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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

中学教科書検定 「興味」「驚き」重視 現場の要望反映

Sankei Web 産経朝刊 中学教科書検定 「興味」「驚き」重視 現場の要望反映(04/06 05:00)


産経Web 平成17(2005)年4月6日[水]

 理数では「解の公式」や「遺伝、進化」が復活するなどページが約二割増え、国語では漱石や鴎外が戻ってきた。学習内容の三割削減が徹底された前回の教科書検定から四年。来春から中学校で使われる教科書が変わる。背景には「もっと教えたい」「もう少し踏み込めれば、子供の興味をかき立てられるのに…」といった現場の要望があった。(豊川雄之、田中万紀)

≪自然な流れ≫

 【理数】「せっかく二次方程式を勉強しているのに、最後の締めくくりとなる解の公式がすっぽり落ちていた」(教科書出版社)。

 中学三年で「因数分解」「平方完成」といった概念を学び、その知識を総動員して二次方程式の「X」の値を導く「解の公式」は「学習の積み重ねに沿って、自然な流れで教えるものを中途半端にやめなければならなかった」(同)と、特に現場からの復活を望む声が強かった。円の円周角や中心角についても、「単純に内容を削減してしまい、授業の流れを止めてしまう」(別の出版社)との声が強かった。

 理科では全社で復活した「イオン」、四社が掲載した「遺伝の法則」などが復活の要望が強かったという。

 ある出版社の担当者は「実際に確かめられる、科学的な発見や驚きが得られる項目について要望が高かった」と、授業中に子供たちが驚きや、感動を受ける場面が減っている教室の実情を指摘した。

 また数学では、基礎学力の低下を反映して、小学校で習う基本的な四則計算と「特にできない子供が多い」という分数の通分・約分を復習するページを設ける教科書もあり、学力が二極化している現状が浮き彫りにされた形になった。

≪漱石と鴎外≫

 【国語】「漱石と鴎外はどうしても中学のうちに教えたいという声が強かった」。漱石と鴎外をそろって復活させた光村図書は、代わりに時代小説をひとつ削除した。

 全体で夏目漱石の「吾輩は猫である」「坊っちゃん」「永日小品」、森鴎外の「高瀬舟」が復活した。

 前回、漱石を「授業時数が減り、読解に時間がかかるため泣く泣く外した」(光村図書)だけに、今回も授業時数の制限で掲載には賛否両論があった。だが結局、読解力不足の解消に悩む現場の「難解だが入れておきたい」の声に応えて掲載したという。

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≪二部構成・涙そうそう・ONE PIECE≫

 数学では、啓林館が発展学習を本文中に盛り込んだものと、巻末にまとめ「二部構成」にした二種類の教科書にした。過去四十年で同一教科の複数申請は、小中学校では、書道と社会の二例だけ。学力対策で習熟度別の学習が広がり、「全国一律」の義務教育の「教科書」も学習形態の多様化で工夫を迫られる。啓林館は「学校現場のニーズはあるはず」と採択に自信を示す。

 教育出版は音楽で沖縄出身の夏川りみのヒット曲「涙(なだ)そうそう」や沖縄民謡をベースにした「島唄」を採用。国語でも吉永小百合のエッセー「語り継ぐもの」を収録、歌手の小田和正や中島みゆきの歌詞も「詩」で取り上げた。英語では学校図書が人気漫画「ONE PIECE」やアニメ「千と千尋の神隠し」、大リーグの松井秀喜選手などを取り上げた。

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≪本来、削ってはいけない部分/文豪に親しむ下地≫

 「分数ができない大学生」の著者の西村和雄京大教授の話「削りすぎた部分が復活されたことは歓迎すべきだ。復活したものをみると、本来削ってはいけなかったものばかりだ。しかし、発展学習は例外的な追加とされ、上の学年で、それを既習とみなして説明することは許されていない。指導要領を早急に改善し、検定も弾力化すべきだ。そうしなければ、中学三年間の英語の教科書がほぼすべて会話文ばかりになっていることで象徴されるように、過去三回の改訂で激変したカリキュラムを改善することは不可能だ」

 「声に出して読みたい日本語」がベストセラーになった斎藤孝明治大教授の話「前回検定の教科書がひどすぎたにしても、漱石や鴎外が戻ってきたのはいい傾向だ。今の子供は難解な作品を読むことを嫌がるが、小さいときに文豪の小説に親しんでおくと、その後の人生で難しい文章に出合っても気後れしない。教科書は、そのための絶好の下地となる。とはいえ、教科書の根本的な内容の薄さは解消されていない。国語教育の使命は人間理解であり、小説はそれを育てるもの。一日で音読できるような薄い教科書では、先生も生徒も、物足りないだろう」

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 発展学習 文部科学省が定める学習指導要領の範囲を超えた学習内容。「ゆとり教育」を掲げた現行指導要領に沿って行われた平成12年度検定では、学習内容が大幅に削減された。しかし、学力低下を招くとの批判を受け、文科省が「指導要領は最低基準」と方針を転換。14年度検定から、発展的内容を教科書に記述することが認められた。中学校教科書に発展学習が盛り込まれるのは初めて。
by miya-neta | 2005-04-06 10:28 | 教 育