故アラファト氏の子供が20人?――実子1人、養子は19人
2004年 12月 16日

【ガザ(パレスチナ自治区)=金沢浩明】11月に死去したヤセル・アラファト・パレスチナ自治政府前議長には実は20人以上の子供がいた!。
もちろん、60歳を過ぎてからと晩婚だったアラファト前議長の血のつながった子供は、スーハ夫人との1人娘ザフワちゃんだけ。あとはイスラエルとの闘争で両親を失った孤児などの養子である。
フィラス・ヤセル・アフダルカデル・アラファト氏(22)。身分証明書にも父アラファト、母スーハと記載されている正真正銘の養子だ。レバノン生まれのパレスチナ人で、1歳の時に難民キャンプの虐殺事件で両親を失った。兄弟もいなかったファリス君を、アラファト氏が同様の境遇の子供計5人を集めて家を提供、住み込みの管理人を付けて面倒を見始めた。
飲食のほか教育費や小遣いも支給され、チュニス、ガザとアラファト氏とともに転居した。アラファト氏は「月に一度は家に泊まり、必要なものがあったら何でも言いなさいと言ってくれた」。学校をさぼった時は真剣に怒られ、しばらく外出禁止を言い渡されるなど。「まさに本当の父親だった」。
死去のニュースをテレビで見た時は涙がとまらず、5人の「兄弟」たちと弔問所に行き、数日泣き続けたという。
アフマド・アブフレイバ氏(25)は実の父親を4歳の時に亡くすと、母親と離れて同じような子供約15人でアラファト氏の援助のもとで共同生活を始めた“養子待遇”。
アラファト氏はよく泊まりに来ては、ひざにのせたり食べ物を手でとって食べさせたりと、面倒を見てくれたという。実の父親のことは覚えておらず、「自分の父はアラファト。それを誇りに思っている」。いまだに死去を信じられない、とうちあける。
アラファト氏は闘争家のイメージが強く、米国やイスラエルからは「テロリスト」と断定されたが、「子供たち」にその片りんは見られない。ガザのアズハル大学3年生で歴史学を専攻するファリス氏は「卒業後の進路はまだ特に考えていない」という普通の学生。アフマド氏はガザの自治政府事務職員で、「将来の希望はここで結婚して安定した生活をすること」。
一方でアラファト氏の死去で生活がどうなるかの不安も隠せない様子。来年1月9日の選挙で選ばれる新しい指導者にも「今と同じ支援を続けて欲しい」と声をそろえた。