という。
 こうした先進企業ほどではないにしろ、既存の制度の枠の中で配慮をしている会社がある。マーケティング会社のインテージはそのひとつ。同社は今年、職業生活と家庭生活を両立させやすいファミリー・フレンドリー企業として東京労働局長賞を受賞したばかりだ。
 例えば近藤広子さん(仮名、30)と雅隆さん(同、32)夫婦。2人は2000年に結婚し、広子さんは出産を経て昨年4月に職場に復帰した。広子さんは西東京市の本社、雅隆さんはマーケティング部門がある東久留米事業所と職場は別だが、同じ通勤圏に収まっている。転勤で夫婦が離ればなれになるケースは少ないという。
 インテージでは938人の社員が東京と大阪、中国・上海に分かれて勤務しているが、社員が集中しているのは首都圏だ。地の利のメリットが、夫婦同居を実現できる理由でもある。
 制度の枠内での配慮はキリンビールの医薬カンパニーにもみられる。同カンパニーは群馬県高崎市に医薬工場や研究所があり、同市に勤務する社員が多い。夫婦の一方が高崎市に転勤すると、新幹線で群馬県まで通うか単身赴任する必要が生じてくる。さらに営業職は全国への転勤もある。
 小川寛樹・総務部部長代理は「社内結婚カップルを特別扱いしているわけではない」と強調するが、実のところ医薬カンパニーで社内結婚している10組の夫婦で、別居しているケースはほとんどない。社員が専門分野を扱っていて配置転換が必ずしも能力の拡大に結びつかないこと、子育て中の若い夫婦が別々になるのは好ましくないという考えが社内にあることが、理由のようだ。


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 もともとキリンには社員同士が結婚するための“タネ”があちこちにあった。同年齢の男性社員と結婚した医薬カンパニーの小林靖恵さん(33)は、「有志が自発的にソフトボールチームを作るなど自然発生的なイベントは盛りだくさん」と振り返る。社内結婚の利点について、「育休中も夫に職場情報を伝えてもらった。社内外に共通の知り合いも多く仕事しやすい」と話す。互いの仕事が見える、情報を共有できるなどメリットが多いという。
 個々の企業の取り組みは副次的に少子化対策にも結びつく。育児介護休業法は社員を転勤させる場合に、育児や介護の状況に配慮するよう義務付けているが、これら企業は、夫婦の同居にも目線を向けているからだ。
 働く女性の実情や少子化対策に詳しいニッセイ基礎研究所の武石恵美子上席研究員は、「企業にとって優秀な女性が結婚・出産を機に会社を辞めることが損失であることは明らか」と前置きする。そのうえで「企業は人材活用面から制度整備を進めていくべきで、働く女性の側も仕事と家庭のバランスをとる意識を高く持ってほしい」と話していた。
 この連載は生活情報部の望月保志、赤羽雅浩が担当した。

[日本経済新聞 夕刊]

 
by miya-neta | 2004-12-04 23:08 | 社 会