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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

総合的な学習時間:文科相見直し発言 実施3年早くも逆風

MSN-Mainichi INTERACTIVE 教育ニュース


 新学習指導要領の象徴、「総合的な学習の時間」が荒波に漂い始めた。国語や算数・数学といった主要教科の時間を増やそうと、中山成彬文部科学相が削減を含む見直しを示唆した。「学力低下」論や国際学力調査の結果に背中を押された形だ。子どもたちの「生きる力」をはぐくもうと、総合的学習が小中学校に本格導入されて3年(高校は2年)。強まる「逆風」の背景や今後を探った。【千代崎聖史、木戸哲、北川仁士】

 ◇改革姿勢アピール 真意図りかねる周囲

 「総合学習も聖域ではないが、削減を具体的に検討しているわけでもない。もう少し長期的に見ないと。総合学習の方向性は正しいわけだから」。文科省のある幹部は19日、文科相発言を報じる新聞を手に困惑気味に語った。既に昨年12月、指導要領の見直しに言及していた文科相だが、今回の発言は省内で根回しされたものではなかった。「精査してみます」。18日、宮崎県での発言を伝え聞いた幹部はこう言うのが精いっぱいだった。

 詰め込み教育批判を受け、ゆとりある学校生活を旧文部省が唱えだしたのは小中学校の77年改訂指導要領だった。流れはその後も加速し、98年改訂(02年度実施)では教える内容をさらに削減して総合学習が生まれた。

 「授業時間が足りないのは(同時に導入された)完全学校5日制と総合学習のせいだ」との批判も根強いが、文科相発言にはもう一つの背景がある。「三位一体の改革」を巡る義務教育費国庫負担金の存廃問題で、05年度4250億円の暫定削減に追い込まれた苦い記憶だ。削減を唱える財務・総務省に教育論で対抗したが、国民的議論を起こせなかった。義務教育改革に取り組む姿勢を強調して世論を味方につけたいとの思惑がのぞく。

 そして昨年12月、二つの国際学力調査で子どもたちの学力低下が指摘され、文科相は「もはや世界トップレベルとはいえない」と踏み込んだ。政策の誤りを認めることになりかねない「学力低下」を認めたことで「文科省はルビコン川を渡り、前に進むしかなくなった」とみる識者もいる。

 ただ、発言から一夜明けた19日、文科相は全国の指導主事会議で学力向上を訴えたものの総合学習には触れなかった。総合学習の在り方を含め審議を求める課題を中央教育審議会に近く示すとみられる。しかし、どこまで具体的に見直しを求めるのか周囲は真意を図りかねており、削減に直結するか否かは不透明だ。

 ◇賛否渦巻く現場 「学力低下」論が直撃

 「算数も社会も理科も全部つながっている。それを学べるのが総合学習だ」と、鹿児島県沖永良部島にある知名町立田皆小学校の鐘森俊文教諭(42)は指摘する。今月上旬、日教組教育研究全国集会で実践を報告した。

 「自立」を目標にした総合学習で毎年、児童をキャンプに連れて行き、奄美の海に潜っている。事前の買い物、シュノーケルの練習、調理実習……。子どもたちは普段学んでいることが役立つことを実感しながら準備を進める。自分にできることや人にしてあげられることを知り、行動に必要な知識や技能、目標に向かって頑張り続ける力を身につけていった。

 「導入されて3年がたち、中身の濃い実践が増えてきた」。集会の共同研究者として鐘森教諭の報告を聞いた善元幸夫・東京都新宿区立大久保小教諭は振り返る。「総合学習は子どもを中心に据えた教育。導入は日本の教育史の中で画期的な出来事だった。学力問題と総合学習を短絡的に結びつけるのは唐突」と疑問を投げかけた。

 文科相発言への受け止め方はさまざまだ。首都圏の中学教諭は「現状では総合学習の内容を考え、準備する余裕がない。教科の授業で扱うべき内容を総合学習で教えることもある」と明かし「カリキュラムの見直しには賛成だ」と話した。関東地方の中学教頭は「国は振り子が正反対に振れすぎ。教育改革は何だったのか。教科書も作らず、人も増やさないまま現場任せで総合学習を導入したツケだ」と指摘した。

 一方、現行指導要領の下でも、授業時間を確保する取り組みは多い。1年を3学期ではなく2学期に分ける試みも、テスト回数を減らして学習時間を増やす狙いがある。東京都世田谷区では、区教委の提案を受け、今年度から区立中31校のうち21校で50分授業が52分授業になった。2分の積み重ねで年間39時数分増える。葛飾区は来年度から全区立中24校の夏休みを1週間減らす。約30時数の増加になるという。

 ◇授業少なくても高学力 フィンランドでは

 授業時間は昭和40年代から減り続けてきた。小6の総授業時数は68年改訂指導要領で年1085。それが77年1015、98年945に減った。中3も69年の1155が77年1050、98年980となった(1時数は小学校45分、中学校50分)。

 ただ、フィンランドの教育事情に詳しい都留文科大の福田誠治教授は、学力と授業時間は必ずしも比例しないと言う。国立教育政策研究所の「学校の授業時間に関する国際比較調査」(02年)によると、学級活動などを差し引いて比べると、フィンランドは小学校(1~6年の合計)で日本とほぼ同じ年4000時間弱、中学校(1~3年の合計)ではやや多い2500時間だが、国際的には少ないほうだ。それでも、15歳を対象にした経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)でトップグループを維持している。

 カナダやフランスはともに小学校5000時間、中学2700時間と多いが、00年のPISAでカナダの読解力2位を除けば5~14位にとどまっている。韓国も授業時間が少ない。福田教授は「フィンランドでは学校の授業をしっかり聞き、家に戻ると発展的な課題に取り組む。時間ではなく、授業の質こそ問われるべきだ」と話す。

 <総合的な学習の時間>

 教科の枠を超え、子どもの興味・関心に基づく学習を通じて、自ら学び、考え、問題を解決する力を育てることを目的に、小中学校で02年度から本格導入された。小学校(3年生以上)は週に3時間程度、中学校は週に2~4時間実施されている。具体的なテーマは各学校の創意工夫に任せられ、決められた教科書もない。高校では03年度から導入された。

毎日新聞 2005年1月20日 2時42分
by miya-neta | 2005-01-20 08:03 | 教 育