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「二条河原落書」のネタ帳


by miya-neta

義務教育と国庫負担/地方に任せてこそ充実する

河北新報ニュース


 文部科学省と中央教育審議会は何か勘違いしていないか。

 中教審は三位一体改革の焦点である義務教育費国庫分8500億円の地方移譲について、「今後も国の負担制度は維持されるべきだ」とする答申素案をまとめた。基本線は最終答申でも変わらないとみられる。
 小泉純一郎首相は地方案にそった検討を指示したがこれを無視した形だ。
 「官邸に屈するな」との声さえ出たという状況は指示の無視を超え、正面からはね返そうとする挑戦とさえとられよう。

 中教審は文科相の諮問機関、同相の下の文科省は首相が統括指揮する行政の一部局だ。
 官僚機構に首相の行政指揮を拒否する権限はない。ましてはね返す動きにまでになっては政治がどう行政を支配するか―という民主制による統制の基本的問題にまで広がってしまう。

 実は同じ問題は大もめで総選挙となり、国民が「改革」を指示した郵政民営化でも起きた。
 郵政官僚のトップ2人が民営化推進を指示した首相に面従腹背、首相は更迭を断行した。
 これらは官僚主導の惰性が赤字財政を典型とする行き詰まりを招いて改革を不可避としたのに、メスに切り込まれて権限喪失の危機感を強め、改革を進める政治を拒否している構図だ。

 首相はここは徹底して文科省行政を政治に従わせるべきだ。
 また政治と行政の原則を離れても、素案の論理はおかしい。
 義務教育費国庫負担金の扱いは昨年、国対地方、政府対与党などの論議の末、今秋の中教審の論議を経て決めるとされた。
 しかし移譲は暫定ながら一部は予算に組まれ、実質は「地方案を尊重する」と首相が言う通りになる方向だったはずだ。

 首相は最近も事務次官に指示、文科相にも念押ししている。
 ところが文科省は全力で巻き返しに動き「義務教育は国が責任を負うべきで地方には任せられない」との合意を取り付けて素案とりまとめにこぎ着けた。
 が、例えば中教審で問題を扱った特別部会の委員30人中、地方側委員は3人だけという仕組みでの意見集約は「文科省的合意」というしかない。
 また義務教育は法定の地方事務だ。「任せられない」との決めつけも文科省的独断だ。

 近年、文科省が改革に乗り出したのは、指導要領で学校現場をがんじがらめにする画一教育に自治体が改善例を示し、それを採用するしかない状況に追い込まれたからだ。少人数学級、複数担任制、学力テストの試行などはみな地方の後追いだ。
 大きな流れでわが国は産業化の人材を育てる同質教育の時代は過ぎ、人や地域ごとの個性を育てる成熟社会になっている。

 すでに20年近く前、臨時教育審議会は「多様、柔軟、分権」の方向を示した。中教審も7年前「自治体が自らの負担と責任を踏まえて教育行政を展開できるよう国と地方の関係を見直」すよう答申したではないか。
 文科省は国の負担率をどこまで譲るかで勝負…と落としどころを探るようだ。もしそうならそんな非教育的術策は論外だ。

2005年10月13日木曜日
by miya-neta | 2005-10-13 08:31 | 教 育