両陛下:サイパン慰霊へ 戦後60年節目迎え
2005年 02月 16日
天皇、皇后両陛下が3月末に、米国自治領サイパン島を訪問されることが15日、ほぼ固まった。同島は太平洋戦争末期まで日本が統治、戦場にもなっており、政府は今回の訪問を戦後60年の節目での「慰霊の旅」と位置付けている。同島と同様に戦禍に巻き込まれた太平洋諸島のマーシャル諸島、ミクロネシア連邦、パラオの3カ国への年内訪問についても検討している。戦後は皇族の訪問例はなく、政府は同諸島との一層の友好親善を図りたい考えだ。
政府は今後、過去の問題に関する「お言葉」の内容について、内閣官房と宮内庁を中心に検討を進める。
両陛下は今年5月にノルウェーとアイルランドを訪問予定。マーシャル諸島、ミクロネシア、パラオの訪問の具体的な日程は固まっていないが、終戦記念日をにらみ夏ごろまでに訪問する考えもある。訪問先では戦没者慰霊碑への献花のほか、現地日系人らとの交流なども検討されている。
この地域への訪問計画は、00年4月に宮崎市で開かれた「太平洋・島サミット」の際に、当時の森喜朗首相が南太平洋の島しょ国への政府開発援助(ODA)拡充などを打ち出し、参加した首脳から両陛下の訪問を要請されたのがきっかけ。
政府は昨年、パラオなど3カ国への両陛下の訪問を計画したが、03年1月に前立腺がんの摘出手術を受けた天皇陛下の体調問題や、現地での移動手段、通信事情、警備面などを総合的に判断して見合わせた。しかし、歴史的な経過や親日国であることを考慮、「戦後60年の節目に両陛下が訪問する意義は大きい」(政府筋)として、具体的な検討を進めている。
第一次世界大戦がぼっ発した1914年に、日本はパラオを含む独領ミクロネシア(南洋群島)を占領。20年に当時の国際連盟から同地域の委任統治が認められた。多くの日本人が移民したが、第二次世界大戦では戦場となり多くの犠牲者を出した。
毎日新聞 2005年2月16日 3時00分