子どものかぜ 抗生物質不要
2005年 02月 19日
小児科の関連学会が指針
「早く治るといいね」(東京都内の小児科クリニックで)
寒い日が続くこの季節、子どものかぜは親にとって心配の種だ。小児科の関連学会がこのほど、かぜへの抗生物質の使用を「不要」と明記した診療指針を初めて発表した。かぜに抗生物質は効かないことを改めて確認したい。(山口 博弥)
この指針は、日本小児呼吸器疾患学会と日本小児感染症学会が昨年11月にまとめた「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2004」。
肺炎の解説に重点を置いているが、かぜ(「上気道炎」)についても診断や治療指針を示している。
かぜは、鼻からのどまでの「上気道」がウイルス感染などにより炎症を起こした状態。指針では、いわゆる鼻かぜの「普通感冒(鼻咽頭炎(びいんとうえん))」、発熱やのどの痛みなどを伴う「咽頭炎・扁桃(へんとう)炎」、犬の遠ぼえのようなせきが出る「クループ症候群」に分類している。
これらのかぜに対して、医師から抗生物質(抗菌薬)を処方されたことのある人は少なくないだろう。
抗生物質は、体の中で細菌が増えるのを抑える薬。かぜの9割はウイルス感染が原因で、抗生物質ではウイルスを抑えることはできない。
それなのになぜ抗生物質が使われるのか。
「くさかり小児科」(埼玉県所沢市)院長の草刈章さんらが行った日本外来小児科学会の調査によると、回答した小児科医157人のうち、熱がある上気道炎の患者のほとんどに抗生物質を処方する医師が58人(37%)。患者の数をみると、3055人のうち1443人(47%)が処方されていた。
抗生物質を使う理由は「溶連菌(ようれんきん)感染症、中耳炎などの細菌感染症の治療」が最も多く、次いで「症状だけでは細菌感染を否定できない」「2次感染の予防」だった。
たしかに、咽頭炎・扁桃炎の一部には、溶連菌という細菌感染によるものがある。しかし草刈さんは「溶連菌の感染は、迅速検査で簡単に診断できる。細菌感染の証拠もなしに抗生物質を使うのは問題」と指摘する。

海外の比較研究では、抗生物質を使ってもかぜの症状改善には効果がなく、細菌感染の予防にも役立たないという結果が出ている。
さらに、不必要な抗生物質の乱用は、薬が効かなくなる「耐性菌」を増やしてしまうことにつながる。
指針ではこうした事実を指摘しながら、普通感冒については「抗菌薬(抗生物質)の使用は有害無益とされ、適応がないとする報告が多い」と明記。他のかぜについても「原則不要」とした=表参照。
特に子どもの場合、骨や歯の形成を妨げたり、関節障害を引き起こしたりする恐れのある抗生物質もあり、十分な注意が必要だ。
指針の作成委員長で千葉大名誉教授の小児科医、上原すゞ子さんは「日本は世界でも耐性菌が多い国。第一線の医師は細菌感染の有無を見極め、安易な処方を慎むべきだ」と警鐘を鳴らす。
大人のかぜでは、すでに日本呼吸器学会が一昨年、「かぜに抗生物質は効かない」とする診療指針をまとめている。
子どもも大人と同様に、かぜを治すのは休養や栄養。睡眠を十分にとり、水分やビタミンを多く含む食事をとることが大切だ。
ただし、せきがひどくて体力を消耗する時など、症状を抑える薬を飲んだ方がいい場合もある。医療機関に連れて行く目安を左に示した。その際、親の側も単なるかぜなら、医師に抗生物質の処方を求めないよう心がけたい。
◎ ◎
「ガイドライン」は協和企画刊、税込み3000円。
「ガイドライン」は協和企画刊、税込み3000円。 子どもを医療機関に連れて行く目安(草刈章さん監修)
1、39度以上の高熱が出た
2、発熱に加え、発疹(ほっしん)やリンパ腺の腫れ、腹痛、頭痛などの症状が出ている
3、1日に何度も吐いたり、下痢をしたりする
4、せきがひどく、眠れない
5、視線が合わない、眠りがちなど普段と違って何か変だ、と感じる
(2005年2月13日 読売新聞 無断転載禁止)
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