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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

民営化会社と在来民間会社との競争の結末



「民営化会社と在来民間会社との競争の結末」
 〔ゲンダイネット 2005/04/27〕


 JR西日本福知山線の脱線大惨事は、「官から民へ」を繰り返し唱えてきた小泉首相の“民営化信仰”を打ち砕くものだ。事故の直接の原因は、まだ推測の域を出ないが、ハッキリしているのは、民営化によってもたらされたJRと私鉄各社のサービス競争の激化が背景にあることだ。
「とりわけ『私鉄王国』といわれる関西は競争が激しい。JR西日本は京阪神を結ぶ主要路線のほとんどで阪急、近鉄、阪神、南海などの私鉄と競合しています。そのうえ、乗客数は少子高齢化で年々減少。旧国鉄時代は殿様商売で済んだが、87年の民営化以降は限られたパイの奪い合いに参加せざるを得なくなったのです」(国交省関係者)

 JR西日本は全運輸収入の4割を稼ぎ出す京阪神の競合路線を「アーバンネットワーク」と名付け、“速さ”を売りに、乗客の争奪戦を繰り広げてきた。車体を軽量化し、高速化を急ピッチで進めてきたのだ。
「脱線事故が起きた福知山線もそのひとつです。沿線の宅地化が進み、並行して走る阪急宝塚線に対抗するため、尼崎で乗り換えなしで大阪市内に入れるJR東西線(97年開業)と結び、増発を繰り返してきた。
 通勤ラッシュ時の快速列車は3~4分間隔という過密ダイヤを組み、『大阪―宝塚間で阪急より7分速い』ことを売りにしていました。そのため、電車の遅れにはナーバスで、今月初めには全社員に『列車の遅れはお客様の信頼を裏切る』と文書で通知。事故前の2週間は、福知山線から東西線に入り、東海道線との乗換駅である尼崎駅の発着を1秒単位で調査していた。オーバーランによる1分30秒の遅れが、運転士と車掌にはかなりのプレッシャーになっていたはずです」(JR事情通)

 駅の乗降時間まで短縮してスピード化を図る一方、安全対策はお座なりで、福知山線には制限速度を超えると自動的にブレーキがかかる自動列車停止装置(ATS)も導入されていなかった。
 脱線大惨事は、利益優先を強いられる民営化が生んだ悲劇でもあるのだ。
 JR西日本は民営化ではハンディがある。膨大な人口を抱えるJR東日本、JR東海の東海道新幹線という“ドル箱”がなく、赤字路線も多く抱えている。在来線の乗客数は96年の18億4000万人から、03年度には1億人近く減少。加えて、旧国鉄時代の長期債務1兆1000億円(連結ベース)が重くのしかかっている。
「新型ATSの導入が遅れたのもそのせい。利益確保が至上命令で、思うように設備投資が進められないのです」(JR事情通=前出)

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 社員も大幅に削減され、現在3万2850人で、旧国鉄時代の3分の2にまで減らされている。事故を起こした23歳の運転士は、居眠りなどの“前科持ち”。運転士の教育、質の向上はどうなっているのか、と言いたくなる。

 経済評論家の奥村宏氏は「国鉄民営化でコスト削減が図られ、他社との競争に勝つための定刻発着のサービスが強化された。客の安全がまず第一という基本が忘れられている」と批判。「運転士と車掌が(オーバーラン40メートルの)事実を隠蔽し、過少申告したのは社内の風通しが悪い証拠」と話しているが、まったくその通りだ。起こるべくして起こった事故と言っていい。
 事情は他のJR各社も似たり寄ったりだ。JR東日本では昨年秋、湘南・新宿ラインを1日64往復に倍増し、横浜―新宿間を2分短縮、27分にしている。私鉄各社との競争は首都圏でも激化しているのだ。

 小泉はメールマガジンで「(国鉄民営化で)むしろサービスはよくなったと思う」と書いていたが、“民営化万歳”がウソっぱちであることを、今回の大惨事は物語っている。
 小泉首相が内政、外交の重要課題を放り出して血道を上げている郵政民営化もJR西日本惨事のような恐ろしい事態を招くのは必至だ。郵便事業の民営化はニュージーランドでもドイツでも失敗。両国政府はズタズタになったシステム修復に膨大なエネルギーを使っているのが実情だからだ。
 ニュージーランドでは民営化でガタ減りした郵便局を再び増やしている。また、郵便貯金は大半が外資系の手に落ち、低額預金者から高い口座管理料を取ったため社会問題に発展、国が出資して新たな形で郵貯を復活させている。民営化前に3万局あった郵便局が1万局まで減ったドイツも、国民の批判を受けて1万2000局の設置を義務付ける法律を制定し、不便の解消に努めている。

「民営化路線が叫ばれた当初、よく例に挙げられたニュージーランドは郵便のほか鉄道、航空事業を民営化しています。しかし、ことごとく失敗に終わり、今は国営に戻っています。郵便貯金や航空事業が外資に買われてしまった。民営化、とりわけ外資が入れば、儲からない部分は容赦なく切り捨てられる。そもそも山の中の一軒家にも配達するユニバーサルサービスを国際条約で義務付けられている郵便事業を民営化するのには無理がある。それを小泉内閣は郵便、郵貯、保険とセットで民営化、3分野ともユニバーサルサービスを義務付けるとしているのだから支離滅裂裂です。これでは国営のコングロマリットをつくるだけで、民営化する意味がまったくありません」(帝京大教授・降旗節雄氏=経済学)

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 小泉内閣はなぜ、自民党と妥協に妥協を重ねながら、デタラメな郵政民営化を強行しようとしているのか。
 小泉が何が何でも民営化にこだわる理由は2つある。
 1つは郵貯等の特別会計が抱える49兆円の“隠れ借金”を公社化で国民負担に付け替えたことを民営化で完全に隠蔽することが目的で、財務省官僚との合作シナリオだ。
 そしてもう1つは、民営化で郵貯・簡保が持つ350兆円の庶民のカネを外資に開放することだ。米国では郵便事業は国営を維持している。その米国が郵政民営化の早期実現を迫っているのは、このカネが狙いだからだ。

 田中康夫・長野県知事は本紙コラムで「郵政民営化後に株式も放出すれば、ハゲタカファンドを始めとする『鬼畜米英』企業が競い合って買い求める。一般市民の“虎の子”は、白い肌をした輩の運用下に置かれるのです。(中略)国を売り渡す。これぞ愛国者・純ちゃんが思い描く『構造改革』なのでしょう」。

 日本ではこれまでJR(旧国鉄)のほかNTT(旧電電公社)、JT(旧専売公社)が民営化されたが、国民のメリットはほとんどない。
 旧公社時代より窓口サービスが良くなったといっても、そんなことは民営化しなくてもやれる。JRの民営化で旧国鉄債務は減らず、国の負担分22.7兆円は増える一方。NTTも電話料金は下がったが、IT時代にもかかわらず過疎地でなくてもADSLも光ファイバーも使えない地域がワンサカある。JTもたばこ税が政府の赤字補填に使われ、たばこ代は上がり続けている。
「海外でも民営化は成功どころか惨憺(さんたん)たる結果を招いているケースがほとんど。民営化すれば良くなるというのは全く根拠がありません」(降旗節雄氏=前出)
 郵政民営化は庶民のカネをアメリカに渡す危険なたくらみ。直ちに潰すことが国会議員の務めである。

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by miya-neta | 2005-04-27 22:21 | 社 会