人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

連載モラル:問題はコミュニケーションの中身にある フリージャーナリスト、渋井哲也さん

MSN-Mainichi INTERACTIVE 教育ニュース

連載モラル:問題はコミュニケーションの中身にある フリージャーナリスト、渋井哲也さん_b0067585_21521581.jpg
渋井哲也さんのもとには「生きづらさ」をかかえた人からさまざまなメールが来る。




 インターネットは、不特定の多種多数の人が出入りし、相手の実像の見えにくい、匿名性が高い世界だ。社会性や情報識別能力的が育っていない子供が見知らぬ人と出会い、事件に巻き込まれてしまう危険がある。昨年10月埼玉県の山中で起きた集団自殺について書いた「男女七人ネット心中 マリアはなぜ死んだのか」(新紀元社)を著したフリージャーナリストの渋井哲也さんは、子供とインターネットの問題に取り組んでいる。渋井さんにネット心中や、子供のインターネットの使い方について話を聞いた。【清水多佳子】

 --渋井さんは、なぜ、本書を出版しようと思ったのですか。

 この集団自殺の呼びかけ人と言われる「マリア」と、生前から交流がありました。2000年ごろ、自殺系サイトを取材をしているとき、マリアと名乗るこの女性に出会ったのです。マリアは小さいころから性的虐待を父親から受けて、多重人格障害を持っており、「生きる理由はあるのか」と常に悩んでいました。なぜ、マリアは最終的に死を選んだのか、そしてなぜ7人が一緒に死ななければならなかったのか、どうしても理解したくて本書に取り組みました。

 --集団自殺は、マリアが呼びかけたのですか?

 マリアのカリスマ性に引き寄せられて、ほかの人も自殺したかのように伝える報道もありました。しかし、私は2003年からネット心中について取材してきているのですが、「ネット心中」では、中心人物は形式的には存在しても、実質的な中心人物は存在しないのではないかと思っています。そこで、マリアが本当に集団自殺の中心であったのかどうかを確認したいと思いました。それはマリアの名誉を守ることでもあったんです。

 --ネット心中をしようとしている人たちの、インターネット上の会話の特徴は?

 ネットで出会った人と心中しようとしている人たちの会話は、たいてい「いつどこで会うか」だけに終始しています。お互いに、どこの誰かなんて名乗らない。名乗る必要がないんです。お互い、一緒に死んでくれる「道具」としてしか相手を見ていないからです。車と練炭、一緒に死んでくれる人さえいればいいと思ってしまうんです。

 --もう、死ぬこと以外に考えていない?

 中には「なぜ自分が死にたいのか、何を悩んでいるのか」を、一緒に心中しようとしている人に話してしまう人がいます。そうすると、相談された側は「相手は生身の人間なんだ」と気づくわけです。そこで、相手に同情して「死ぬな」と止めることがありますね。実際、マリアは1人の自殺志願の男性と相談を含めた心理的な交流があり、その男性だけは心中の仲間に入れなかった、ということがありました。

 --渋井さんは、自殺したい人や、どう生きていいか分からない人たちを、「生きづらさ」を抱える人の意味で、「生きづらさ系」と呼んでいます。今、自分のホームページやブログで、「生きづらさ」を書きつづる人が増えています。

 今、だれでも自分のホームページに、文章を掲載することができる時代です。「生きづらさ」を書きつづることが、特別なことではなくなってきています。人の悩みが見えやすくなったのは、よい点だと思います。でも、悪い点もあります。それは、「生きづらさ」をより分かりやすい形で表現したがる傾向にある、ということです。「生きづらさ」が際立っているほど、その人のホームページやブログへの読者からのレスポンス(反応)も多くなりますよね。そのレスポンスを得ることが目的化してしまうと、例えば「リストカット(手首を切る自傷行為)で、今日はどのくらい切った」とか、目立つことを書くようになるんです。

 --自殺願望を持つ人たちが交流する「自殺系サイト」や、男女の出会いを目的とした「出会い系サイト」を含めて、インターネット上で、子供が有害サイトを見ないように規制する行政の動きもあります。

 今、小学校低学年でも半分くらいは、インターネットの経験があります。子供の方がインターネットの知識や経験が豊富で、親がそれについていけていなくなっているのが現状です。子供にすれば、いくら親が「インターネットは怖いですよ」と言っても説得力がないんですね。有害情報を規制するフィルタリングだって、簡単に解除できます。また、行政は、何が有害なのか子供と議論して規制しているわけでもない。大人の考えで「有害」を決めている。子供と一緒に、どんな情報が有害なのか考えていないのが、そもそも問題だと思います。大切なことは、インターネット上の情報をどう読み解くかということです。「自殺予防サイト」にアクセスしている人でも、自殺してしまう人はいます。逆に、「自殺系サイト」で「死にたい」と書きこむことで、心のバランスが取れ人、相談相手が見つかって救われる人もいます。問題は、インターネットの情報をどのように読んでいるのか、そこでどんなコミュニケーションをしているのかということなんです。

 --子供とインターネットの問題で、大人たちが気をつけないといけない点は。

 まず、「規制をしたから安心」と思わないことです。エロ本を買いたいと思っている子に、「エロ本を見てはいけませんよ」と言っても、子供は大人の規制を乗り越えて見てしまうのと似ていますね。また、現在、出会い系サイト規制法で、男女が出会うことを目的とした「出会い系サイト」は規制されていますが、メール友達を見つけることを目的とした「メル友サイト」は規制されていません。ブログだって、出会いの場にしようと思えば、すぐに出会いの場になってしまいます。そのあたりを、きちんと把握していないといけないですね。

