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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

ネット時代のジャーナリズム:ジャーナリズムへの重要な問題提起だ

MSN-Mainichi INTERACTIVE カバーストーリー


 柴沼均・毎日新聞デジタルメディア局

 ライブドアの堀江貴文社長の言動は依然として各メディアの大きな関心を呼んでいる。本欄でも位川一郎(経済部)、渡辺雅春(社会部)の両記者が相次いで堀江氏の姿勢を批判した。しかしそれを読んで私は違和感を抱いた。堀江氏の行動は、今後の日本の商風土とジャーナリズムのあり方を考える上で重要な問題提起だと考えるからだ。

■違法行為より商風土重視の日本

 まず商風土の観点から論じたい。毎日新聞とのインタビューで堀江氏はニッポン放送株買収について「事前に(匿名で)金融庁にも確認している。法を守りながらやっている」と、違法行為にならないよう留意したことを強調。株式公開買い付け(TOB)の精神上問題ないかとの問いについては「精神が規定されているわけじゃない。法の不備とか不備じゃないとかはそもそも我々が判断すべきことじゃない」と語った。

 メディア論専攻の水越伸東大助教授は「堀江氏が日本の商風土に合わないのは事実だが、日本の商風土がいいのかどうかの議論が抜け落ちている」と指摘する。この1年だけでも三菱自動車、西武鉄道、三井物産など、日本を代表する大企業の違法行為が次々と判明した。メディア界でも第三者名義株問題が発覚し、総務省はテレビ局71社に行政指導を行った。こうした不祥事の背景に「日本の商風土」があることは明白だ。ライブドアの行動は現段階では違法行為ではなく、行政指導も受けていない。

 政財界からも堀江氏への批判が出ているが、首をかしげざるを得ない。フジサンケイグループの企業に在籍経験がある森喜朗前首相は「カネさえあれば何でもいい、というのは今の教育の成果か」と発言した。ごもっともな意見だが、森氏は文部相経験者であり今の教育の成果に責任を持つべき政治家でもある。

 日本経団連の奥田碩会長(トヨタ自動車会長)も「カネさえあれば何でもできるというのは日本の社会としてはまずい」と批判した。そのトヨタは3月、ニッポン放送株を、時間外取引でTOB価格より高値で全株売却したと報じられた。“李下に冠を正す”というのは、日本の企業風土なのだろうか。

■大メディアがやらない身近な話題にこだわる

 一方、既存メディアは「ネットはテレビ、新聞を殺します」という堀江氏の意見に猛反発している。本欄で渡辺記者が指摘したように、権力の不正を監視し調査報道で明らかにするのはメディアの第一の使命であり、それに異論はない。ライブドアの小田光康ニュースセンター長補佐も「調査報道には既存のジャーナリストの経験や知識、ノウハウが必要」と認めている。

 しかし、調査報道だけでニュースが成り立っているわけではない。新聞でいえば、スポーツ、娯楽、生活面など多様な分野が盛り込まれている。小田氏は「既存メディアと一緒の土俵に上がるのではない。大きなメディアがやらない身近な話題でも、知りたい読者がいる」と指摘する。

 ライブドアはパブリック・ジャーナリスト(PJ)として、一般市民からライブドアのサイト上での記者を募集し研修も行っている。現在は130人ほどだが、最終的には1万人以上を育てる予定だ。同様の試みをしている韓国のオーマイニュースは3万人以上が市民記者に登録している。調査報道は無理だとしても、読者が求める身近な話題は十分集められる。

■ネットからの“特ダネ”も

 ネットが“特ダネ”を発する例もある。3月28日、仙台市で小学校5年生の女児が行方不明となり、両親が記者会見して情報提供を呼びかけた。女児の母親はさらに、ブログ(双方向コミュニケーションのできる簡単なウェブサイト)で「娘を捜してください」と呼びかけたところ、ネット上でまたたく間に情報が広がり少女は無事保護された。母親は「直接の要因は、テレビのニュースだということですが、それも結局はこのブログを応援してくださったたくさんの皆さんのおかげです」と感謝の気持ちをブログに掲載した。

 そのブログがライブドアのものだったというのは、どこか象徴的だ。

 堀江氏を批判する森前首相と同じようなセリフを昨年もよく聞いた。堀江氏がプロ野球界に新規参入を表明した際、「カネがあれば誰でもオーナーになれるわけではない」(渡辺恒雄・前巨人オーナー)といった批判を浴び、最終的には楽天に敗れた。だが、堀江氏が行動を起こさなければ、今の形でのパ・リーグはありえず、球界改革も進まなかったはずだ。

 プロ野球、商風土、そしてメディアのあり方について議論を巻き起こした堀江氏を、私は断固支持する。【毎日新聞記者の目4月6日】

ライブドア


 2005年4月6日
by miya-neta | 2005-04-11 07:59 | メディア