発信箱:大阪のおっちゃんも強い 西木正(論説室)
2005年 02月 27日
「大阪のおばちゃん」が、ますます元気だ。
静岡県の振り込め詐欺防止CMで「気ィつけや!」とまくしたてて話題になった。大阪のイメージダウンという声も出たが、太田房江・大阪府知事が「私もおばちゃんの一員」とフォローして一件落着した。
しゃべりで世話焼き、派手好みだけどそろばん勘定はしっかり。テレビで誇張され気味だが、関西人から見ても、大方当たっている。
沢田研二、藤山直美の舞台「夫婦善哉」が東京で評判だった(大阪は3月3日から)。「あかんたれ」(駄目な人間)としっかり者の女、という構図は健在だが、現実の大阪のおっちゃんは、もっとしたたかだ。
おばちゃんに財布のひもを握られて、ぽんぽん言われ放題。と見せかけて、仕事はきっちりこなし、趣味や道楽もやりたいことはやっている。行き詰まれば、「頼りにしてまっせ」のひと言で、おばちゃんに責任を振る技もある。
そんなおっちゃんの処世術は、面倒見たがりのアメリカに注文を付けられながら、その傘の下で経済成長を達成した戦後日本の姿と重なって見える。
弱みをさらけ出すことの実利より、国際的なステータスを重く見て、自分で「大国」などと言い出したあたりから、歯車が食い違ってきたような気がする。それは日本の中で、大阪の存在感が低下したこととも無縁ではあるまい。
大阪のおばちゃんのたくましさは間違いなく、世界で通用する。大阪のおっちゃんの生き方上手を、国際政治の舞台で改めて、教訓にしてみても悪くない。(論説室)
毎日新聞 2005年2月27日 0時14分