 --子供には、インターネット上のコミュニケーションについて、何を、どう教えたらいいのでしょうか。

 ネットで知り合った人に会うにしても、「1人では会わない」とか、「相手の車には乗らない」とか、「人が多い場所で会う」とかの行動の基本を教えることが大切です。また、誘拐されそうになったら、携帯電話で110番をかけられるか、110番にかけた時、自分の居場所を簡潔に伝えるには、どう説明すしたらいいのかを教えるべきですね。誘拐犯に携帯電話を奪われてしまった時は、どうしたらいいかもも教えないといけないでしょう。今は、GPS(全地球測位システム)の付いた携帯電話を持っていても、誘拐されてしまう時代ですから。

 --知らない人とのコミュニケーションなら警戒もできますが、昨年、長崎県佐世保市で起きた小学6年生の同級生殺害事件では、友達同士でのインターネットコミュニケーションが問題となりました。

 では、大人が子供同士のネットでの会話に介入できるかを考えてみると、それはほぼ不可能に近いと言えます。ネット上のコミュニケーションの細かいニュアンスは、当人同士にしか分かりません。だから、自分の子供、自分のクラスの子供たちが、友達とどんなコミュニケーションをしているのか、大人は子供と対話して理解するしかないと思います。

連載モラル:問題はコミュニケーションの中身にある フリージャーナリスト、渋井哲也さん_b0067585_21524646.jpg --渋井さんのホームページには、著書「男女七人ネット心中」を読んだ人などがアクセスしてくるそうですね。

 はい。10代から40代とアクセスしてくる人の年齢の幅は広いですが、約8割が女性ですね。女性の方が他者とのコミュニケーション欲求が強いんだと思います。「つながっているだけで楽しい」、「ただしゃべっていたい」という意見を、女性から聞くことが多いです。

 --どんなことを訴えてくるのですか。

 悩み相談が大半です。リストカットの悩みとか、恋愛の悩み、子育ての問題もありますね。「自分を取材してほしい」と書き込んでくる人もいます。そういった人は、「自分の悩みを聞いてもらい、それが誰かの役に立てればうれしい」とか言います。中には「死にたい」とだけ、メールしてくる人もいます。

 --深刻な内容のメールには、どのように反応しているのですか。

 たいてい、「死にたい」といったメールは夜に来ます。でも、すぐに返事は出しません。へたに刺激して死んでしまうといけないので、数日たってから返事を出すようにしています。ただ、「死ぬな」とは言いません。「じゃあ、どうやって生きていけばいいの?」と言い返され、議論になってしまいます。彼ら、彼女らが求めているのは議論ではないのです。

 --何を求めているのでしょう。

 「止めてほしい」、と思っている人が多いですが、なにかはっきりとしたものを求めているわけではなく、SOSを発しているだけの場合もあります。メールで「死にたい」と言ってきて、すぐに本当に死んだ人は私の周りではいないですね。「ありがとうございました」と送ってきて、その後亡くなった人や自分のホームページで死ぬと予告をして、本当に自殺して亡くなった人はいましたが。たいがい、話を聞いてほしいと思っている人なので、昼間なら、「なぜ、死にたいの?」と理由をくわしく聞きますね。夜なら、「どんな趣味を持っているの?」とか前向きなテーマで話題をまずそらします。夜の場合、刺激をして、もし自殺未遂などをしてしまった場合、対応が遅れてしまうことがあるからです。いずれにしても、メールだけの会話だと、私の言葉を相手がどう解釈するか分からないので、その後で直接会ったり、電話で会話をすることで相手の話をきちんと聞くようにしています。

 --渋井さんは、著書の中でマリアの自殺を止められなかったことを悔やんでいます。ネット心中を含め、インターネットがきっかけで起きる事件は今後、防ぐことができるのでしょうか。

 ネット心中を止めることは正直、難しいと思います。でも、大切なのは、根本的な自殺防止策です。それに自殺を止めることだけではない。止めた後に、その人とどうかかわるのか。「生きづらさ」を抱えた人とどうかかわっていくかが、実はとても大切だと思っています。子供は、家庭や学校で自分の悩みを話すことができない、もしくは話しても無視されるという理由から、インターネットでのコミュニケーションに行ってしまう傾向があります。なので、子供がインターネットで他者と対話することは、いい悪いという問題ではありません。いい方向にいくかどうかは、どんなコミュニケーションをしているか、です。そのためには、相手を選ばないといけないですね。相手が顔見知りであっても、ネガティブな会話ばかりしてしまうと、そこから抜けだせなくなってしまいます。

……………………………………………

◇渋井哲也(しぶい・てつや)

 1969年生まれ。東洋大学卒業後、長野日報社に入社。98年フリーになり、東洋大学大学院で教育学を専攻し、インターネット・コミュニケーションを研究する。著書に「アノニマスネットを匿名で漂う人々」(情報センター出版局)、「チャット依存症候群」(教育史料出版会)、「出会い系サイトと若者たち」(洋泉社)、「ネット心中」(日本放送出版協会)などがある。

渋井哲也さんのホームページ


 2005年4月22日
by miya-neta | 2005-04-22 09:52 | 社 会