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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

学力:PISA結果などについて論議 OECDセミナー

MSN-Mainichi INTERACTIVE 教育ニュース

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OECD/Japanセミナーには教育関係者ら多くの人が参加、海外の教育事情などに聞き入った。


 「学校における教育の質向上:学習到達度調査の役割と影響」をテーマにしたOECD/Japanセミナーが23日、東京・一ツ橋の学術総合センターで開かれた。昨年末に発表されたOECDの「生徒の学習到達度調査」(PISA)の結果をもとに、学力の向上、教育の質の保証、学校制度などについて発表や討議が行われた。

 中山成彬文部科学相が開会あいさつに立ち、「PISAは画期的な調査であり、わが国をはじめ、各国は大きな影響を受け、教育政策の基礎資料にしている。日本もゆとり教育、週5日制の成果をもとに、教育の質の充実を目指して中教審で審議している。」と述べ、「教育内容の改革」「教員養成の改革」「学習・教育システムの改革」の3本柱で教育改革を進めると述べた。

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◇フィンランド教育科学相の講演

 PISAで学力世界トップになったフィンランドのトゥーラ・ハアタイネン教育科学相が基調講演「Learning for Tommorow’s world 教育目標の確立とモニタリングの今後の方向性」を行なった。

 ハアタイネンさんは「フィンランド社会の基盤はすべての人々の平等と公平で、教育、男女、世代などあらゆる平等が一番大事だ。これにより所得差が狭まり、誰もが平等に教育を受けられるようになった。PISAで学習到達度が最高だったのは、このフィンランドの社会システムが効果があるということの実証だ」と述べた。

 フィンランドは9年間の総合制義務教育が完全無償で提供されており、総合教育については数十年にわたって開発を続けてきたと説明、「福祉社会では他者に対する思いやりと連帯が重要で、教育は子供たちが社会参加する力を形成するための重要なファクターだ。だから教育の平等を守ってきた」と述べた。

トゥーラ・ハアタイネン教育科学相は「福祉社会のシステムが、PISAトップという結果をもたらした」と語る。

 9年間の教育は学校が責任を担っており、国の仕事は教育の方向付けをすることで、そのためコア・カリキュラムを示すと説明、「コア・カリキュラムは最新のものに改革した。内容は具体的だが、細かいものではなく、それをもとに学校、教員が工夫し、問題を解決するものになっている。政府と地方が協力できる実際的なもので、教育の方向付け、舵取りの重要なツールになっている」と述べた。

 ハアタイネンさんは評価の重要性にも触れ、「評価システムによって、何が必要かが明らかになる。評価は学習効果だけではなく、学校の活動や福利厚生などの背景も改善、向上を検討、真の意味の教育を考える」と述べた。評価のデータは学校教育の開発、生徒の支援と指導、親が教育に関する情報を得る権利を守るために使われると説明、「子供たちはみんな学びたいと思っている。彼らに学習の権利を提供していきたい」と述べた。

学力:PISA結果などについて論議 OECDセミナー_b0067585_22414355.jpg OECD ◇OECD教育局のアンドレア・シュライヒャー指標分析課長

 「PISAの結果から見た学校制度」と題して講演し、PISAの目的は、学力到達度の国別ランキングだけでなく、各国の教育システムの違いや、社会経済的な背景、興味関心の度合いなどを比較し、成功している国の要因を探ることにもある、と話した。

 シュライヒャー課長は、2003年度に行った数学的リテラシーの調査について、(1)教育システムの総合的な結果(2)学習機会の公平性(3)学校間格差の有無(4)男女差(5)生涯学習のための基礎--の5つの判断基準に基づいて各国のスコアを分析し、「生徒に公平な学習機会が与えられていることは重要な問題だ。経済的な背景が成績を決めてしまうということが、若者の潜在的な力を無にしている」と述べた。

 PISAの結果分析から、フィンランド、スウェーデンなど成績上位の国では学校間の成績格差、社会経済的背景による格差がほとんどないと述べ、社会経済的に不利な生徒の成績を上げるには、「すべての学校で平等に改革を行う方法、不利な背景を持つ生徒を特定し、専門的なカリキュラムを提供したり、経済状況を改善するための取り組みをするという方法がある」と指摘した。

 また、数学の学習に対して生徒が感じる不安と成績の関係について、「不安の度合いが低い国では成績が高いという結果が出ているが、日本と韓国だけが例外で、成績が高いのに、不安の度合いも高い」と述べた。韓国は「数学の授業についていけないのではないかと不安になる」生徒の割合が80%近くに上り、OECD平均の6割弱、スウェーデンの約3割に比べて極めて高かった。さらに教育費と成績の関係では、「生徒1人あたりの支出と成績には正の相関関係がみられるが、日本のように教育費がそれほど高くはないのに、成績が高い国もあり、教育費が高ければ好成績が保証されるわけではない」と指摘した。

