学力テスト:成績アップ どう評価?揺れる学校現場
2005年 04月 23日
点数も学習意欲も前回より上昇--。22日に公表された小中学生全国学力テストの結果は、「ゆとり教育」で学んでいる子供たちの意外な像を描き出した。学力低下への懸念の声を受けて、ゆとり路線見直しを進める文部科学省は「基礎や基本の定着に現場が努力した成果」と、戸惑いながらも評価する。新学習指導要領で授業時間数や教科書の内容が削られたのに、なぜ成績はアップしたのか? 「ゆとり派」も「学力重視派」も、学校現場での取り組みに視線を注ぐ。【野倉恵、井上英介】
長机2列の生徒と男性教師の距離はごく近い。1学級2グループ、各15人程度で4教科の少人数授業を行う東京都世田谷区立駒沢中学校。生徒が教材を見たうえ教師と面談し、自身で学力にあったグループを選ぶ。「分数が分からない」。少人数の教室では生徒から率直な質問が出る。小田川欣市校長は「教科時間が減ってもじっくり考えさせる工夫が大切。総合学習を現場がどう生かすかが問題だ」と話す。
「今はどの教科も時間減で反復が不十分になりがち。英語は他教科以上に時間減が響く」。全学年で「選択」の週1時間を英語にあてている文京区立本郷台中学校の英語主任、大原八重子教諭(48)はそう指摘する。
大原教諭は「成績だけでなく『学習意欲』も絶対評価の対象となり、教師が生徒から意欲を引き出す経験が積まれてきた成果ではないか。通常授業で目立たない子が、総合学習の発表で輝く場面も多い」と言う。
授業時間(45分)にとらわれないノーチャイム制を導入している小学校の教員は「時間があればできる子や、(映像などの)メディアを使えば分かる子もいる。レベル別だけでなく興味・関心に応じたグループ分けを実践している学校もある。一斉授業では理解できなかった子供たちには多様な学びの方法が必要だ。いまは、根付き始めた新指導要領や総合学習を大事にするときではないか」と指摘する。
一方、ゆとり路線を批判する人々からは、今回の学力テストの結果について辛らつな指摘も聞かれる。
「新学習指導要領の成果ではない。学力低下を現場が深刻に受け止め、漢字や計算のスキルアップなど基礎の徹底に力を入れてきた。その表れだ」と東京都多摩市立多摩ニ小の有田八州穂教諭は言う。
「子供が感想文に『算数が大好きになった』と書いてきた」。3月まで勤務した杉並区立の小学校で有田教諭は3年間、総合学習の時間を使い、工夫をこらした算数の授業に取り組んだ。総合学習について「各地に優れた取り組みもあるが、文科省が指示したような『国際理解』『福祉』では、借り物の授業しかできない。現場に混乱をもたらしただけだ」と言う。
私立学校や学習塾に詳しい教育コンサルタント「森上研究所」(千代田区)の森上展安所長も「親たちは学力低下に不安を抱き、わが子を一斉に塾へ通わせ始めた。国民に自助努力を強いた結果だ」と、皮肉を込めて言う。少子化や不況の影響で学習塾の生徒数は90年ごろをピークに減り続けていた。ところが、前回の調査結果を踏まえ学力低下論が盛んになった02年ごろから生徒数は増加に転じ、大手の塾は講師不足で悲鳴を上げているという。
毎日新聞 2005年4月23日 1時20分
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