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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

暮らしWORLD:やはり世の中純愛ブーム 米「きみに読む物語」、日本でもヒット

MSN-Mainichi INTERACTIVE 女性


 ◇米国のベストセラー、老夫婦の無条件の愛がテーマ--同名映画も公開中

 米国で450万部も売れた「きみに読む物語」が日本でもヒットしている。80歳の夫がアルツハイマーになった妻に自らの日記を読んで聞かせる物語で、同名の映画も公開中。従来の恋愛小説と異なり、中高年男性にも受けているというが、なぜなのか。【五十嵐英美】

 「これほどまで人を愛せるのか、と深く感銘を受けた」「私たち夫婦もいつまでも恋愛感情を失いたくない」--。出版元のアーティストハウスに寄せられた読者カードの4割近くは男性読者からで、40代以上が多い。「恋愛小説にしては特異な現象。自分を重ね合わせる方が多いですね」と、同書籍編集部の川上純子さんは話す。

 主人公のノアは80歳。連れ添って49年の妻アリーはアルツハイマーを病んでいる。2人は大恋愛の末に結ばれた。ノアが17歳の夏、米南部の小さな町で出会い、身分違いの恋に落ちた。別れ、そして再会……。ノートにつづった2人の軌跡を、ノアはアリーに読んで聞かせる。「ほんとうのお話?」。アリーは尋ねる。記憶の復活を信じ、ノアは思い出を繰り返し読み続ける。

 なにしろ、米国で96年に出版されて450万部を売ったベストセラー。日本では97年に別の出版社から翻訳本が出たが、版権は消滅。映画の日本公開に合わせて、昨年暮れに再出版された。発売1カ月で15万部を記録し、紀伊国屋書店の和書週間ベストセラー(全国57店舗)では現在5位に入っている。

 実はこの小説、著者であるニコラス・スパークス氏(39)の妻の祖父母がモデル。60年以上連れ添った老夫婦がいたわり合う姿に感銘を受け、着想を得たという。同氏は「一番伝えたかったのは絶対的な愛。深く誰かを愛したら喜びも悲しみもすべてを分かち合う、そんな無条件の愛をテーマにした物語です」と語っている。

 訳者の雨沢泰(あめざわやすし)さんは主人公のノアの魅力を解説する。「淡々として、揺るぎない価値観を持つ。従来ならヒーローになり得ない人物だろうが、妻への純粋な思いが読者を引きつける」。貧しい家に生まれたノアに、決して特別な才能があったわけではない。ただ自らを信じ、ひたむきに生きた。「シンプルなストーリーながら構成は巧み。実話とフィクション的なものを混ぜ合わせるのがうまく、恋愛のエッセンスだけを取り出してみせる。(主人公たちの)裸の心がぶつかり合っていて、読者は正直な心を見直そうというメッセージを感じ取るのでしょう」

 ◆セカチューに通じる

 スパークス氏は米ネブラスカ州生まれ。「きみに……」は30歳で出した第1作だ。大学を出てセールスマンやウエーターなどの職業を転々としながら小説家を目指し、この作品が出版社に100万ドルで売れた。当時の年収は4万ドルというから小説さながらのサクセスストーリー。妻に新しい結婚指輪を買い、「これから違った人生が始まるかもしれないが、もう一度私と結婚して」と、ひざまずいたという。実物もなかなかのイケメンで、大衆誌で「最もセクシーな作家」に選ばれている。

 米国ではもともと「ハーレクイン」など女性向けのロマンス小説が人気だが、作者も女性がほとんど。男性作家による恋愛小説と言えば、90年代初めにヒットした「マディソン郡の橋」(ロバート・ジェームズ・ウォラー著)が記憶に新しい。スパークス氏はその後のデビューだが、コンスタントに佳作を発表し、恋愛小説の新しい読者を掘り起こしているのだという。

 そういえば、昨年ブームを呼んだ「世界の中心で、愛をさけぶ」(片山恭一著)も、「いま、会いにゆきます」(市川拓司著)も男性。男の側から恋愛を描いた。「世界……」は初恋の彼女が白血病で亡くなり、「いま……」は6歳の長男を残して妻が病死する。「テーマの共通点は、愛する者を失う喪失感でしょう。それだけその人にほれ込んでいる。『きみに読む物語』が中高年男性に読まれるのは、私たち夫婦はどうだろうと、自己確認をしているのではないでしょうか」と雨沢さん。

 ◆永遠に1人を愛す

 映画のストーリーも小説とほぼ同じ。老夫婦の切ない姿にとにかく泣ける。ケミストリーが主題歌を歌う、原作本とのタイアップ広告を打つなど、邦画のPR手法をまねて幅広い層にアピールした。宣伝担当者は「セカチューを見た若い人も、冬ソナファンの中高年も取り込みたかった。純愛ブームの流れに乗せることができたのではないか」と話す。

 やはり世の中、純愛ブームなのだろうか。中高年関連市場のコンサルティング会社「シニアコミュニケーション」が1月、配偶者のいる50歳以上の男女506人に純愛ブームについて聞いたところ、男性で79%、女性で85・7%が「好ましい」「まあまあ好ましい」と回答。「恋心を持ち続けることは精神衛生上必要」(65歳男性)、「恋は健康のもと。恋ができなければせめてドラマ」(57歳女性)などの声も聞かれた。

 面白いのは男性の方が現実の恋愛に積極的なことだ。「配偶者や特定のパートナー以外の異性に心ときめくことがある」と答えた男性は約71%で、女性の2倍以上。「いつまでも異性から注目されたい」「ドキドキする気持ちをもう一度味わいたい」も女性を上回り、「配偶者やパートナーに今でも恋心を抱いている」は、女性の約21%に対して約37%だった。「恋とか愛はもう卒業した」というのは女性が16・2%で、男性は8・6%。女性は冷めているし期待もしていないようだ。同社では「女性は客観的で、ヨン様ブームのようにドラマを見て楽しむ人が多い。男性の場合、主役はあくまで自分。恋愛を自分のこととして積極的に考えている」と分析している。

 男性の方がロマンチストだとはよく言われる。「きみに……」のヒットは、ずっと妻を、1人の女性を愛してみたい、そんな女性と巡り合えたら幸せ……という男たちの願いを反映しているのかも。日本の純愛ブームを支えるのは意外や意外、中高年男性なのかもしれない。

毎日新聞 2005年3月2日 東京夕刊
by miya-neta | 2005-03-05 22:37 | 書 籍