人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

デジタル放送:民放キー局系BS放送にマス排の全面緩和を

MSN-Mainichi INTERACTIVE カバーストーリー


 今年は放送局において、マスメディア集中排除規制および外資規制についての見直しが行われる見込みである。後者については慎重に、前者については実態に即した形での見直しがなされるべきだと考えられる。懸案事項の一つである民放キー局系BSデジタル放送局については、民放キー局による100%子会社化も認める時期に来ていると思われる。【西  正】

■■民放発足当初から議論

 昨年の暮れ以来、放送局の株式が第三者名義で保有されているケースが続々と明らかになり、早急に是正することが求められている。マスメディア集中排除規制、いわゆる「マス排」に違反しているからという理由だが、法規制の制定時とは異なり、携帯やネットなど、メディアの多様化が進んだこともあって、テレビ放送の影響によって言論が偏重する懸念の度合いが変わってきていることは間違いない。

 仮に、規制による数値設定(地上波局では地域が重複する場合の株式保有は10%未満、重複しない場合は20%未満)が形骸化しつつあるのならば、総務省としては規制に合わせるべく指導するのと同時に、規制の数値の設定自体を見直す努力も必要であるはずだ。

 とりわけ、民放キー局系のBSデジタル放送各局については、実態に即した運用がなされるべきとの声が発足当初から強かった経緯にある。系列局、関連業界各社からの出資も受け、メンバーにも出向者が見られたが、地上波に次ぐ準基幹放送という位置づけからしても、基本的には母体となるキー局からの出向者が中核的な役割を果たしてきた。その結果、社屋もキー局の中にあり、実際に運用しているメンバーもキー局からの出向者ということになり、あくまでもマス排対応として別会社にしているに過ぎない形になっている。

■■規制と実態とのかい離

 マス排の趣旨が「言論の偏重を避けること」にあるとすれば、あまりにも形式的な適用にこだわり過ぎている感すら受ける。規制と実態のかい離を象徴付けるものと言えるだろう。地上波と同様に広告放送による経営を選択したものの、受信機を普及させなければいけないという、地上波では経験しなかったところからのスタートになり、結果として、なかなか軌道に乗らずに苦しむこととなった。

 そもそも民放キー局各社がBS放送事業への参入を望んだのは、NHKの成功事例を横目で見ていたからである。しかしながら、地上波とBSとを一体で持つNHKが両波の間で巧みにコンテンツを使い分けることが出来たのに対し、マス排によって別会社化された民放側は、その手法を使えないという状況になってしまった。一局一波としてBS放送を成り立たせていくことは、広告放送を選んだ時点で非常に困難なことになることが危惧されたが、それが現実のものとなったのが、この4年間の業績不振から見て取れるといえるだろう。

 総務省もそうした現状を踏まえて、段階的にマス排の緩和を続けた結果、現在では民放キー局の出資比率は5割まで可能となった。しかし、本来は「言論の偏重」を避けることを趣旨としながら、わずか4年の間に段階的に緩和していくという姿勢には、単なる政策サイドの「判断ミスを簡単には認めたくない」という以上の理由を見出せない。

■■BSのマイナス面は杞憂

 04年の暮れに、各局のBS放送の免許が更新されたが、今後の5年間の運営をスムーズにしていくためにも、民放キー局系のBSデジタル放送については、マス排の緩和を徹底し、100%保有の子会社として一体経営を認めるべきであると思われる。今年中には視聴可能世帯数が一千万世帯を超えると言われているが、そうした数字に目を奪われていては、実態面での前向きな改善を阻害することになりかねない。

 最終的に全面緩和をするに当たっては、スタート時に懸念された系列地方局の経営への影響についても勘案しておくべきだと思われるが、全国一波という特性に注目し、かつ視聴者層の想定を見誤らねば、むしろプラスの効果はあっても、マイナス面については杞憂に過ぎないと思われる。

■■キー局の一局二波が地方局の活性化に

 今の地上波の編成を見ると、いろいろな指摘がなされていても、結局はF1、M1向けを強く意識したものとなっている点では、各局とも共通している。それはそれで経営戦略上、正しいと判断された選択なのであろうが、放送に「文化」という側面がある以上は、NHKに限らず民放からも、必ずしも視聴率にとらわれない良質な番組が提供されるべきである。

 地上波とBSを一体で運営することが出来るようになれば、民放にも改めて新たなウインドウが与えられることになる。BS単体での結果を無理に追わずに済むようになれば、視聴率だけに拠らない番組編成が可能になるはずだ。

 地方局が自主制作する番組は、個別局単位で見れば数としては決して多いとは言えないが、系列を通して見れば、良質なドキュメンタリー番組などが非常に数多く作られている。残念ながら、全国ネットで放送されるチャンネルが一つしかなく、それが視聴率を意識したものにならざるを得ないため、視聴する機会を得られずに埋もれてしまっているのが実情である。

 地上波とBSを一体運営することによって、BSデジタル放送の方では、視聴率ばかりを気にすることなく、そうした地方局の作った良質な番組を流すことができるようになる。そういう形で、地上波とBSの使い分けが可能になれば、キー局が制作して流す番組についても、いわゆる「BSらしさ」のイメージに沿ったものになっていくと考えられることから、BSのブランディングも高まることになるだろう。

■■問われる編成の「自由度」

 地方局の制作した番組の中から良質なものを選び、全国波で流す機会が増えるとなると、地方局の活性化につながることにもなる。あくまでも視聴率を取りに行く番組については、引き続き地上波のネットワークで流すことにすれば、地方局にとってのマイナス面を心配する必要はない。

 BSは赤字でも構わないということではない。ただ、これまで中高年層からすると、どうも自分たちが見ることを期待して作られているとは思えない番組が多かったせいで、民放ではなくNHKを選局していたケースが多いことへの、民放側の歯止め策としてBSを地上波で使い分けようという考え方である。一局二波になることによって、今まで出来なかった、同じ時間帯に別々の年齢層をターゲットとした番組編成を行えるようになる。その結果が、赤字になるかどうかは、やってみなければ分からないし、それに成功したからと言って、これまでの編成が間違えていたことにもならない。

 あくまでも編成の自由度が増すというシナリオである。もちろん、マス排を全面緩和したからといって、一局二波にすることが義務付けられるものでもない。民放の横並び経営に終止符を打つ、良い機会になると受け止めるべきなのではないだろうか。

 2005年2月10日
by miya-neta | 2005-02-12 23:51 | メディア