監督インタビュー / 「MAKOTO」の君塚良一
2005年 02月 22日
2月19日(祝)より 全国ロードショー
監督:君塚良一
キャスト:東山紀之、和久井映見、哀川翔ほか
日本語のオフィシャル・サイト
監察医、白川真言(マコト・東山紀之)は想いを残して死んだ者の霊が見えるのです。彼はその不思議な能力に悩みつつも、死者の想いを読み取り、さまざまな事件の意外な真相へと近づいていきます。突然亡くなった少女、飛び降りたはずの男など──死者たちは、残された者へ深い想いを伝えるべく、真言の前に現れます。そして真言の妻・絵梨(和久井映見)もその1人でした...。
監督、脚本は大ヒット作「踊る大捜査線」シリーズや「恋人はスナイパー」などを手掛け、若者に人気を誇る脚本家、君塚良一です。この映画で監督デビューを果たした君塚氏は先日このページの担当者へザー・ハワードとのインタビューに応じ、解剖室の実態から、日本映画をリメイクするアメリカなど、さまざまな話題についてと語ってくれました。今回のそのインタビューのハイライトをご紹介します。
このページの一番下にある英会話のレッスンもお見逃しなく!
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ヘザー:映画の勉強として解剖室を訪れてみて、実際どのような感じでしたか?
君塚監督:監察医たちは医学に対して大変な貢献を果たしているのですが、死者のためにお金を使うことを行政、大学病院も理解していないんです。人を助ける方が一番ですから、まずは外科医、内科医、歯医者さん。監察医たちは大学病院の端っこの方の、実際映画みたいにあんな古い建物に行かされています。予算もありません。
(映画の撮影に)実際の杏林大学の解剖室をほぼその通りに移した感じです。まあ、暗さはね、今回は映画のために光と影を強めたかったので、闇を強めたんですけどね。
でも彼らの仕事はとても大切ですよ。自殺だと思われていたものが殺人だと分かったりして。溺死とか、水死、ガス自殺を防ぐための研究もしています。着衣水泳(洋服を着たまま溺れないようにする方法)の教育が始まったのは彼らが一所懸命研究してリポートを出したからです。
私はわりと太陽を浴びている職業とか、人間にあまり興味がありません。やっぱりそういう影でがんばってる、報われない人たちにドラマで光を当てたいんです。
(実際の監察医たちは)いつも死者と対峙していると、主人公の真言と同じように死者が語りかけてくるものを何とか聞こうとするそうです。例えば、「自殺の死体です」と言われても彼らが本当に調べると、「いや、僕は自殺じゃなく、殺されたんだ」という声が聞こえてくるようです。経験でね、霊とかとは関係なくね(笑)。
私と主役を演じる東山さんも何回も解剖室を見に行きました。いろんな菌とか、病気のことがありますから、実際の解剖ではなく何もない解剖室を見ましたが、やはり幽霊、霊気の気配を感じました。
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ヘザー:東京都監察医務院の元院長・上野正彦氏と、杏林大学医学部法医学教室主任教授・佐藤喜宣氏がアドバイザーを務めてくれましたが、どのような助言をしてもらったのでしょう?
君塚監督:撮影現場にずっとついててもらいました。言葉の一つ一つや、メスの持ち方などをアドバイスしてもらいましたが、一番は遺体を見たときに、まず頭を下げることです。ああいう演出はもともとなかったのですが、先生が言ってくれました。
必ずまず亡くなった方に敬意を表する、死者の尊厳を認めるということで、まずきちんと頭を下げてから。
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ヘザー:最近たくさんの日本映画がハリウッドでリメイクされていますが。
君塚監督:今、日本のホラーがアメリカでリメイクされていますね。アメリカ映画のアイデア不足もありますが、もう1つの理由は… かつてはハリウッド映画の「怖さ」が一番怖かった。つまり音響と出るべきものは出る。怪物とかエイリアンとか。
ところが時代が変わって、怖いものが全部闇に隠れてしまいました。テロリストもそうです。今のアメリカ人にとって怖いのは、エイリアンが「ワーッ」と飛び出てくるのではなく、ぼんやりどこかにいるという気配です。一番それに近いのは日本の伝統的な幽霊という感じです。
しかし、その撮り方のノウハウはアメリカ人にはないわけです。アメリカ人の監督では、どうしても派手になってしまうのです。
そのノウハウは日本人にはいっぱいあります、特に若手に。日本はホラーというのは、低予算の映画としての一番正しいジャンルなんです。日本はアクションが取れないでしょう、お金がないから。だからホラーは一番若手が挑戦できるジャンルです。中田秀夫さん、清水さんがいっぱい撮りました。
日本映画の良さというよりは、日本的なホラーが求められているんでしょう。その繊細さ、暗い闇の中にぼんやりという感じです。
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ヘザー:映画を見ていて、私はときどき「どこからどこまでが真言の記憶で、どこからどこまでが彼の空想なのか」区別できなくなることがありました。監督はわざとそういうふうに作られたんでしょうか?
