社保庁オンラインシステム、年間520億削減可能
2005年 02月 22日
年金保険料の不透明な支出が明るみに出た社会保険庁のオンラインシステムについて、コンピューターの配置や契約方法などを見直せば、年間の運用費が最大約520億円も削減できることが、社保庁の「刷新可能性調査」の最終報告書で明らかになった。
21日開かれた同調査の専門家会議で示された。
社保庁は長年にわたり、特定の業者と随意契約を結んで同システムの運用を任せてきたが、その中で、必要以上の公費が支出されていたことが浮き彫りになった。
「刷新可能性調査」は、官公庁のコンピューターシステムを巡る支出の妥当性を検証するため、政府が2003年7月、各府省庁に実施を指示。各府省庁はその結果を受けてシステムの最適化を進めることになっており、社保庁は昨年1月、民間のコンサルタント会社に調査を委託した。
社保庁のオンラインシステムは1967年度に運用が始まったが、コンピューターの調達やソフトウエアの開発は、一貫してNTTデータや日立製作所など3社が受注。その後の運用もNTTデータなどが随意契約で請け負っており、昨年度は約1100億円の年金保険料などが支出された。
これについて、報告書は、システムの中核となる約30台の大型コンピューターが置かれた「センター設備」が、NTTデータの所有ビルなど都内の3か所に分散配置されて運用効率が悪くなっているほか、ソフトが複雑化して改修費用がかさみ、高コスト化の原因になっていると指摘した。
そのうえで、システム見直しの規模を、「漸進型」「部分再構築型」「全面再構築型」に分けて、削減可能な額を検討。ハードやソフトの調達を随意契約から競争入札に切り替えたり、ソフトを簡素化したりすることで、年間コストは約450億―785億円になるとしている。この額は、昨年度の運用費約1100億円から消費税などを除いた約971億円の46―81%にあたる。
年間コストを約520億円削減できるのは、センター設備を1か所に統合する「全面再構築型」の見直しを行った場合で、▽センター設備で約323億円▽ソフト改修で約101億円▽端末設備で約48億円――などのコストカットが可能になるという。
さらに、NTTデータと日立製作所は昨年度、契約書に明記されていない20の業務を行い、人件費106億円の支払いを受けたが、これについても、報告書は「費用構造が不透明」「社保庁は業務内容を把握できず、業者への依存を生み出した」と指摘。これらの業務を個別発注することなどで、最大43億円が削減可能だとした。
システムの全面再構築には、約1840億円の初期投資が必要だが、新システムに完全移行すれば、2014年度から削減効果が表れるという。
同庁のオンラインシステムの予算規模が高額になっている原因について、報告書は「(社保庁の)システム管理体制の弱さにある」と批判した。
(2005/2/22/03:02 読売新聞 無断転載禁止)