「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

新教育の森:「学力」向上、何が必要? 我が家では…読者から反響続々

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 家庭での「学力」対策を昨年12月の「記者ノート」で募集したところ、多数のお手紙やファクス、メールを頂いた。小学生を持つ家庭の実践や学生時代を思い返しての提言もあり、関心の高さをうかがわせた。昨年暮れに公表された二つの国際学力調査結果をきっかけに、学習指導要領の見直しや「総合的な学習の時間」の削減などが文部科学相の口から語られるようになり、教育施策の行方は混とんとしている。いま、子どもたちに何が必要なのか。寄せられたお便りの一部を紹介する。【澤圭一郎】

 ◇「好きな道」励まして

 福岡市の主婦、中野ひとみさん(40)からは家庭での具体的な体験が寄せられた。小学3年と1年の男の子を持つ中野さんは、親が子どもに「させる」のでなく「子どもが自分で『する』『やる』ように持っていきたい」と考える。

 「家から福岡ドームが見えることもあり(子どもは)大のホークスファンです。選手の情報を知るために(1)ローマ字を教えてと(子どもから)要求され(2)(選手の)出身地から、日本地図や世界地図を覚えた(3)守備位置を知るために、英語を学びたいと要求された(4)スピードガンから速度を学び(5)球界再編や球団合併から、企業経営について考えた(6)打率、勝率から%など割合について考え、割り算や計算力の大事さを体感しました」

 中野さんの結論はこうだ。「大事なことは、子どもの興味・関心をどのようにして、教科学習をはじめ社会で生きていく力につなげるか。子どもの視点を見逃さず『いいことに気付いたね』と認めて褒めて、励ましていく親の一言も大事です」

 大阪府守口市の山下由利子さん(50)は「昔から算数と手芸が好きでした。今、母の教育を考えると、好きなことをいつも褒めていてくれたことに気付く」と振り返る。その好きな道を仕事にし、洋裁教室の講師をしている。娘2人は高校を卒業して働いているが、自らの体験を子どもの教育にも生かした。「2人の娘は算数が好きで、ともにそろばん教室に通わせました。それが今に生きている。2人ともそろばん1級に合格し、商業高校に進んで、会社の事務の仕事に就きました。自分で働いて生きていく子どもにしたかった」。山下さんが親として実感するのは「いつも(子どもの)心が幸せかどうか、好きなことを見つけてあげられるかどうか」だという。「でも意外に簡単なことかもしれない。誰にでも好きなことや好きな時間はあるのだから」と結んでいる。

 子どものやる気を引き出したり好きなことを見つけて応援することは、家庭でも十分できる。

 ◇本読む楽しさを教え

 国際調査の結果から「読解力が低下している」と記者ノートに書いたため、読書の重要性についてのお便りも寄せられた。

 自身も読書好きという大阪市のピアノ教師、山川真紀子さん(41)は「本好きな子にするには、幼いころから本の楽しさを教えることが必要」という。「長男は中学1年ですが、本が好きでハリー・ポッターだけでなく、次々にどんどん読んでしまう。小学3年の二男は自分でも読むが、まだ読んでもらうのが好き」。家庭の読書環境が子どもに大きな影響を与えていると実感し「読めることが大事なのでなく、読む楽しさを知ることが大事」と考える。「私も息子も、本を読んであげたり、読んでもらったり、お話を聞きに行くなど、とても楽しんでいます」

 ただ、テレビゲームのような遊びが子どもたちの生活に入り込みすぎて「子どもを取り巻く環境は難しい」とも感じる。「もっと外遊びをしたり本を読んだり、自分で工夫をして遊ぶことが、学ぶことにもつながるのではないか」とみる。

 鹿児島市の下宿業、橘木岸子さん(60)は4人の子どもが幼かったころ、近所の公園で他の子も交えてお話や読み聞かせをしていた。子どもが小学校に入ると、それが読書会に発展し、多くの子どもたちが参加するようになった。母親の仲間もでき、大学生になった先輩の子どもたちが、幼い「後輩」のために読書会を手伝うようになった。「読書による学力は子どもたちの中にしっかり根付き、自分らしい人生を歩いているという報告が届いています。学力向上はまず楽しい本の読み聞かせから」と考える。

 だが新潟県塩沢町の学習教室アシスタント、豊田春美さん(60)は「子どもたちはハリー・ポッターは読むが、字づら読みの子が多い。内容を読み取っていない」と指摘する。「理科や数学の学力低下も、何を質問されているか分からないから。日本語力が低下している」と心配する。

 いま、授業の前に「朝の読書タイム」を設け、読書の習慣づけや環境作りをしている学校も各地にある。読解力をつけるきっかけは、やはり家庭での読書だろう。時間をかけて読む力をつけることが重要と言えそうだ。

 ◇詰め込みには疑問も

 点数で測られるような学力に疑問を抱く人もいた。京都市の安田清一さん(74)は「子どもたちが社会人になった時、いわゆる学力がどれだけ必要だろうか」と疑問を投げる。安田さんは戦中に勤労動員に駆り出され、学校の勉強はほとんどできなかったという。「それでも社会に出て困ったことは一度もありません。今の子どもたちに必要なのは、他人のことを思いやり、慈しむ心。無理強いして詰め込んだ学力が、一生のうちどれだけ役に立つでしょうか」

 一方で、「ゆとり教育」を疑問視するメールも複数頂いた。「私はゆとり教育の中で生きてきました。感じるのは、思考のベースとなる部分が他の年代と比べて小さいこと。知らないことの多さを実感します」「今のゆとり教育は娘によくないと感じ、自衛策として私立受験を考えて塾に行かせています」……。

 三重県伊勢市の元公立中学校長、松本彦丸さん(73)からは学力問題への対応策として「国は規制を基本的なことにとどめて、地方の独自性、学校の自主性を拡大する中で適度な競争を図るようにする」「土曜休日を廃止する」「各教科の基礎・基本的な内容を精査して、習得内容別の検定システムを作る」などのアイデアが寄せられた。

 学力問題は立場や見方でとらえ方も変わるが、「勉強への意欲」「学習への動機づけ」の重要性は変わらない。家庭は学習指導要領に縛られているわけではない。そこでできることは何か。ちょっとした工夫やアイデアで取り組める「我が家の『学力』向上策」は、家庭の数だけあるはずだ。

毎日新聞 2005年2月7日 東京朝刊

[教育取材班]kyouiku@mbx.mainichi.co.jp
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by miya-neta | 2005-04-12 21:59 | 教 育