君塚監督:わざとやりました。テレビドラマでも映画でも、僕はエンターテインメント系の脚本を書いていましたから、「分かりやすく」が一番でした。つまりハリウッド映画を目指しましたね、だれが見ても分かるようなもの。
しかし今回は観客に想像してほしい、感じてほしかったんです。愛とは何かとか、生と死は何かとか、その結論は出していません。何なんだろうかって思ってほしかったんです。そのためにセリフも減らしましたし、なるべく映像で描こうとしました。こんなに愛はすばらしいとか、人間は美しいとか、そんなふうに描いてはいません。むしろ印象について考えたり、話し合ったりしてもらいたいんです。
もともと脚本家になったのは、監督をやりたいからでした。僕の好きな映画はあまり説明していないヨーロッパ映画とか、あるいは80年代の日本映画。
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ヘザー:原作の漫画からどういうふうにストーリーを変えたのでしょうか?
君塚監督:漫画では、(少女である娘を亡くした母親は)本当はその子を虐待してはいませんでした。でも今の状況を考えると、僕はそこから目をそらすことはできないと思いました。だからしていることにしました。でもしている上でそれを受け入れる段階で最後の別れを神様がくれた、というふうにしました。
絵について議論するのは楽しいですが、結論はありません。その映画自体がそうです。議論してほしいけれど、結論はその作品自体から発生されませんよって。実は、大きい話をしているんだけれども、それを違うように受け止め、伝えられてもいいんです。
コミックだからハッピーエンドに向かっていきます。でもどうしても僕は「人は美しいとか、愛はすばらしい」だけではだめ。愛はすばらしい、けど壊れる。人が人を信じるのはすばらしい、けど人は人を裏切る。
原作の絵では幽霊を見る真言は普通のお兄ちゃんです。今回主演してくれた東山紀之さんは舞台の俳優、もともとアイドル。でも美しい人。神秘の力、超能力は美しいものに宿る、と僕は思っています。脇役には自然な演技ができる人を回りにおいて、主役だけは牧師さんのようにやってもらいたかったんです。
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「MAKOTO」の主人公は幽霊を見ますので、今回は ghost や spirit を使う表現をご紹介します。
That's the spirit という表現はこちらでご紹介しています。
in high spirits
spirit にはたくさんの意味があり、この表現の場合「精神」や「元気」を意味しています。少しフォーマルで堅い言い方ですので、よくニュース番組などで使われます。
アメリカの大統領選挙を想像してみましょう。投票も終わり民主党候補が当選しそうです。すでに民主党の選挙本部では関係者が喜び合っています。それを取材するテレビ記者は次のように語るかもしれません。
The Democratic Party is in high spirits tonight.
一方、in low spirits は「意気消沈して」という意味です。民主党が喜んでいれば、当然共和党は落ち込んでいます。英語では、
The Republican Party is in low spirits tonight.
in poor spirits というバリエーションもあります。
The Republican Party is in poor spirits tonight.
spirit away
「千と千尋の神隠し」の英題は Spirited Away です。日本語では神、英語では霊 (spirit) と言いますが、イメージは同じです。「神隠しにする」、「さらう」ことで、「ひそかに」、あるいは「ミスティリアスに」というニュアンスがあります。
強盗事件を想像してみましょう。ある倉庫に保管されていたドレスが突然消えていることが分かりましたが、だれがいつ盗んだかという証拠はありません。英語では、
All the dresses were spirited away from the warehouse.
kindred spirit
この表現に登場する spirit は幽霊ではなく、「魂」のことです。「自分と同じ気持ちや態度を持つ人」という意味です。
あのなじみのドラマ「赤毛のアン」にもこの表現が登場します。「妹が重病なの」と友だちから助けを求められると、マシューというおじさんが一言も言わずに家を出ます。すると、マシューの養女アンは「彼が医者を連れてきてくれる。彼とは気持ちが通じ合えるから彼の心が読めるの」と友だちに説明します。英語のセリフは、
We're such kindred spirits I can read his thoughts.
the spirit is willing but the flesh is weak
これはもともと聖書に登場した表現です。イエス様が「誘惑に負けないで」という意味で使いましたが、今は「何々したいけど力が足りない」とか「したいけど疲れすぎている」ことです。
例えば、私は週に数回家で腹筋のトレーニングをしています。ビデオを見ながらしますが、いつもインストラクターより早く筋肉が疲れてやめてしまいます。
だから、彼女が「じゃ、もう12回!」と元気よく呼びかけると、私は次の言葉を言いながらビデオを止めます。
Twelve more? The spirit is willing but the flesh is weak.
ghost of a chance
この表現では ghost は「実体のない影」という意味です。ほとんどの場合否定的な意味で使われ、「チャンスの影もない」、つまり「まったくチャンスがない」ということです。
あともう少しで今年のアカデミー賞が発表されますが、受賞する見込みがほとんどない候補者もいます。例えば、今年カタリナというコロンビア出身の女優が主演女優賞にノミネートされていますが、私は彼女が獲得することはまずないと思っています。
I'd say Catalina doesn't have a ghost of a chance to win.
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