 シュライヒャー課長は個人的な結論として、「成功している国では、個人に合わせた教育が行われ、生徒と教師が学び合っている。学校や教師が自律性と必要な知識を持ち、効果的な支援システムがあることが成功の要因になる」と述べた。

 講演の後、会場から「日本は、成績がいいのに興味関心が低いということだが、どういう教訓を読み取ったらいいのか」という質問があり、シュライヒャー課長は「学習動機と到達度は両方とも大切で、どちらが高いと優れているということではない。動機付けがあれば、将来、高等教育に進むきっかけになる」と答えた。




   ◇◇◇   ◇◇◇

 ディスカッション「各国における成績向上のための国際標準値の活用」では、カナダ、フィンランド、ドイツがPISAの結果と、学力向上の取り組みについて報告した。
学力:PISA結果などについて論議 OECDセミナー_b0067585_22425478.jpg◇カナダ

 人的資源開発省のサティヤ・ブリンク課長は「カナダはPISAで高い到達度を示した。だが、成績の差は学校教育を続ければ解消されるだろうという私たちの予想に反する結果が出た。成績の格差は学校教育の期間を通じて残っており、学校教育は成績の平準化に役立っているのかという疑問が出た」と説明、教育政策に生かすため調査をしたことを報告した。調査の結果、「家庭の収入は得点に影響しない」「ほとんどの子供は問題状況がずっと続くわけではなく、問題集団は変化する」などの結果を得たと報告した。

 その上でブリンク課長は「幼少期の学習が重要で、先延ばしにすればするほど不利になる。そのために全体向けと、個別の学習への介入を組み合わせることが大事」と教育政策の望ましい方向性を示した。

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◇フィンランド

 ユバスキュラ大学教育研究所のヨウニ・ヴァリジャービ教授は、「フィンランドの教育では公平と平等をいかに提供するかが問われる」と述べて、教育システムの特色について説明した。大きな特徴の総合教育について「1年生から9年生まで均一のグループで教育を行い、児童生徒を人間全体として世話をする教育だ」と説明した。さらに「質の高い教員教育」を特徴として挙げ、「教員の地位はトップランクで、就職希望は1位だ。教員は縛るのではなく、社会が何を重視しているかという情報を提供するようにしている」と説明、また地域が教育に責任を持ち、地方自治体が基礎教育を担当していると説明した。ヴァリジャービ教授は『フィンランドは人口520万人で、国民の均一性が高いので、何を教えるべきかについて一致しやすく、カリキュラムを補完的な役割にとどめることができる」と述べた。

 PISAの結果をいかに教育政策やシステムに生かすかを考えるために、国際比較し、その結果を示した。読解力の00年と03年の比較では、日本は下位レベルが増えているが、フィンランドは変わらないこと、レベル1以下はフィンランドは男女とも10%以下だが、日本は男子が20%、女子が10%を超えていること、数学の成績の学校平均値ではフィンランドはOECDの平均より成績が悪い学校が少なかったこと--などと報告した。

 数学の学習時間ではフィンランドは韓国、日本より少なく、OECD平均をも下回ることを指摘、「フィンランドは数学に多くの時間を割いていない。学習時間を多くするより、時間をどのように有効配分するかが問題だ」と述べた。

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◇ドイツ

 マックスプランク研究所のコーデュラ・アーテルト研究員は、国際教育到達度評価学会(IEA)の国際数学・理科教育調査(TIMSS)の結果について「ドイツの児童生徒は概念の理解が必要な複雑な課題に困難が見られ、就学期間を通して学習成果が見られない」などの結果を報告、PISAでは「00年は全般的な低レベルで論議が起きた。今回03年の結果は、00年に比べ数学と科学で成績が向上したが、低レベル層にはほとんど向上が見られなかった。そこで落ちこぼれる恐れのある生徒の対策が大きな課題になった」と報告した。

 その上で、ドイツ連邦の各州の文部大臣の会議(KMK)で、就学前児童の語学能力向上や小学校教育の向上などの目標が掲げられたと説明、「背景には学校制度を国際的な比較で評価することが必要、ドイツの学校制度の特徴であるインプット重視型は期待される結果を達成するのに不十分--などの考えがあった」と述べた。KMKでは教育基準の目標として「開発の継続」「標準化」「評価」「科学的なモニタリング」を掲げ、連邦教育省では「資金の提供」「基準と評価のための第三者機関の設立」「独立専門委員会による、教育の現状に関する全国的な定期報告書の作成」を目標としたことなどを説明した。【平野秋一郎 岡礼子】

毎日新聞 2005年6月23日 13時14分
by miya-neta | 2005-06-23 13:14